プレビュー:新国立劇場オペラ『ホフマン物語』3月15日(水)~21日(火・祝)

2023年3月15日(水)~21日(火・祝)
新国立劇場オペラ

『ホフマン物語』

鮮やかな光のマジックで幻想世界が繰り広げられる

オッフェンバック唯一のオペラ

オッフェンバックといえばオペレッタ『天国と地獄』。19世紀後半に活躍し、たくさんのオペレッタを作曲しました。

彼はたった1作品、オペラを書き残しています(未完、彼の死後補筆された)。それが『ホフマン物語』です。「ホフマンの舟唄」はこのオペラの第4幕で歌われる二重唱です。

幻想文学作品を発表していた作家E.T.A.ホフマンの3つの小説『砂男』『顧問官クレスベル』『大晦日の夜の冒険』が原作で、主人公である詩人のホフマンが三人の女性に恋をして破れる失恋譚という構成になっています。酒場に集った人々を前にホフマンが恋の顛末を回想していくのですが、それぞれ幻想的な雰囲気で描かれます。


最初の相手はオランピア。彼女は人形です。同じ『砂男』を原作とするバレエ作品に『コッペリア』があります。二人目は楽器職人の娘、病身のアントニア。歌い続けて死んでしまいます。三人目はヴェネツィアの娼婦ジュリエッタ。彼女たちはそれぞれ死、芸術、性への欲求を表しています。そしてエピローグ(第5幕)にはミューズが登場します。

特徴的な色と光を使用した演出が見どころ


2003年に新国立劇場で初演されレパートリーとなったこの作品は、フィリップ・アルローが演出・美術・照明を手がけています。光と色を駆使して幕ごとにガラリと雰囲気が変わり、強烈に印象付けられ一度見たら忘れられません。すばらしい視覚効果です。

特に女性たち、第2幕のオランピアは黄緑、第3幕のアントニアは青、第4幕のジュリエッタは赤、そして紫の照明、とテーマカラーで使い分けられそれぞれの女性のキャラクターを実に効果的に際立たせています。

多彩な歌唱をじっくり楽しめるシンプルな相関関係
魅力的なキャスト

この作品は主要な登場人物が多くなく、ホフマン対幕ごとに変わる恋の相手=マドンナ、というシンプルな相関関係なので見ていて誰がどういう役なのか混乱することがまずありません。どういう状況でどんなことが歌われているのかわかりやすいので鑑賞に余裕が生まれます。

ホフマン|レオナルド・カパルボ


今回のキャストはとても魅力的! 詩人ホフマン役は新国立劇場初登場のレオナルド・カパルボです。2014年の大野和士指揮、リヨン歌劇場の来日公演でホフマンを歌いました。ホフマン役はカパルボの当たり役、久しぶりの彼のホフマンが楽しみです。

オランピア|安井陽子、アントニア|木下美穂子
ジュリエッタ|大隅智佳子、ニクラウス/ミューズ|小林由佳

今回マドンナ3役とミューズには日本の女性歌手が配役されています。人形のオランピアは安井陽子が演じます。このオペラ最大の見せ場、かわいらしくカクカク動きながら超絶技巧のコロラトゥーラを披露します。このオペラに終始まとわりついているダークな雰囲気が最も色濃く出ている病身の歌姫アントニアは、木下美穂子が歌います。一筋縄ではいかないジュリエッタは大隅智佳子が演じます。ニクラウス/ミューズはメゾ・ソプラノの小林由佳です。

リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトット
エギルス・シリンス


そしてリンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトットという4役をバス・バリトンのエギルス・シリンスが演じます。ホフマンのそばにいる悪役で、この作品に漂うちょっと不気味で暗い雰囲気を作り出します。世界中の歌劇場で活躍し、ワーグナー作品も得意とする存在感抜群のシリンスは目が離せなくなるに違いありません。

原作が幻想文学ということもあり、この作品は現実と幻想が錯綜し、単純に喜劇とか悲劇と分類することができません。終始奇怪で、少し怖くて暗くて絶望感が醸し出されています。不思議な世界観を楽しめるこのオペラ、ぜひ体験してみてください。

舞台写真|新国立劇場オペラ『ホフマン物語』2018年公演より。撮影:寺司正彦


2023年3月15日(水)~21日(火・祝)
新国立劇場オペラ『ホフマン物語』
会場:新国立劇場 オペラパレス

開演
15日(水) 18:30
17日(金) 14:00
19日(日) 14:00
21日(火・祝) 14:00

★ チケット料金
24,200円〜4,400円

詳しくは:新国立劇場


オペラ『ホフマン物語』原作紹介はこちら↓
E.T.A.ホフマン『砂男』〜オペラの原作#04


公演一覧
公演プレビュー


エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。