プレビュー:東京バレエ団ベジャールの『くるみ割り人形』2025年2月7日(金)、8日(土)、9日(日) 東京文化会館
独創性あふれる『くるみ』
うれしいスペシャルゲストも
ベジャールの母への思いを『くるみ』で表現
古典の傑作『くるみ割り人形』。世界中のバレエ団がクリスマスシーズンに上演します。東京バレエ団も、斎藤友佳理団長が芸術監督時の2019年に改訂・振付した版をレパートリーにしています。マーシャ(主人公の少女)がクリスマスツリーの中に入り込んでしまうというもの。コロンビーヌ、ピエロ、ウッデンドールと行動をともにするというかわいらしい内容です。
今回東京バレエ団が上演するもう一つの『くるみ』のレパートリーは、20世紀を代表する振付家、モーリス・ベジャールが作った『くるみ割り人形』です。
ベジャールは7歳の時に他界した母親への思慕を作品にしました。さらにそれだけでなく、自身のバレエへの情熱をも盛り込んでおり、とても奥深い少年時代の追憶を辿る作品になっています。
魅力的な登場人物とあらすじ
主人公は少女ではなくビムという少年です。「ビム」はベジャールの子どもの頃のベジャールの呼び名。つまりビムはベジャール自身です。そしてクリスマスにビムの夢の中に現れる亡くなった母、飼い猫のフェリックス、お父さんであり振付家マリウス・プティパ、さらに『ファウスト』のメフィストでもあるMも出てきます。このMは古典の『くるみ』でのドロッセルマイヤーに当たります。さらにベジャールが子ども時代に見に行ったショーに登場していたキャラクターにちなんだ光の天使も出てきます。
バレエのレッスンやボーイスカウトの訓練、妹と遊んだ『ファウスト』の芝居ごっこなどのシーンが次々と繰り広げられます。やがて舞台にはヴィーナス像が現れます。とても巨大なこの像はベジャールの母親へイメージに重ね合わせられているのだそう。
子ども時代の回想がキラキラとファンタジックに続いてから、ビムと母はパ・ド・ドゥを踊ります。
チャイコフスキーの三大バレエ音楽の中でも最高傑作と言われる『くるみ割り人形』の音楽の使い方が素晴らしく、ダンスを見ることによって音楽の素晴らしさを再認識するというベジャールの天才ぶりに感動します。
海外から素敵なゲストが参加
フェリックスはビムと一緒にいるキュートな猫。見た目にもインパクトがあり人気のキャラクターです。このフェリックスに、ダニール・シムキンが3公演のうち2公演で登場します。バレエ・フェスティバルでお馴染みの超絶技巧を軽々とこなす軽やかなシムキンは、フェリックスにぴったりです。1公演で宮川新大もフェリックスで登場します。
ソリで登場してマジックを披露するマジック・キューピーというキャラクターがいるのですが、これは1999年の初演の時から東京バレエ団の前バレエ団長、飯田宗孝が行っていました。2022年に他界した飯田へのオマージュとして、今回、元モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督であるジル・ロマンが演じます。
ビムには池本祥真と山下湧吾、母には政本絵美と榊優美枝、M…に柄本弾と大塚卓らがキャスティングされています。
心があたたかくなるベジャールの『くるみ割り人形』、クリスマスの風物詩としての『くるみ』とは異なる私小説のような作品を楽しみましょう。
ベジャールの『くるみ割り人形』
会場:東京文化会館
開演
2025年2月7日(金) 19:00
8日(土) 14:00
9日(日) 14:00
チケット料金:14,500~3,000円
詳しくは:NBS
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