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プレビュー:5月19日(金)公開〜映画『セビリアの理髪師』 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23 TOHOシネマズ日本橋、ほか

2023年5月19日(金)〜25日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス
シネマシーズン2022/23

『セビリアの理髪師』

音楽だけでなく芝居、舞台美術、衣裳と全方向にセンスが光る
楽しいオペラ

真面目に全力で喜劇をつくる

© Bill Cooper


ロッシーニ作曲『セビリアの理髪師』は、モーツァルト作曲『フィガロの結婚』の前のお話です。

『フィガロの結婚』から30年後に作曲されましたが、原作者ボーマルシェが三部作として書いた戯曲は、『セビリアの理髪師』『フィガロの結婚』『罪ある母』の順に続きます。

”セビリアの理髪師”とはフィガロのこと。『フィガロの結婚』では文字通りフィガロの結婚のことが描かれますが、『セビリアの理髪師』は、フィガロの結婚を邪魔するアルマヴィーヴァ伯爵が結婚するまでのお話で、伯爵の結婚成就のためにフィガロが活躍します。ちなみに、この英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズンでは、7月に『フィガロの結婚』が上映されます。

実はオペラには喜劇は少なく、これは貴重な喜劇です。オペラ歌手が変装して家に潜入したり変な策略を立てたりして真剣にドタバタするさまは本当に楽しく、歌手は役者としても達者であることがよくわかります。

美しい色彩、テンポの良いドラマ展開

© Bill Cooper


このプロダクションは2005年にモッシュ・ライザーとパトリス・コーリエの演出により初演されたもので、今回で5度目の再演、色鮮やかなな衣裳と舞台セットに目を奪われます。フィガロのいでたちは「スーパーマリオ」のマリオそっくり。フィガロは客席から歌いながら登場するのも新鮮です。
登場人物が割と少ないのでしっかり予習しておくととても楽しめます。

ロジーナという娘は後見人であるバルトロの屋敷に閉じ込められています。彼女に恋したアルマヴィーヴァ伯爵は身分を隠し、ロジーナのいる部屋の窓の下でセレナーデを歌い思いは届きますが、屋敷からロジーナを救出ことができません。そこにフィガロが登場し、協力してくれることになります。後見人バルトロは実はロジーナと結婚しようと目論んでいます。それとバルトロと結託するロジーナの音楽教師ドン・バジーリオ、この5人を押さえておきましょう。

このオペラは前半に有名なアリアが集中しているので、まずはアリアを楽しみ、後半はドタバタがどう収束するのかドラマを楽しみましょう。

キャラクターが立っているナイスなキャスト

ロジーナ:アイグル・アクメチーナ ©︎Lera Nurgalieva/アルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリー©︎Shervin Lainez


今回、最も注目したいのはロジーナ役のアイグル・アクメチーナです。まだ20代で役柄にピッタリ。堂々とした現代的なロジーナに好感がもてます。アルマヴィーヴァ伯爵はロッシーニ作品を得意とするローレンス・ブラウンリーが演じています。彼は新国立劇場オペラの『セビリアの理髪師』公演の際も、アルマヴィーヴァ伯爵を演じたことがあります。

フィガロはアンドレイ・フィロンチク、ドン・バジーリオには大スター、ブリン・ターフェルが演じています。バルトロのファビオ・カピタヌッチとともに、若い女性に好かれるはずもない、いや〜なおじさんを嬉々と演じています。

この収録の日にカピタヌッチは声のコンディションが悪く、歌は舞台袖からグラント・ドイルが歌ったのだそう。カーテンコールでは二人で登場していました。ライブ収録ならではのハプニングですね。

左から|バルトロ:ファビオ・カピタヌッチ/ドン・バジーリオ:ブリン・ターフェル/フィガロ:アンドレイ・フィロンチク/隊長:ダヴィッド・キンバーグ/ロジーナ:アイグル・アクメチーナ/ベルタ:エイリッシュ・タイナン/アルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリー
© Bill Cooper

卓越した舞台を導いたラファエル・パヤーレ

©︎Antoine Saito


上質なコメディを成功させたのは、オーケストラと歌手とをまとめた指揮者のラファエル・パヤーレでしょう。2022/2023シーズンよりモントリオール交響楽団の音楽監督を務めており、注目が集まるベネズエラ出身の若手指揮者です。テンポよく前進力のある演奏は小気味よく、軽やかでスピード感あるストーリー展開になっています。

ハイセンスな舞台美術、衣裳、ベストなキャスティング、そしてパヤーレによるフレッシュな演奏、すべてが揃い、抜群に楽しい喜劇となりました。ぜひ劇場で体験してください。

タイトル画像:©2016 ROH. Photograph by Mark Douet


2023年5月19日(金)〜25日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス

シネマシーズン2022/23
『セビリアの理髪師』
会場:TOHOシネマズ日本橋、ほか全国公開

開演:劇場による

★ チケット料金
一般・シニア|3,700円
学生・小人|2,500円(※要学生証)

詳しくは:東宝東和/英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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