ギリシャ神話の世界で起こる愛の物語、バレエ『シルヴィア』のあらすじや見どころを解説|23年3月にハンブルク・バレエ団が来日
2. バレエ『シルヴィア』はレオ・ドリーブの三大バレエの1つ
レオ・ドリーブ
出典:Wikimedia Commons
バレエ『シルヴィア』の音楽は、フランスの作曲家レオ・ドリーブ(1836年〜1891年)の作曲です。
ドリーブは「フランス・バレエ音楽の父」とも呼ばれ、バレエ『コッペリア』の作曲家としても広く知られています。
バレエ『泉』(1866年)『コッペリア』(1867年)『シルヴィア』(1876年)の3作品は、ドリーブの三大バレエと呼ばれ、とくに『コッペリア』と『シルヴィア』は初演から150年以上経った現代でも、さまざまなバレエ団で上演される人気作です。
『白鳥の湖』などで知られる作曲家チャイコフスキーは、ドリーブの『シルヴィア』を絶賛し、「もし私がもっと早くこの作品を知っていたら『白鳥の湖』を作曲しなかっただろう」と語ったと言われています。
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3. バレエ『シルヴィア』の演出家による違い
バレエ『シルヴィア』は、1876年にパリ・オペラ座バレエ団にて初演されました。
その後、現代までさまざまな演出家によるバージョンが発表されています。
本記事では、『シルヴィア』の中でもとくにメジャーな演出について、特徴や演出家による違いを解説します。
3.1【初演】ルイ・メラント版(1876年)
レオン・ミンクスとレオ・ドリーブの共作『泉』ジェミル役のルイ・メラント(1866)/シルヴィアを演じるリタ・サンガッリ(1876年)
出典:Wikimedia Commons
バレエ『シルヴィア』の初演は1876年です。ルイ・メラント振付で、パリ・オペラ座バレエ団が上演しました。
初演では、シルヴィアを当時のパリ・オペラ座バレエ団の人気ダンサー リタ・サンガッリが、アミンタを振付家のルイ・メラントが踊りました。
当時は、バレエとオペラを同時に上演するプログラムが通常でしたが、『シルヴィア』は当時では珍しくバレエ単独で上演されています。
3.2 ジョージ・バランシン版(1950年)
バレエ・リュス最後の振付家で、ニューヨーク・シティ・バレエ団の生みの親でもあるジョージ・バランシンも『シルヴィア』の振付・演出を行っています。(初演1950年)
バランシン版の『シルヴィア』は、第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ部分だけであり、アントレ・アダージオ・シルヴィア、アミンタのそれぞれのソロの踊り・コーダの構成です。
参考:Sylvia Pas de Deux | Balanchine
3.3 フレデリック・アシュトン版(1952年/2004年)
イギリスの振付家フレデリック・アシュトンのアシュトン版『シルヴィア』は、バレエ『シルヴィア』の中でも特に有名な演出です。
1952年、ヌレエフのバレエ・パートナーとしても知られるマーゴ・フォンテインの主演で初演が行われました。
2004年に、アシュトン生誕100周年シリーズにおいて改訂を加えながら復元されています。
3.4 デヴィッド・ビントレー版(1993年/2012年)
デヴィット・ビントレー版『シルヴィア』は、1993年にバーミンガム・ロイヤル・バレエ団で初演されました。
初演時は、現新国立劇場バレエ団芸術監督の吉田都がシルヴィアを、現英国ロイヤル・バレエ団芸術監督のケヴィン・オヘアがアミンタを務めています。
ビントレー版『シルヴィア』の舞台は、現代。お互いに好意を寄せつつも、愛を信じられない家庭教師の娘と召使いの青年が、ギリシャ神話の世界へとタイムスリップします。
タイムスリップした先では、家庭教師の娘がシルヴィア、召使いの青年がアミンタ、彼女たちが仕える伯爵夫婦が女神ディアナとオリオンという設定です。
▼ 新国立劇場バレエ団『シルヴィア』(2012年)
3.5 ジョン・ノイマイヤー版(1997年)
1997年にパリ・オペラ座バレエ団で初演されたジョン・ノイマイヤー版の『シルヴィア』も従来のストーリー、設定とは異なります。
狩りの女神ディアナに仕えるニンフ シルヴィアは、勝ち気な性格。そんなシルヴィアの前に、シルヴィアに好意を寄せる若い羊飼いのアミンタが現れます。
初めて出会う異性、そして自分自身の感情に戸惑ったシルヴィアは、一度はアミンタに心を寄せるものの、ディアナへの忠誠心を思い出し、アミンタを拒絶。
恋の神アムールが男性的な魅力を持つオリオンへ変身してシルヴィアを誘惑し、シルヴィアに性の世界を教えます。
月日が経ち、再び出会うシルヴィアとアミンタ。しかし、二人がもう一度結ばれることはありませんでした。
ノイマイヤー版『シルヴィア』は、衣装や美術も従来の『シルヴィア』とは異なります。
第1幕は、まるで戦士のような勇ましい姿で登場するディアナとシルヴィアたち。舞台装置も現代的でシンプルです。
第2幕は、第1幕のシルヴィアとは打って変わって、真紅のドレスに身を包んだ女性らしい出で立ちに。舞台装置は愛の神アムールの像が置かれているだけです。
第2幕2部は、シルヴィアとアミンタの再会の場面。オレンジのワンピースに身を包んだシルヴィアと薄いグレーのジャケットを着たアミンタの髪には白髪が交じっています。
通常、シルヴィアのVaとして使われるピチカートも、ノイマイヤー版ではシルヴィアとアミンタの再会のパ・ド・ドゥに。
従来のハッピーエンドとは異なる苦い結末が観る人の心を打ちます。2023年3月には、ノイマイヤー自身が芸術監督を務めるハンブルク・バレエ団が来日し『シルヴィア』全幕を上演します。
▶ 5. 2023年3月ハンブルク・バレエ団が来日!ノイマイヤー版『シルヴィア』を上演
3.6 マニュエル・ルグリ版(2018年)
現ミラノ・スカラ座バレエ団の芸術監督であるマニュエル・ルグリが、ウィーン国立歌劇場バレエ団の芸術監督時代に振り付けました。(初演2018年)
ご存知のとおり、ルグリは、パリ・オペラ座バレエ団のエトワール(最高位のダンサー)を務めた人物。パリ・オペラ座バレエ団で上演されたダルソンヴァル版『シルヴィア』、ノイマイヤー版『シルヴィア』の両方を踊っています。
そんなルグリが手がけたルグリ版『シルヴィア』はどちらかというと、古典の趣を尊重したダルソンヴァル版に近く、衣装や美術も古典の様式を取り入れています。
▼ウィーン国立歌劇場バレエ団『シルヴィア』
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