オペラ『パルジファル』が伝える誘惑に負けない心とは!

オペラ『パルジファル』をご存じですか?もし、知らない方も『ワルキューレの騎行』はご存じでしょう。どちらもドイツの作曲家「リヒャルト・ワーグナー」の傑作です。

天才と言われたワグナーは、自身が手掛けたオペラの台本全てを書き、交響曲やオペラの作曲にとどまらない才能を持ち合わせています。そんなワーグナーオペラの傑作となったのが『パルジファル』。
キリスト教に於いて、聖杯や聖槍がいかに崇められ、神秘的な力があると信じられているかをこの作品から伺えます。

また、主人公のパルジファルは、アーサー王伝説の円卓の騎士パーシヴァルのドイツ語名です。ゲームなどでよくアーサー王などと一緒に引用されているので、こちらの名前なら知っているという方もいるかもしれません。

難しいオペラとも言われる一方で、実際に観てみると奥深く、興味深いオペラと思えるでしょう。『パルジファル』のあらすじや見どころを知って、ワーグナーの崇高で重厚な音楽、神秘的な世界を舞台で楽しんでみましょう!

『パルジファル』あらすじから知る誘惑の先にあるものとは

あらすじを把握しておけば、難しいと言われる『パルジファル』の物語も意外とすんなり分かります。ぜひ、あなたもオペラ『パルジファル』の世界観を感じてみてください。

『パルジファル』先読みあらすじ

先読みあらすじを知って、オペラ『パルジファル』の大枠を把握してみましょう。大枠だけでも把握できたら、あなたも『パルジファル』を知るオペラ愛好家の仲間入りです!

アムフォルタス王は、魔術師クリングゾルによって脇腹に聖槍による傷を負い、癒えないその傷口からは血が流れ続けています。
アムフォルタス王の傷の苦しみを治すために、グルネマンツやクンドリや若者(後にパルジファルという名が分かる)は治療する方法を探します。

パルジファルはクリングゾルの誘惑の魔術を退け、聖槍を取り戻します。

パルジファルは、アムフォルタス王の傷口に聖槍を当て、アムフォルタス王の苦しみを解き、新たな王となり幕を閉じます。

『パルジファル』の聖槍と聖杯とは?

『パルジファル』のあらすじに入る前に、物語の裏側をご紹介します!一見すると難しい『パルジファル』の世界に入りやすくなるでしょう。

『パルジファル』はキリスト教の伝説を基に描かれたとされています。
“槍”はキリストが十字架に架けられた際に脇腹を突いたもので、執行人の名からロンギヌスの槍とも呼ばれます。
“杯”は脇腹を突かれた際にキリストの血を受けた受け皿。原語の発音をもとに、グレイル(英)またはグラール(仏・独)とも呼ばれます。
ちなみに、聖餐の儀式に使ったり最後の晩餐に使われた器も日本語で聖杯と訳しますが、こちらはカリス(羅)またはチャリス(英)と呼び分けられている別物です。

この“聖槍”と“聖杯”が奉納された城の物語です。しかし、キリスト教の風合いというよりは、独自の宗教観が表れています。

パルジファル 登場人物

パルジファル
自身の名前も生い立ちも知らない若者。序盤は若者などと呼ばれる。「純粋な愚か者」という意味。

グルネマンツ
モンサルヴァート城の老騎士。第3幕からは隠者。

アムフォルタス
聖杯を守っているモンサルヴァート城の王。

クンドリ
呪われた女。善良だが、魔法によりクリングゾルの手下にされてしまう。

クリングゾル:悪の魔術師。

ティトゥレル:アムフォルタスの父。先王。

聖杯守護の騎士2人
小姓4人
花園の娘たち:クリングゾルの魔法で誘惑する娘たち

『パルジファル』あらすじ〜最後に解かれる病と呪い〜

オペラ『パルジファル』は、次第に謎が明らかになっていく物語です。最初は分からなくても、第3幕で真相が明らかになっていきます。難しいとはいえ、知ってしまえば深い内容に興味が湧いていく…。そんな深みを持った面白いオペラ作品です。ドイツ語の勉強や、道徳、西洋芸術を学びたい方にピッタリ!ぜひ、あらすじを知って実際の劇を鑑賞してみましょう。

パルジファル あらすじ
✳︎ 第1幕 ✳︎

時は中世、スペインのモンサルヴァート城近くの森。
モンサルヴァート城の老騎士グルネマンツと、聖杯守護の2人の小姓が聖なる森の見張り役をしています。

グルネマンツ
「森の守護者よ、眠りの守護者にまでなってどうする、せめて朝には起きて見張れ!」

グルネマンツの声にびっくりして2人の小姓が起きます。そして、3人は神への感謝を祈ります。
グルネマンツは2人の小姓に「ご水浴場の様子を見てこい。」と命じます。
すると、2人の騎士がやってきてグルネマンツに報告します。「王さまは、傷口のお痛みが激しくなったため、一睡もされず、水浴をしたいとご命令になったのです。」
グルネマンツは悲しみながら、「王さまの痛みの治療法は、どんなに探しあてても1つしかないのに。ただ1人でしかないのに。」と語ります。

