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プレビュー:3月24日(金)公開!映画『赤い薔薇ソースの伝説』英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23

2023年3月24日(金)〜30日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス

シネマシーズン2022/23

『赤い薔薇ソースの伝説』

気鋭の振付家ウィールドンの待望の新作は
ありそうでなかったメキシコが舞台

英ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23、今シーズンでバレエ・ファンが最も楽しみにしていた新作『赤い薔薇ソースの伝説』が登場します。

原作は映画化もされたメキシコを舞台とした小説


『赤い薔薇ソースの伝説』はメキシコ人小説家ラウラ・エスキヴェルの第1作目の作品で、1992年に映画化され1993年に日本でも公開されました。

単行本|著:ラウラ エスキヴェル   訳:西村 英一郎 /世界文化社(1993年)
DVD|監督:アルフォンソ・アラウ 出演:ルミ・カバソス, マルコ・レオナルディ, レヒーナ・トルネ/ポニーキャニオン(2015年)
出典:amazon.co.jp


舞台は1910年代のメキシコです。三人姉妹の末っ子ティタは、「末娘は結婚せずに母親の面倒をみなければならない」という古いしきたりのせいで、母親であるママ・エレナから恋人のペドロと結婚することを許してもらえません。

ペドロはティタの姉であるロザウラと結婚します。ティタは涙をこぼしながら二人のウェディングケーキを作りました。ペドロとロザウラの結婚式当日、ウェディングケーキを食べた人は、なぜかみな体調に異変をきたしてしまいます。

その後、ティタはペドロから愛の証として赤い薔薇をもらいます。この花びらを入れた料理が不思議な魔法を引き起こします。薔薇のソースは、ティタのペドロへの思いを伝える媚薬として作用してしまうのです。

©2022 ROH. Photograph by Tristram Kenton

物語はティタとペドロの長い長い年月を追っていくのですが、今回のバレエでのエンディングは非常にドラマティックな演出が施されています。

他に、二人の周囲の人物たち、女家父長であるママ・エレナの知られざる若い頃のエピソードや、当時メキシコ革命であった時代背景を反映してもう一人の姉ゲルトゥルーディスの恋人は革命戦士である、という伏線があります。さらにティタにはジョン医師という男性が現れます。

ファンタジックで実はとても官能的なこの物語をウィールドンはよくぞバレエ化しました。鑑賞前には主な登場人物の相関関係、ストーリーを予習しておくことをお勧めします。そうすれば深くこのバレエ作品を理解できますし、それぞれの役を演じるダンサーたちの役作りも一層楽しめます。

舞台化のためにすべてゼロから作り上げた本当のオリジナル作品

今回、メキシコが舞台ということで音楽がとても新鮮です。これまでのバレエ作品では聞こえてこなかったアコースティック・ギター、オカリナ、さまざまなパーカッションが使われているのです。

音楽は既存の曲は使用せず、ジョビー・タルボットが作曲、そして指揮と音楽監修にメキシコ人であるアロンドラ・デ・ラ・バーラが参加しています。バレエは音楽を踊るわけですから、音楽は最も重要。明るく陽気、そして複雑で官能的なリズムのラテン・ミュージック満載でメキシコを体感できます。

作曲:ジョビー・タルボット| jobytalbot.com
指揮・音楽監修:アロンドラ・デ・ラ・バーラ|alondradelaparra.com

さらに明るい色調の衣裳、舞台美術、食事のシーン、すべてがこれまでのバレエにはなかった要素で満ちています。そして極めつけは演じるダンサーたちです。

素晴らしいキャスティング

登場するダンサーはみな、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。特に感情の揺れや思いを全身で伝える表現が見事です。なかなか複雑なストーリーであり、制約がある環境下でさまざまな思いを抱えて生きる人物たちなのですが、生き生きと思いが伝わってくるのです。さすがに演技力があり多彩なダンサーが揃っている英ロイヤル・バレエならではと思わされます。


主人公の末娘ティタにはフランチェスカ・ヘイワードがキャスティングされています。彼女はミュージカル映画『キャッツ』にヴィクトリア役で出演しています。今作でもとてもキュートでチャーミング。彼女が舞台にいると明るさが増します。ペドロはマルセリーノ・サンベが演じており、この二人のパートナーシップには大変魅了されます。二人の揺るぎない愛情が前向きに舞台を牽引していきます。

マルセリーノ・サンベ , フランチェスカ・ヘイワード©cammile Greenwell

©2022 ROH. Photograph by Tristram Kenton


他に怖いママ・エレナはベテランのラウラ・モレーラ。第2幕の亡霊として登場するシーンは圧巻のパフォーマンスです。姉の恋人である革命戦士ホアン・アレハンドレスにセザール・コラレス、とてもかっこいい役どころです。そしてアメリカからやってきたティタを愛する医師ジョン・ブラウンはマシュー・ボールがキャスティングされています。いろいろと濃いメキシカンな雰囲気の中で、抑えの効いた節度ある愛情表現が光っています。

振付:クリストファー・ウィールドン ©︎Angela Sterling


ゼロから創り上げるオリジナルのグランド・バレエは大カンパニーでもそうそう発表できることではありません。振付家クリストファー・ウィールドンがホームグラウンドである英ロイヤル・バレエのために作った、とっておきの作品は、不思議で官能的で濃いメキシコの恋人たちの物語です。これから何度も再演されることでしょう。

6月にはアメリカン・バレエ・シアターが上演する予定になっています。初演のオリジナルキャストである今作をしっかり目に焼き付けておきましょう。


2023年3月24日(金)〜30日(木)
英国ロイヤル/オペラ・ハウス
シネマシーズン2022/23  
『赤い薔薇ソースの伝説』
会場:TOHOシネマズ日本橋、ほか

上映時間:劇場による

チケット料金
一般・シニア|3,700円
学生・小人|2,500円(※要学生証)

詳しくは:東宝東和/英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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