クリスマスシーズンの定番『くるみ割り人形』のストーリーや見どころを解説!2022年〜2023年の舞台も紹介
6. バレエ『くるみ割り人形』の見どころ【第2幕 お菓子の国】
続いて第2幕の「お菓子の国」の見どころを紹介します。
第2幕は、ストーリーとはあまり関係のない踊り「ディベルティスマン」が繰り広げられるのが特徴です。
6-1.
チョコレート(スペインの踊り)
チョコレート(スペインの踊り)
お菓子の国で最初に披露されるのは、チョコレート(スペインの踊り)です。
赤やブラウンの衣装で踊られることが多く、上記の動画のニューヨーク・シティ・バレエ団では、ブラウンを基調にした衣装に、ペアごとに異なる色のタイツとシューズが印象的です。
1分半ほどの短い曲ですが、明るくエネルギッシュな曲調で、お菓子の国のワクワク感が表現されています。
なお、「チャイコフスキー三大バレエ」の1つである『白鳥の湖』にもスペインの踊りが登場します。『白鳥の湖』におけるスペインの踊りは、演出によっては悪魔ロットバルトの手下となることもあり、『くるみ割り人形』よりもクールな雰囲気です。
【「白鳥の湖」よりスペインの踊り】
6-2.
コーヒー(アラビアの踊り)
コーヒー(アラビアの踊り)
2番目に登場するのは、コーヒー(アラビアの踊り)。スペインの踊りの明るい雰囲気とは打って変わって、しっとりと妖艶な雰囲気です。
上記の動画はマリインスキー・バレエ団のアラビアの踊り。紫や赤などの落ち着いた色の衣装が多く、ベリーダンスの衣装のように上下がセパレートした衣装もよく見かけます。
バレエ衣装専門店では、『ラ・バヤデール』や『海賊』でも使用される衣装を「アラビアの踊りの衣装」として貸し出していることが多いようです。
上記の動画では女性ダンサーのみですが、女性ダンサー1人に複数の男性ダンサーがつく演出や男女ペアで踊られる演出もあります。
6-3.
お茶(中国の踊り)
お茶(中国の踊り)
お菓子の国の3番目の踊りは、お茶(中国の踊り)です。フルートの軽快なメロディーに乗せてテンポよく踊られます。
一般的に男女ペアで踊られ、男性ダンサーは連続ジャンプ、女性ダンサーはトゥシューズで立ったままの振付など、繰り返しの振付が多いのが特徴。そのため、1分ほどの短い曲ですが、非常にハードな踊りです。
衣装はチャイナドレス風のものが多く、扇子や番傘など小道具が用いられることも多々あります。
6-4.
トレパック(ロシアの踊り)
トレパック(ロシアの踊り)
お菓子の国4番目の踊りは、トレパック(ロシアの踊り)です。
トレパックは、ウクライナの農民の踊りのこと。「大麦糖の踊り」という題もありますが、日本ではあまり知られていないお菓子なので、ダンスの名前で呼ばれることが多いです。「大麦糖」は飴菓子の一種で、16〜17世紀のフランス宮廷で珍重されたといわれています。また、大麦糖ではなくジンジャーブレッドマン(生姜入りの人形型のパンまたはクッキー)の踊りという説もあります。
大麦糖 出典:Wikimedia Commons
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男性ダンサーだけで踊られることが多く、ダイナミックな振付が特徴的です。
コサックダンスをもとに振り付けられており、演出によってはコサックダンスのステップとして有名な、しゃがんだまま足を入れ替える動きが取り入れられていることも。
衣装も、コサックダンスで使用される民族衣装をモチーフにしています。
なお「ロシアの踊り」というタイトルですが、コサックダンスもウクライナの伝統舞踊です。
6-5.
葦笛(フランスの踊り)
葦笛(フランスの踊り)
お菓子の国5番目の踊りは、葦笛(フランスの踊り)です。ゆっくりとしたテンポで上品に踊られます。某CMで使われたこともあり、日本国内では非常に有名な曲でしょう。
葦笛の踊りはフランス語で「Les Mirlitons」。ミルリトンとは葦笛の意味であると同時に、アーモンド味のタルトの名前にもなっています。
アーモンドのタルト、ミルリトン・ド・ルーアン
出典:Wikimedia Commons
そのほか「葦の茎でできた飴」「羊飼いの踊り」という解釈もあります。
上記の動画は、マリインスキー・バレエ団の『くるみ割り人形』です。バレエ団付属のバレエ学校であるワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒が踊っています。
上記のように、女性2名・男性1名のパ・ド・トロワ(3人組の踊りの意味)のこともあれば、女性のみで踊られることもあります。
衣装は、女性はクラシック・チュチュ(スカートが横に張った衣装のこと)、男性は上記の動画のような貴族風の衣装が多いです。
6-6.
キャンディボンボン(ジゴーニュおばさんと道化たち)
キャンディボンボン(ジゴーニュおばさんと道化たち)
お菓子の国6番目の踊りは、キャンディボンボン(ジゴーニュおばさんと道化たち) です。日本では「ギゴーニュおばさん」「キャンディケーキの踊り」と呼ばれることもあります。
大きなスカートの中から、次々と子役ダンサーが飛び出てくる演出が特徴的です。
プロのバレエ団では省略されることもありますが、バレエ教室の発表会では、小さい子どもの可愛らしい見せ場としてたびたび披露されます。
6-7.
花のワルツ
花のワルツ
お菓子の国7番目の踊りは、花のワルツ。演奏会用組曲にも入っており、非常に有名です。バレエを観たことがない人でも一度は聞いたことがあるでしょう。
「金平糖の女王の侍女」「デコレーションケーキ」など、演出によって解釈が変わります。
「花のワルツ」という名前のとおり、華やかな音楽が特徴です。コール・ドとして大人数で踊られることが多く、第1幕のコール・ドは「雪の精」、第2幕のコール・ドは「花のワルツ」という印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
演出によっては、プリマやソリストの役が設けられることもあります。(※)
※プリマ:主役級のダンサーのこと
ソリスト:主役に次ぐ階級のダンサーのこと
6-8.
金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
お菓子の国のラストは、金平糖の精と王子(またはクララとくるみ割り人形)のグラン・パ・ド・ドゥです。
優雅で壮大なアダージオに始まり、王子と金平糖の精それぞれのバリエーション(仏:バリアシオン、ソロの踊りの意味)、高揚感のあるコーダ(フィナーレの意味)と続きます。
金平糖の精のバリエーションは、演奏会用組曲にも編曲されているほか、テレビ番組でもたびたび使われるため、非常に有名です。
なお、日本語では「金平糖の精」と呼ばれることがほとんどですが、元々は「ドラジェ」というアーモンドを砂糖でコーティングした砂糖菓子を指しています。英語では「the Sugar Plum Fairy」、イタリア語では「Fata Confetto」で、いずれも各言語のドラジェ・砂糖菓子の一種の名前です。
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ちなみに、日本語の「金平糖」はポルトガル語で砂糖菓子を意味する「Confeito」(読み:コンフェイト)に漢字を当てたもの。このあたりからも、お菓子の国の女王が「金平糖の精」と呼ばれる理由が見えてきそうです。
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