2人の騎士「その方のお名前は?」

グルネマンツは答えられません。

2人の小姓が戻ってくると、クンドリという女性がやってきます。クンドリは馬から飛び降り、小汚い服のまま、地面を這うような粗野な振る舞いでグルネマンツの前まで来ました。

グルネマンツ
「どこからもってきた?」

クンドリ
「あなたには想像もつかない遠方からです。王さまに効く薬は、このバルサム(薬効のある香油)以外にアラビア中どこにもありません。」

輿に横たわったアムフォルタスが登場します。

アムフォルタス
湖で水浴すれば気が晴れて、痛みも和らいでくれれば苦しい夜の暗さも明るくなるだろう。」

グルネマンツは、クンドリから受け取った薬バルサムが乗った器をアムフォルタス王に渡します。

アムフォルタス
「誰が手に入れたのだ?」

グルネマンツ
「そこにいる女です。クンドリよ、起きなさい!」

クンドリは拒み、地面に臥せています。
アムフォルタス王は、「クンドリ、あなたはいつも控え目だ。バルサムを水浴と一緒に試そう。」と言いクンドリの気持ちを受け取ります。

アムフォルタス王が去ると、小姓はクンドリを悪者扱いしてけなします。
グルネマンツはクンドリを庇い、クリングゾルのことを語ります。

・クリングゾルは邪悪な心を持ち、美女たちの誘惑を利用して、騎士たちを次々と堕落させていったこと
・クリングゾルが妖女(後に魔法をかけられたクンドリと判明する)にアムフォルタス王を誘惑させて、アムフォルタス王から聖槍を奪ったこと
・聖槍で腹を刺されたことで、傷口から血が流れ、その傷は未だに治癒することなくアムフォルタスを苦しめていること
・アムフォルタスを救えるのは、「聖なる愚者」だけと言い伝えられていること

これらを語ると、いきなり森の湖にいる白鳥が矢で刺され傷を負います。聖域の鳥獣を狩るのは、禁じられていることです。
「誰が射ったのだ。」とグルネマンツが声を発すると、同じ矢を持った若者(後にパルジファルの名が判明する)が登場します。自分の名前も生い立ちも知らない若者に、クンドリが口を開きます。

クンドリ
「父親のガムレットが戦死した後に、父なし子を母親が産みました。母親は、亡き父のように勇士になって早死にならないよう、武器から遠ざけて愚か者になるように育てたのです。母親も愚かな女です。」
「しかし盗賊も獣も力で退け、恐ろしい小僧だとみんなが怖がってますよ。」

クンドリは薬探しの旅の中で多くのことを知っているようでした。
それを聞いた若者は驚き、グルネマンツは“この若者が「聖なる愚者」ではないか”と思い、城に連れて行きます。

城では、アムフォルタスが父ティトゥレルから聖杯を継承する儀式を行おうとしています。しかし、聖槍による傷の痛みでアムフォルタスは儀式を執り行えません。
グルネマンツは若者が参加すれば何か変わるのではという期待を持っていましたが、しかし何も起こらず、若者を追い出します。

パルジファル あらすじ
✳︎ 第2幕 ✳︎

場所は、クリングゾルの魔法城に移ります。

クリングゾル
「クンドリよ、出てこい。」

クリングゾルは、呪いをかけたクンドリを呼び出しクンドリを味方につけようとします。一方、クンドリは「嫌です。」と言いクリングゾルの邪悪さを訴えます。

クンドリ
「あんたは純潔な気でいるの。」
「おぉ、惨め。哀れ。誰もかもみんな弱い。私の呪いにみんなが陥ってしまった。どうしたら救われるの。」

魔の城へ、堕落した騎士たちと戦い打ち負かしながら若者がやってきます。
クリングゾルは、魔の城に入った若者を誘惑の呪いでおとしめようと悪しき道への誘惑をします。
クンドリは抵抗しますが、苦しめられ言いなりになることしかできません。

場面が変わり、クリングゾルの魔法によって荒野が花園へと化します。クリングゾルの魔法に操られた娘たちは恋人となった堕落した騎士を探しています。

娘たち「私たちの恋人はどこ?」

そこへ現れた若者は、娘たちと会話します。娘たちは、若者の取り合いをしながら彼を誘惑しています。

若者
「お前たちは優しい花なのに押し寄せてくる。俺を遊び相手にしたいなら、押さないでくれ。」

娘たちは、誘惑されない若者に諦め悪く誘惑しながら「私の方が綺麗だわ。」と言葉で争っています。
呪いにかかったクンドリが登場すると、「パルジファル。お待ちよ。」と声をかけます。

