ギリシャ神話の世界で起こる愛の物語、バレエ『シルヴィア』のあらすじや見どころを解説|23年3月にハンブルク・バレエ団が来日
発表会やコンクールなどで人気の『シルヴィア』。バリエーションは有名ですが、全幕を観たことがある人は少ないかもしれません。
『シルヴィア』は、狩りの女神ディアナに仕えるニンフ※「シルヴィア」と羊飼いの青年アミンタの物語です。恋を知らないシルヴィアと、シルヴィアに惹かれるアミンタの関係の変化を全3幕にわけて描いています。
※ニンフ … ギリシア神話における自然界の精。不老長寿ですが不死ではなく、若く美しい女性の姿をしているとされます。
2023年3月には、ハンブルク・バレエ団が来日し、ノイマイヤー版『シルヴィア』の全幕を上演予定です。同団のプリンシパルダンサー菅井円加、イダ・プレトリウスがシルヴィアを演じます。(詳細は後述)
1. バレエ『シルヴィア』のあらすじ
『シルヴィア』を一躍人気作品にしたフレデリック・アシュトン版に基づいて、バレエ『シルヴィア』のあらすじを解説します。
1.1
初めに早わかりあらすじを紹介
初めに早わかりあらすじを紹介
物語はギリシャ神話の世界。
狩りの女神ディアナに仕えるニンフのシルヴィアは、愛の神エロスの神殿の前で、仲間たちと狩りの成功を祝って踊っています。そこに、シルヴィアに恋をする羊飼いの青年アミンタがやってきて、シルヴィアに恋心を打ち明けますが、シルヴィアは拒否します。
アミンタと同じくシルヴィアに惹かれている悪しき狩人オリオンは、シルヴィアを捕らえ、自分が住む島へと連れ去ります。オリオンは、宝石や美しい服でシルヴィアの気を引こうとしますが、シルヴィアは応じません。
シルヴィアはオリオンを酔い潰れさせ、シルヴィアを助けようと姿を現したエロスによってアミンタのもとに向かいます。
エロスの導きにより再び出会ったシルヴィアとアミンタ。シルヴィアを追ってきたオリオンに邪魔をされますが、ディアナの助けがあり、無事結ばれるのでした。
1.2
バレエ『シルヴィア』の登場人物
バレエ『シルヴィア』の登場人物
バレエ『シルヴィア』の登場人物を紹介します。
狩りの女神ディアナに仕えるニンフ。ディアナのお気に入り。
シルヴィアに恋心を抱く羊飼いの青年
狩り・貞節を司る月の女神。若い羊飼いエンデュミオンに恋をし、そのせいでエンデュミオンは永遠の眠りについてしまったという過去がある。
愛の神。貞節を司る女神ディアナや彼女のニンフたちからは軽蔑されている。
悪しき狩人。シルヴィアに好意を寄せており、自分のものにしようとする。
若い羊飼い。ディアナと恋をしたことで永遠の眠りについている。
上記は、アシュトン版『シルヴィア』の登場人物ですが、演出によって異なる場合があります。
例えば、ジョン・ノイマイヤー版では、オリオンとエロス(ノイマイヤー版では「アムール」と名付けられている)はひとりのダンサーが踊ります。(詳しくは、「3.5 ジョン・ノイマイヤー版(1997年)」で解説します)
1.3
バレエ『シルヴィア』のストーリー
バレエ『シルヴィア』のストーリー
アシュトン版の『シルヴィア』は全3幕の物語です。それぞれの幕で起こるストーリーを解説します。
【第1幕】
〜聖なる森〜
聖なる森の中にある愛の神エロスの神殿の前で、森の精たちが踊っています。そこに、シルヴィアに恋心を抱く羊飼いの青年アミンタがやってきます。
シルヴィアたちがやってくる気配を感じたアミンタは物陰に姿を隠し、シルヴィアたちが狩りの成功を祝って踊る姿を見ていました。アミンタと同じく、シルヴィアに好意を寄せる悪しき狩人オリオンもこっそりとシルヴィアのことを眺めており、なんとか自分のものにしようと決意するのでした。
貞節を司る女神ディアナに仕えるシルヴィアたちは、愛の神エロスの像を見て嘲ります。
ひょんなことからシルヴィアたちに見つかったアミンタは、シルヴィアに恋心を打ち明けますが、純潔を誓っているシルヴィアは激怒し、愛の神エロスに向かって矢を放ちます。
エロスをかばったアミンタはシルヴィアの矢が心臓に突き刺さってしまいます。エロスは反撃としてシルヴィアに矢を放ち、シルヴィアに突き刺さりますが、シルヴィアは自ら矢を抜き去り、仲間たちとともにその場を離れます。
その後、再びエロスの神殿の前に戻ってきたシルヴィアは、アミンタの亡骸を見て嘆き悲しみます。エロスの矢に射られたことで、アミンタへの気持ちに気付いたのです。
その様子を影から見ていたオリオンは、シルヴィアを捕らえ、自分が住む島へと連れ去ります。
農民のひとりが、オリオンがシルヴィアを連れ去った様子を目撃し、ほかの農民を集めます。農民たちもアミンタの亡骸を見て悲しむのでした。
そこへマント姿の男が現れ、不思議な力でアミンタを生き返らせます。実はこの男はエロスが変身した姿。シルヴィアが連れ去られたことをアミンタに教え、シルヴィアを探しに行かせます。
【第2幕】
〜オリオンが住む島の洞窟〜
舞台は、オリオンが住む島の洞窟へと移ります。
シルヴィアをどうにかして自分のものにしたいオリオンは、宝石や美しい服などで気を引こうとしますが、シルヴィアの気持ちは手に入りません。
シルヴィアは隙を見て逃げだそうとしますが、アミンタへの気持ちを気付かせてくれたエロスの矢をオリオンに奪われてしまい、逃げ出せません。
シルヴィアはオリオンがお酒を勧めてくるのを逆手に取り、オリオンを酔い潰れさせます。
エロスの矢を取り戻したシルヴィアは、エロスに助けてもらおうと祈りを捧げます。祈りが通じ、エロスが小舟で助けにやってきました。
シルヴィアとアミンタを引き合わせようと、シルヴィアを小舟に乗せ、アミンタがいるディアナの神殿へと向かうのでした。
【第3幕】
〜ディアナの神殿近くの海岸〜
ディアナの神殿近くの海岸では、酒神バッカスをたたえるお祭りが行われています。シルヴィアを探しに来たアミンタもその場にいます。
そこへ、エロスがシルヴィアを連れてやってきました。シルヴィアとアミンタは再会できたのです。
ところが、シルヴィアを追ってきたオリオンがやってきて、シルヴィアを再び連れ去ろうとします。神殿に身を潜めたシルヴィアをオリオンが引き出そうとしたところ、ディアナの怒りに触れ、オリオンはディアナによって殺されてしまいました。
貞節を司る女神であるディアナは、シルヴィアにも怒りを向けます。
しかし、エロスがかつてディアナも若い羊飼いエンデュミオンに恋をしていたことを思い出させると、ディアナの心は和らぎ、シルヴィアとアミンタの恋を祝福するのでした。
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