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プレビュー:新国立劇場オペラ『トスカ』7月6日(土)、10日(水)、14日(日)、19日(金)、21日(日)新国立劇場オペラパレス

抗うことのできない苛烈な運命
歌姫トスカの悲劇

あらすじとともに
当時のローマの政治情勢も知っておく

舞台は1800年のローマ。長くオーストリアに支配されていましたがナポレオン軍が入ってきて共和国となることができました。ところが反政府運動が起きて共和制が崩壊し、また恐怖政治の王制となっています。ナポレオン軍は王制のローマ軍との戦いを続け、戦況は刻々と変化しています。そして共和主義者は次々と逮捕され銃殺されています。脱獄した共和主義者アンジェロッティを匿っている画家のカヴァラドッシは、歌手のトスカと恋人同士。フランス革命下にパリで修行していたカヴァラドッシもまた共和主義者で、ローマを支配しているナポリ王国の警視総監スカルピアが彼を追っていました。カヴァラドッシはスカルピアに逮捕されてしまいます。トスカを手に入れようと企むスカルピアは、トスカに、カヴァラドッシの命を助ける代償として自分のものになるよう迫ります。トスカのとった行動は、結末は……。

作品のおもしろさは
スカルピアがどれだけ悪者かにかかっている

この作品は登場人物が少なく、ストーリー展開もテンポよく進むので初心者の方に特におすすめです。

主人公のトスカはプッチーニ好みの献身的で清らかな乙女だけれど、気性の激しさを一瞬見せます。恋人のカヴァラドッシは純粋で若い。そしてもう一人、警視総監のスカルピア、この3人が主要人物となります。スカルピアは権力者ですが大変な悪人、スカルピアの悪人の度合いが高ければ高いほどこの作品はおもしろくなります。権力を振りかざし、サディスティックで好色。パワハラセクハラの限りをつくして(下卑やなりかたではなくあくまで権力者ぽく)トスカを追い詰めます。若い恋人同士などとても太刀打ちできないスカルピアのいやらしさ、悪人ぶり、これが見どころで、それゆえにトスカのとった行動も理解でき、すっきりするのです(ただし本当の悲劇は最後の最後にくる)。

追い詰められたギリギリの状況で歌われる
あまりにも有名な美しいアリア

一度は耳にしたことがあるであろう有名なアリアが2つあります。一つは、トスカがスカルピアの要求をのむことを決めたときにトスカ歌う「愛に生き、歌に生き」、そして銃殺の直前にカヴァラドッシがトスカとの美しい日々を思って歌う「星は光りぬ」です。情勢に翻弄される若い恋人同士の悲しみが美しい旋律ゆえに胸に迫ります。単独で歌われることが多い名アリアですが、ぜひ『トスカ』の中でのアリアとしてお聴きください。

また、この作品は合唱の美しさも堪能できます。特に第1幕の最後、教会で歌われる「テ・デウム」、この宗教曲が歌われる中、スカルピアはアンジェロッティとカラヴァドッシに刑を宣言し、さらにトスカへの情欲を露わにします。この対比がすばらしく、若い二人はスカルピアには到底勝てないだろう、と思い知らされてしまうのです。

マエストロ、マウリツィオ・ベニーニが再び指揮!

左から指揮:マウリツィオ・ベニーニ、トスカ:ジョイス・エル=コーリー
カヴァラドッシ:テオドール・イリンカイ、スカルピア:ニカラズ・ラグヴィラーヴァ

 
 2023年『リゴレット』公演で新国立劇場で15年ぶりに指揮したマウリツィオ・ベニーニ、彼が再びオーケストラピットに入ります。これはイタリア・オペラのファンにとっては非常に喜ばしいことです。

 トスカには新国立劇場に初登場となるジョイス・エル=コーリーが登場します。昨年の「東京・春・音楽祭」での『仮面舞踏会』が記憶に新しいですね。

カヴァラドッシは、2019年新国立劇場・東京文化会館でのオペラ夏の祭典『トゥーランドット』のカラフを歌ったテオドール・イリンカイが務めます。そしてスカルピアは、ジョージア出身のバリトン、ニカラズ・ラグヴィラーヴァ。新国立劇場初登場です。楽しみですね。

新国立劇場「トスカ」より 撮影:三枝近志

ダイジェスト映像2012年より

新国立劇場オペラ『トスカ』
会場: 新国立劇場オペラパレス

公演
7月6日(土) 14:00
10日(水) 14:00
14日(日) 14:00 託児サービスあり
21日(日) 14:00
19日(金) 19:00

上演時間:約2時間55分(休憩時間含む)

チケット料金:29,700円 ~1,650円

詳しくは:新国立劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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