オペラ『パルジファル』が伝える誘惑に負けない心とは!

理解が深まる!『パルジファル』の見どころ

パルジファルの見どころを押さえることで、さらに物語が分かりやすくなります。あらすじだけでは気づかないことも、見どころを知って把握してみましょう!

1. 第2幕で展開されるパルジファルの変化

(1時間39分~)

第2幕になって初めて生い立ちが分かります。クンドリがパルジファルの名前や、両親の過去、母親が寂しさに暮れて亡くなってしまったこと……

これまでパルジファルの真っ白だった生い立ちが色づいた時、パルジファルは自分のことを初めて知り自分の存在を自覚していきます。

そして、アムフォルタス王を救うためのヒントが脳裏に次々と浮かびます。

この時、パルジファルは強く成長し、正義と己の強さでクリングゾルの槍に打ち勝ちます。

第1幕では言葉でしか語られなかった過去が、クリングゾルの場面、花園の娘たちが誘惑する場面、クンドリの呪いが現れる場面と一気に明かされていきます。

2. 誘惑に惑わされないパルジファルの己の強さ

花園の娘たちにも、クンドリにも誘惑されないパルジファルの強さは、観ている観客の心に“自分をもつ”ということを伝えているようにも感じられます。

「Amfortas! Die Wunde!」

クンドリの口づけによってアムフォルタス王の苦悩を思い出す場面。

クリングゾルにも打ち勝つパルジファル。つまり、クリングゾルの魔法を解き、アムフォルタス王を救うたった1人の人物だと伺えます。

第3章では、パルジファルが新たな王になることを決意します。徐々に表面化し最後には本当の強さを見せるパルジファルの変化に注目です!

3. 聖杯の大広間

(3時間32分〜)

アムフォルタス王を囲み、一同がアムフォルタス王が生き延びることを望んでいます。柩に入った先代王ティトゥレル王の遺体の前で苦悩を訴える場面が印象的です。

また、パルジファルがアムフォルタス王の傷を治癒し新しい王になる場面は最大の見どころです!(3時間44分ごろ)

リヒャルト・ワグナーとはどんな人物?

RichardWagner

出典:Wikimedia Commons

ワグナーは手掛けた歌劇のほとんどで台本も自ら執筆し、音楽に留まらず理論家、文筆家として名を残しています。オペラ作品では、オペラ発祥地イタリアの作品とは違う作品を生み出しました。アリアや重唱に番号がついているこれまでの風潮を廃止し、1つの場面を同じ曲調にし、切れ目ない物語が続いていきます。

ワグナーの略歴

[1813年 0歳]
5月22日ドイツ、ライブツィヒに生まれる。

[1836年 23歳]
指揮者として活動し、女優ミンナー・プラーナーと結婚する。

[1843年 29歳]
2月、前年のドレスデンでのオペラ『リエンツィ』の初演で成功をきっかけに、ドレスデン国立劇場の指揮者となる。オペラ『さまよえるオランダ人』初演。

[1845年 31歳]
オペラ『タンホイザー』初演。

[1850年 36歳]
オペラ『ローエングリン』初演。

[1865年 51歳]
オペラ『トリスタンとイゾルデ』初演。

[1868年 53歳]
オペラ『ニュルンベルクのマイスタージンガー』初演。

[1870年 57歳]
妻ミンナーの他界により、指揮者ハンス・フォン・ビューローの元妻コジマと正式結婚する。

[1876年 63歳]
ワグナーに心酔していたバイエルン国王ルードヴィヒ2世の援助を受ける。そして、ワグナーの作品専用のバイロイト祝祭劇場が完成する。オペラ『ニーベルングの指環』初演。

[1883年 69歳]
2月13日、旅行中にヴェネツィアで心臓発作により他界する。

きっとあなたも聞いたことがある。馴染みあるワグナーの名曲

ワグナーの曲と言われても思い浮かばない方も、名前を知らないだけで一度は聴いたことがあるでしょう。ぜひ、楽しみながら音楽を聴いてみてください!

1. 結婚行進曲

ワグナーの『結婚行進曲』だとは知らなくても、音楽を再生したら気づくはずです!「結婚といえばこの曲!」と言えるほどに有名な曲。

聞いているだけでも、幸せになれるような温かみがあり晴々しい音色で、柔らかい音楽の調べが優しく包み込みます。オペラ「ローエングリン」の中の一曲で、主人公ローエングリンはパルジファルの息子です。

2. ワルキューレの騎行

CMやバラエティー、ドラマでも使用される名曲です。
特に映画『地獄の黙示録』の攻撃ヘリによる強襲のシーンで、味方の士気高揚と敵への威圧のためにこの音楽が使われるシーンは印象的で、しばしばオマージュやパロディの題材にもなっています。

ワルキューレとは、「戦死者を選ぶもの」という意味を示します。戦場で生きる者と死ぬ者を定め、戦死した勇者を神の軍勢に連れていく女死神のことであり、日本語では、「戦乙女」、「戦女神」と呼ばれます。

羽飾りのついた兜と鎧で身を守り、槍、剣や盾を持って、羽の生えた空飛ぶ馬に乗る女性として表現されています。

3. ニュルンベルクのマイスタージンガー 前奏曲

ワグナー唯一の喜劇である『ニュルンベルクのマイスタージンガー』、その幕開けの曲です。壮大かつ華やかな音色で、こちらもCMなどで聞いたことがあるのではと思います。

聖槍・聖杯にまつわるポップカルチャー

聖槍や聖杯はキリスト教でも特に象徴的に扱われるアイテムで、しばしば現代の創作にも引用されています。

海外の著名な作品では、映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』があります。ナチスと争いながら、多くの罠が張り巡らされた遺跡から聖杯を探す物語で、偽物の聖杯にはミイラ化して死ぬ呪いが、本物には致命傷さえ癒す奇跡の力が秘められていました。

ロケ地の世界遺産ペトラ遺跡宝物殿。劇中、この中で聖杯を探す。

また、アーサー王伝説をパロディにした『モンティパイソン&ホーリーグレイル』など、アーサー王関連で聖杯が出てくるものもあります。

日本の作品だと、『エヴァンゲリオン』シリーズに聖槍=ロンギヌスの槍が重要な役割を持って登場していました。

右手の赤い槍がエヴァンゲリオンにおけるロンギヌスの槍

聖杯は『美少女戦士セーラームーン』や『Fate』シリーズなどにおいて、奇跡の力を持ったアイテムとして、争奪戦が行われるほどのキーアイテムになっています。

セーラームーンのレインボームーンカリス

Fateの聖杯。味方の強化アイテムになったり、悲劇の原因になったり、不条理ギャグの怪事件を起こしたりもする。

こうしたモチーフをポップカルチャー経由で知っているとオペラをより理解しやすくなったり、逆にオペラを知っているとポップカルチャーに込められた深い意味に気づけるかもしれません。

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

オペラ『パルジファル』は、最初にもお伝えしたように、ワーグナーの傑作であり、ワーグナー自身が、バイロイト祝祭劇場で上演するために作られました。宗教、哲学、民族などへの考えをもとに、音楽・台本が作られています。

オペラ『パルジファル』を、劇場でご覧になって、リヒャルト・ワーグナーワールドの音楽と物語に浸ってみませんか?裕福な気分で文化的な日をお過ごしください。

オペラって、素晴らしい!


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プレビュー:2022年7月13(水)~17(日)東京二期会『パルジファル』


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