プレビュー:新国立劇場オペラ『エウゲニ・オネーギン』1月24日(水)~2月3日(土) 新国立劇場オペラパレス
極上のロシア・オペラは王道の恋愛ドラマ
プーシキン原作を甘美なチャイコフスキーの音楽で彩る
2019/2020のシーズンのオープニングでロシア・オペラの新制作第1弾として上演された『エウゲニ・オネーギン』が再演されます。
チャイコフスキーの舞台作品といえばなんといっても三大バレエ作品『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』が有名ですが、彼は『スペードの女王』『イオランタ』等、オペラを10作品以上作曲しています。その中でも代表作と言われるのがこの『エウゲニ・オネーギン』です。
原作はプーシキン。19世紀のロシアの田舎から物語は始まります。地主の娘タチヤーナは妹のオリガの婚約者、レンスキーの友人オネーギンと出会います。都会的な大人のオネーギンに夢中になってしまったタチヤーナ、手紙を託すものの全く相手にされません。数日後のパーティでオネーギンがオリガとばかり踊るので腹を立てたレンスキーはオネーギンに決闘を申し込みます。親友同士だったのに決闘は行われ、レンスキーは命を落としてしまいます。失意のオネーギンは放浪の旅に出てしまうのですが、何年かの時を経て都会のペテルブルク社交界でオネーギンとタチヤーナは再会します。タチヤーナは公爵夫人となっておりオネーギンは愛を告白しますが、今度はタチヤーナがオネーギンを拒絶するのでした。
すれ違いからドラマが生まれる
甘美な音楽が描く男女の心理
新国立劇場『エウゲニ・オネーギン』2019年公演より
この物語は男女の思いのすれ違いが描かれます。タイミングが合わず結局結ばれることなく、命を落としてしまう人までいて、なんともやるせない展開です。でもこれがメロドラマのお約束。王道なのです。
タチヤーナは、最初は鈍臭い田舎の少女、オネーギンは都会からやってきたクールで虚無的な青年。素直にタチヤーナの思いと向き合おうとはしませんでした。タチヤーナの早すぎた告白によるすれ違いです。
ところが数年後、タチヤーナは美しく身分の高い都会の貴婦人に変身しています。オネーギンは自身の恋心を自覚しタチヤーナに迫ります。でも立場が逆転した今ではタチヤーナは心を開こうとはしません(そもそも既婚者)。オネーギンの遅すぎた告白によるすれ違いです。
タイミングさえ合えば恋は成就したのかもしれませんが、それではメロドラマになりません。
この二人の心の移ろいをロマンティックに盛り上げてくれるのがチャイコフスキーの音楽です。
チャイコフスキーの甘美で抒情的な音楽に酔う
新国立劇場『エウゲニ・オネーギン』2019年公演より
チャイコフスキーの見本市のようにたくさんの美しい旋律を聴くことができます。
聴きどころとしては、第1幕タチヤーナによる「たとえ死んでもいいの」(手紙の場)、第2幕で決闘の時を待つレンスキーが歌う「青春は過ぎ去り」、第3幕はじめのポロネーズ、そしてタチヤーナの夫グレーミン公爵の歌う「誰でも一度は恋をして」などです。ポロネーズは単独でコンサートでも演奏される機会が多く、耳にされたこともあることでしょう。
グレーミン公爵とタチヤーナ年の差カップル。グレーミン公爵はあまり出番がないのですが、いい年をしてタチヤーナに恋をして、彼女が素敵な女性であることを歌う「誰でも一度は恋をして」はとてもチャーミングなアリアです。タチヤーナが結婚を決めた理由がわかるような気がしますし、チャイコフスキーも最後の方でとびきりのアリアを用意しているところからも、グレーミン公爵を良い人物と考えていたのではないかと思ってしまいます。
チャイコフスキーの甘く美しい音楽がドラマを何倍にもロマンティックに盛り上げてくれます。
バレエ『オネーギン』のファンにもみてほしい
19世紀帝政ロシアの貴族社会の様子
新国立劇場『エウゲニ・オネーギン』2019年公演より
バレエ『オネーギン』(ジョン・クランコ振付)は1965年に初演された作品で、音楽はオペラ『エウゲニ・オネーギン』だけでなく、チャイコフスキーのさまざま作品で構成されています。
恋する人たちの心理描写がすばらしく、大人のバレエとして人気の高い演目です。
バレエ『オネーギン』のファンの方たちにもぜひオペラ『エウゲニ・オネーギン』も鑑賞していただきたいと思います。
ドラマの時代背景、19世紀のロシアの上流階級のありよう、青年貴族の憂鬱、当時の女性の立場、などをオペラだと一層感じ取ることができるのです。
そしてオネーギンのダメ男っぷりも、よりよくわかります。
ロシア・オペラに相応しい出演者
この作品はロシア語で上演されます。スペシャリストが登場することでも話題になっています。
今回、主要登場人物がみな新国立劇場初登場!
タチヤーナ役にエカテリーナ・シウリーナ(ソプラノ)、ロシア出身で世界の主要なオペラハウスで主役を務めるプリマ・ドンナです。オネーギン役にキーウ出身のユーリ・ユルチュク(バリトン)、レンスキー役にサンクトペテルブルク出身のヴィクトル・アンティペンコ(テノール)、オリガ役にロシア出身のアンナ・ゴリャチョーワ(メゾソプラノ)、グレーミン公爵役にウクライナ出身のアレクサンドル・ツィムバリュク(バス)が登場します。
指揮のヴァレンティン・ウリューピンも新国立劇場初登場です。
気合いを感じる今回の公演、王道の恋愛ドラマに浸りましょう。
撮影:寺司正彦
公演情報
1月24日(水) 18:30
27日(土) 14:00
31日(日) 14:00
2月 3日(土) 14:00
会場: 新国立劇場オペラパレス
チケット料金:29,700~1,650円
詳しくは:新国立劇場
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