若者
「パルジファル?母がそう呼んだことがある。」

娘たちは、クンドリの声を聞くと恐れながらパルファジルの前から引き下がります。

クンドリ
「ファルは“愚か”、パルジは“純粋”、つまりあなたは“純粋な愚か者“パルジファルよ。」
「私は、お前の名前を教えようと思ってここで待っていたのよ。」

クンドリは、パルジファルの父親が亡くなる寸前に“パルジファル”という名前を名付けたこと、パルジファルの母親が大切に育てたこと、パルジファルがいなくなってから、母親は深い悲しみによって死に陥ってしまったことを伝えます。
それを聞いたパルジファルは、悲しみながらも母親を忘れていた愚かさに気づきます。

クンドリ
「愛というものを知るのよ。あなたの母親が父親へ向けた情熱は愛、あなたの体ができたのも愛、愛を捧げるのよ。」

クンドリはそれを伝えると、クリングゾルからかけられた呪いによって誘惑を始めます。
パルジファルは、心の傷が槍で刺され血を流しているように感じ、それは傷ではなく、心が燃えているということに気づきます。

パルジファル
「救いの聖杯を眺めると神聖な血が灼熱してくる。」
「私の罪はどうしたら拭えるのだろうか。」

クンドリは、悲しむ妄想をやめて受け止めるようパルジファルに言います。そして、アムフォルタス王を救う方法を語ると、クンドリは「私の苦しみも感じてよ。」と伝えます。

クンドリは、パルジファルに口づけします。しかし、パルジファルは口づけによって知能を得てアムフォルタス王を思い浮かべ、クンドリを退けます。
クンドリはパルジファルに迫ります。そしてパルジファルはクンドリの呪われた過去、アムフォルタス王を陥れた妖女であったことを知ることになります。

誘惑を退けられるとクリングゾルが現れ、パルジファルへ「貴様を仕留めてやる。」と聖槍を投げつけました。しかし、聖槍はパルジファルの頭上に浮かんで止まってしまいます。
パルジファルは、クリングゾルが投げた聖槍を掴みます。そして、十字を切ると、魔法が解け、花園は荒野に戻ります。

パルジファル あらすじ
✳︎ 第3幕 ✳︎

場面は数年後のモンサルヴァート城の地域に移ります。グルネマンツは歳をとり隠者となりました。
グルネマンツは寝ているクンドリを起こします。クンドリの顔は、より一層青ざめていますが、容貌や行動から粗野さは消えています。
そこへ、1人の騎士が現れます。騎士が兜を脱ぐと、その正体はパルジファルでした。

パルジファル「あなたと再会できて幸せです。」

グルネマンツ「あなたも私を覚えていたのか?」

パルジファルは再会までの経過を語ります。グルネマンツは、「アムフォルタス王が、苦しみの果てに死を考えるようになってしまわれた。先王ティトゥレル王もこの世を去ってしまった。」と伝えます。
パルジファルは、「またも罪を犯してしまった。」とアムフォルタス王を救うための身でありながら、役目を果たせなかったことを激しく悔やんでしまいます。
パルジファルは気が遠くなり、倒れてしまいまいました。グルネマンツはパルジファルをなだめ起こさせます。クンドリもパルジファルをに尽くします。

パルジファル
「今日、アムフォルタス王のところへ連れて行ってくれないでしょうか?」

グルネマンツ
「もちろんです。聖杯城は、私たちを待っています。私も王の葬儀にいかずにはいられません。」

クンドリは、パルジファルの足を洗い頭に水をかけ礼拝の儀式をします。パルジファルもクンドリに礼拝の儀式をします。
クンドリが涙を零すと、パルジファルはクンドリを励まし、額にキスをします。聖金曜日の音楽が流れ3人は城へと歩き出します。

先代ティトゥレル王の遺体を運ぶ人々が登場します。

アムフォルタス
「そなたたちの手で死なせてほしい。死が罪深さを御赦しになると思うからだ。」

先代王ティトゥレル王の柩が開かれ一同が叫びます。アムフォルタス王は、父であるティトゥレル王の遺体に近づき、我が身の死を望んでいます。
一同は、「お務めを果たしてください。」といいますが、アムフォルタス王は「生きさせようとするのは何者だ。そなたたちは私に死を与えることしかできないのだぞ。」と死の意志から解放されません。

パルジファルが現れ、「傷を塞ぐのは、この槍だけ。」と言い、アムフォルタス王の傷口に槍を当てます。すると、アムフォルタス王を長い間苦しめていた傷口が治癒しました。
アムフォルタス王は苦しみから解放されます。よろめくアムフォルタス王をグルネマンツは支えています。
パルジファルは王に代わって役目を果たすことを決意します。つまり、新しい王になるということです。

パルジファルは聖杯を手にとり、聖杯の灼熱の輝きは頂点に達しました。白鳩が舞い降り、パルジファルの頭に停まると、クンドリの呪いは解け、クンドリは静かに息を引き取るのでした。

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