世界中で愛される、泣けるオペラ『椿姫』〜あらすじや曲を紹介〜
5.オペラ『椿姫』公演・上映予定
東京文化会館大ホールで、ローマ歌劇場来日公演によるオペラ『椿姫』が予定されています!期間は9月13日(水)~9月18日(月・祝)の3日間。
また新国立劇場でも、2024年5月16日(木)~5月29日(水)の5日間に公演予定があります。
いずれも日本語字幕で、じっくりオペラ『椿姫』を鑑賞できます。
【ローマ歌劇場来日公演】
2023年9月13日(水)~9月18日(月・祝)
会場:東京文化会館 大ホール
開演:
9月13日(水)15:00
9月16日(土)15:00
9月18日(月・祝)15:00
★ チケット料金
59,000円〜8,000円
詳しくは:NBS
【新国立劇場】
2024年5月16日(木)~5月29日(水)
会場:新国立劇場 オペラパレス
開演:
2024年5月16日(木)19:00
2024年5月19日(日)14:00
2024年5月22日(水)14:00
2024年5月25日(土)14:00
2024年5月29日(水)14:00
★ チケット料金
29,700円〜7,700円
詳しくは:新国立劇場オペラ
6.ジュゼッペ・ヴェルディとオペラ『椿姫』
1850年代のヴェルディ 出典:Wikimedia Commons
イタリア・オペラの大作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ(正式名:ジュゼッペ・フォルトゥニーノ・フランチェスコ・ヴェルディ)。オペラ『椿姫』は、「中期三大傑作」の最後を飾る3作目(1作目は『リゴレット』、2作目は『イル・トロヴァトーレ』)。ヴェルディ18作目のオペラです。
オペラ『椿姫』は、ヴェルディ唯一の「プリマドンナ・オペラ」(女声歌手が主人公のオペラ)と言われ、物語の展開は主にヴィオレッタの視点で描かれています。原作小説の『椿姫』が、男性(語り部、デュマ・フィス)の視点で進むのとは対照的です。
これについて、当時ヴェルディと同棲関係にあったジュゼッピーナ・ストレッポーニ(1815-1897)の存在が指摘されています。
6-1.弱者への視線、ジュゼッピーナの存在
オペラ『ナブッコ』の楽譜を持つジュゼッピーナ・ストレッポーニ、1842年頃 出典:Wikimedia Commons
ジュゼッピーナ・ストレッポーニは元売れっ子オペラ歌手で、まだ無名だった時代のヴェルディを支援しました。しかし、仕事を得るために無理な舞台出演を繰り返し、さらに劇場関係の複数の男性と関係を持っては私生児を産んで捨てていました。このような過去を持ち、結婚もせず同棲を続けるジュゼッピーナに、人々は偏見の目を向けます。
ジュゼッピーナは後に妻となって終生ヴェルディを支え続けるのですが、ヴェルディも彼女に向けられる社会的視線を痛いほど感じていたことでしょう。ジュゼッピーナの苦しみが、オペラ『椿姫』のヒロイン像の中に取り込まれていることは想像に難くありません。
ジュゼッピーナ・ストレッポーニ、1897年のポートレート 出典:Wikimedia Commons
ジュゼッピーナの存在は、ヴェルディが持ち続けた「社会的弱者への視線」に強い影響を与えています。ヴェルディの「中期三大傑作」の『リゴレット』、『イル・トロヴァトーレ』、『椿姫』は、それまでの愛国的な英雄物語から一転し、身近にいて顧みられない弱者の悲しみや苦しみを前面に出すようになりました。ヴェルディ自身も音楽環境に恵まれない少年時代を過ごした苦労人です。性別や身体的特徴、出自、環境など、自らの責任や努力ではどうにもならない辛苦を背負った人々。それでも「愛」という尊厳を持ち続けた人間の姿があり、現実世界を懸命に生きる彼らこそ、ヴェルディの考える英雄だったのかもしれません。
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