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小説『椿姫』アレクサンドル・デュマ・フィス:〜オペラ『椿姫』の原作紹介〜オペラの原作#03

目次

著者:アレクサンドル・デュマ・フィス

デュマ・フィスの概略


デュマ・フィスは1824年7月にパリで私生児として生まれました。

大作家である父アレクサンドル・デュマ(著作は三銃士、モンテ・クリスト伯等)の影響を受けて、文学の道を志し、『椿姫』で一躍有名になります。著作のほとんどは戯曲で、その生涯の大部分を劇作家として活躍しました。

その作品は親子ともども現代まで受け継がれています。

『椿姫』マグリットのモデル、マリ・デュプレシ

マリ・デュプレシ 出典:Wikimedia Commons

マルグリットのモデルとなったマリ・デュプレシはとても貧しい少女でした。幼いときに奉公に出され、放浪も経験し、16歳でパリに着いてからはお針子仕事で生計を立てていました。

やがて公爵の息子と恋人となり、そこで知識と教養と上流社会の振舞いを身につけて、たちまちパリ社交界の花形となっていきます。

マリの家では毎晩芸術家を集めての夜会を行っており、そこにデュマ・フィスも来ていました。二人は恋仲になるのですが、その関係は一年しか続きませんでした。ですが、デュマ・フィスの心には忘れることのできない印象をもたらしました。

晩年はかの有名なピアニストのフランツ・リストと恋仲になりますが、結核が悪化していき、23歳になったばかりの2月に静かに息を引き取ります。

マリ・デュプレシは作中のマルグリットと同様、モンマルトル墓地に眠っています。

モンマルトル墓地、マリ・デュプレシの墓 出典:Wikimedia Commons

オペラと原作小説の違い

1.作品名

『椿姫|La Dame aux camélias』は小説タイトルであり、日本ではオペラも『椿姫』で知られていますが、オペラ作品の原題は『La Traviata(ラ・トラヴィアタ)』といいます。トラヴィアタは堕落した女という意味で、台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが手掛けました。
小説版よりも、ヒロインの悲劇性を強調したタイトルになっています。

オペラ『椿姫』初演時の公演案内 出典:Wikimedia Commons

2.登場人物名

オペラではマルグリットの名前がヴィオレッタに変更されています。ヴェルディの前妻が同名イタリア語読みのマルゲリータだったことに影響されているのかもしれません。

また、アルマンもオペラ版ではアルフレッド・ジェルモン。
原作のアルマン・デュヴァルのイニシャルはアレクサンドル・デュマと同じA・Dであり、作者自身が投影されていると考えられています。

3.結末

オペラでは亡くなる前にアルフレッド(アルマン)と再会することができます。ただし、それは病床で見た幻覚・夢とする解釈(演出)もあります。

関連作品

アベ・プレヴォ『マノン・レスコー』1731年

『マノン・レスコー』 出典:Wikimedia Commons


作中で語り部の「私」とアルマンを繋ぐのが、アヴェ・プレヴォ作『マノン・レスコー』です。

ファム・ファタール(悪女)小説最初期のものの一つと呼ばれる『マノン・レスコー』は、その美しい砂漠での死によって伝説となりました。『椿姫』の作中では、哀しく死んだマルグリットとの比較で、そのヒロインの散りかたを讃えています。

『マノン・レスコー』はジャコモ・プッチーニのオペラとしても有名ですね。


参考文献
デュマ・フィス(1950年)『椿姫』新庄嘉章訳 新潮文庫


オペラの原作


1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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