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プレビュー:新国立劇場オペラ『魔笛』12月10日(火)~12月15日(日) 新国立劇場オペラパレス

オペラ初心者に最適
メルヘン&ファンタジーの傑作

誰でも何度でも楽しめる!
聞いたことのある有名なアリアも

新国立劇場「魔笛」より 撮影:堀田力丸

モーツァルトが最後に作曲したオペラが『魔笛』です。ジングシュピール(音楽劇、セリフがありオペラの一種とされている)として作曲されました。自分の一座のために台本を書いたシカネーダーが仕事を求めていたモーツァルトに作曲を依頼しました。超絶技巧を駆使する夜の女王のアリア、鳥刺しパパゲーノの「おいらは鳥刺し」、パパゲーノとパパゲーナの「パ・パ・パ」の二重唱などはどなたでも聞いたことがあることでしょう。モーツァルトの最後のオペラにふさわしく、各声種、3人の童子のボーイソプラノも含め、惜しげもなく聞かせるシーンが散りばめられています。たくさんのオペラ作品の中でも群を抜いて年齢を問わず人気が高い不朽の名作なのです。

ゲーム好きにも刺さる秀逸なファンタジー
美しい舞台美術にも注目

新国立劇場「魔笛」より 撮影:堀田力丸

大蛇に追われる王子タミーノを夜の女王の3人の侍女が助けます。夜の女王の娘パミーナが悪い魔法使いザラストロに誘拐されており、夜の女王はタミーノを騎士として遣わせ、ザラストロに復讐しようとしていると、タミーノは侍女たちから聞かされます。パミーナを救い出したら娘を与えると夜の女王はタミーノに約束します。ここから魔法の笛を渡されたタミーノの救出劇が始まります。途中鳥刺しのパパゲーノにあったりザラストロがタミーノに試練を与えたりといろいろなことがあって最後はハッピーエンドです。この「いろいろなこと」が現代のRPGに全く引けを取らないおもしろさ。登場人物も多いのですが、不思議と物語に引き込まれてスムーズに楽しめてしまうのです。

新国立劇場のプロダクションは現代アートで活躍し、オペラ演出も手掛けているウィリアム・ケントリッジによるものです。素描を映像に取り入れ、夜の女王のシーンに現れる神秘的でSF的でもある映像による空間は、想像を超える美しさで、劇場で鑑賞するからこその稀有な体験ができます。他にも影絵芝居も出てきたりして、工夫の凝らされた楽しくファンタジックな要素もふんだんに盛り込まれています。

内包されている意味を知る

新国立劇場「魔笛」より 撮影:堀田力丸

オペラの物語には、ストーリーの奥深い部分に込められている真理があります。これを理解することでグッと豊かな鑑賞体験ができます。

演出のケントリッジは、友愛の精神に満ちた「人を愛する」ことを謳っています。また、啓蒙思想の危うさに「植民地主義」を通して光を当て、「善」や「力」についての洞察が込められているそうです。人種差別や優位的な男性集団による女性の排除、合理性と幻想性などなど、ケントリッジが『魔笛』から読み取ったメッセージを感じながら鑑賞してみると、これまでの『魔笛』とは異なる一面を知ることができるかもしれません。

新国立劇場初登場のブレスリック

左上 指揮:トマーシュ・ネトビル 演出:ウィリアム・ケントリッジ ザラストロ:マデウス・フランサ タミーノ:パヴォル・ブレスリック
左下 夜の女王:安井陽子 パミーナ:久嶋香奈枝 パパゲーナ:種谷典子 パパゲーノ:駒田敏章

新国立劇場では2012年に『さまよえるオランダ人』で登場したトマーシュ・ネトピルが12年ぶりに指揮をします。そしてタミーノはテノールのパヴォル・ブレスリックが歌います。彼はモーツァルト歌いとして世界中で大活躍しており、今回新国立劇場初登場となります。同じく新国立劇場初登場は、ザラストロ役のバス、マテウス・フランサです。夜の女王はソプラノの安井陽子、それからパミーナは九嶋香奈枝、パパゲーナは種谷典子、パパゲーノは駒田敏章と新国立劇場オペラ研修所出身者が務めます。

今回の公演は、文化庁劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業となっており、18歳以下の181名が先着順で無料招待されます。詳細は新国立劇場のウェブサイトをご覧ください。


開演
12月10日(火)18:30
  12日(木)14:00
  14日(土)14:00
  15日(日)14:00

会場: 新国立劇場オペラパレス

チケット料金:20,700円 ~1,650円

詳しくは:新国立劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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