E・T・A・ホフマン『くるみ割り人形とねずみの王さま』 小説を彩るクラシック#9

『くるみ割り人形とねずみの王さま』あらすじ
固いくるみのメールヘン

王は宮廷付の時計師兼秘術師クリスティアン・エリアス・ドロセルマイアーに姫を元の姿に戻せ、と厳命を出します。彼は宮廷天文学者とタッグを組んで、姫を元通りにするため奔走します。

そして、姫を元通りにする方法を突き止めます。
それは、クラカトゥクくるみを姫に食べさせること。
ただ、このくるみはどんなくるみよりも固く、殻を割る役目は、生まれてからまだいちども髭を剃ったことがなく、ブーツを履いたことのない男でなくてはならないという条件がありました。

クラカトゥクくるみを探す旅は15年にも及びます。秘術師と天文学者は、何年も離れていた故郷のニュルンベルクに帰り、従弟の元を訊ねます。
長旅で起きた冒険の数々について話をすると、なんとクラカトゥクくるみは、故郷の従弟が持っていたのでした。

そして、くるみを割る役目の男も同時に見つかります。それは従弟の美しい息子であるドロセルマイアーです。
かくして、姫はクラカトゥクくるみの効力で呪いが解け、元通りの美しい姿に戻ることができました。

マウゼリンクス夫人は、若きドロセルマイアーに踏みつけられて息絶えますが、この時に、呪いが姫からドロセルマイアーに移ってしまいます。
恩人であるはずの青年に対して「こんなみっともないくるみ割りなんていやよ」と言って、姫はドロセルマイアーを城から追い出します。

マウゼリンクス夫人は、死ぬ間際に「いつか私の息子がおまえに復讐しにやってくるからね」という不吉な予言を残すのですが、どうやらこの息子というのが「ねずみの王」で、くるみ割り人形の姿に変えられたのが「青年ドロセルマイアー」なのだ、ということがわかります。

現実世界のドロセルマイアーおじさんは「これが固いくるみのメールヘンだよ」とベッドに横たわるマリーに言い、話を結びます。

こののち、回復したマリーの元へねずみの王さまが毎晩現れるようになり、「くるみ割り人形をずたずたに噛みちぎられたくなかったら…」と言って、お菓子や人形などを要求します。
くるみ割り人形の、「わたしに一振りの剣をお願いします」との言葉に、マリーは兄のフリッツが大切にしている兵隊人形の剣を手に入れます。

次のページ:『くるみ割り人形とねずみの王さま』のあらすじ「お菓子の国」

1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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