見どころ満載のファンタジック・オペラ、オッフェンバックの『ホフマン物語』~あらすじや曲を紹介~
オペラ『ホフマン物語』の見どころ~有名曲!「オランピアのアリア」や「ホフマンの舟歌」~
イタリア・オペラの作曲家ロッシーニから、「シャンゼリゼ通りのモーツァルト」と呼ばれたオッフェンバック!彼は美しく印象的なメロディを生み出す天才でした。
オッフェンバックが全精力を注ぎ込んだオペラ『ホフマン物語』には、作曲家の命のしずくのような魅力的な楽曲が散りばめられています。
ここでは、特に人気のある有名曲を中心にご紹介します!
1. ホフマンのアリア
「クラインザックの歌」|Va pour Kleinzach!
マイケル・スパイアーズ、リセウ歌劇場、ステファヌ・ドゥネーヴ指揮、2013年
(2分あたりから曲調が変わります)
第1幕第4場面、酒場で主人公ホフマンが歌う独唱「クラインザックの歌」。
昔アイゼナッハの宮廷にいたという、大きなこぶのある道化をからかうざれ歌で始まります。学生たちの「クリック!クラック!」の合いの手に乗って、おどけた調子の2拍子の短調で、道化の身なりや動きを歌い進めます。
ところが、道化の「顔(sa figure)」を歌う段になると音楽が変化。旋律は上昇して転調していき、女性の面影を愛おしそうに歌い出します。彼女の「声」に差し掛かると、陶酔感にあふれた大きな高揚に包まれます。しかし、学生の一人から「誰のことだ?」と言われると我に返り、また元のメロディに戻って道化の話をするのです。
ちょっとしたことで夢と現実の区別がつかなくなる、ホフマンの夢想的な性格と危うさを表しています。 瞬時に入れ替わる音楽と心理の劇的な変化が、この歌の醍醐味!テノール歌手の演技力と歌唱力を存分に楽しむことができる曲です!
2. オランピアのアリア
「生垣に小鳥たちが」|Les oiseaux dans la charmille
森 麻季 「オランピアのアリア」
オペラ『ホフマン物語』で最も有名なアリアといえば、この「オランピアのアリア」でしょう!第2幕第8場面、自動人形のオランピアが社交界デビューに際して歌う歌です。
シンプルな繰り返し形式の旋律を、人間離れした高音とテクニックで歌うオランピア。ところが、途中まで歌うと、突如がくんと力が抜けたように止まってしまいます。あわてて助手がねじをまくと、オランピアはまた元気に歌い出す、彼女が自動人形であることが明かされる滑稽な場面です。
メカニックに歌い踊る自動人形を演じつつ、高音での装飾やトリル、スタッカートなど高度なコロラトゥーラ(装飾をつけて歌う技法)のテクニックが要求される超難曲!
オランピアのアリアは、モーツァルトのオペラ『魔笛』の「夜の女王のアリア」と並ぶ、コロラトゥーラ・ソプラノ(装飾的歌唱を得意とするソプラノ)の定番レパートリーとなっています。高音が得意なソプラノ歌手がコンサートなどで、そのテクニックを披露して歌うことが多い人気曲です。
3. アントニアのアリア
「逃げてしまった、雉鳥は」|Elle a fui, la tourterelle
イレアナ・コトルバシュ、コヴェントガーデン王立劇場、ジョルジュ・プレートル指揮、1981年
第3幕冒頭、死病の影を持つ歌姫アントニアが、クラブサン(フランス語でチェンバロ)の前でホフマンを想って歌うこの曲。
アントニアのアリアは、「オランピアのアリア」や「ホフマンの舟歌」といった超有名曲の影に隠れてしまっていますが、抒情的な歌唱を得意とするソプラノの名曲です。ホフマンへの想いと歌への想いが渾然一体となりながら、それは自分の生命を縮める欲望でもあるという動揺を、短いロマンスの中で絶妙に表しています。
「芸術をとるか、人生をとるか」
歌えば死んでしまうアントニア。その重すぎる選択を前に葛藤する苦しみは、常にホフマン自身にも突きつけられています。それはあらゆる芸術家が負う命題。作曲家のオッフェンバック自身も、まさに命を削りながらオペラ『ホフマン物語』を書き続けたのでした。
3つの恋物語のうち、アントニアの物語は最も悲劇的です。しかし悲劇に甘んじず、洒脱で怪奇な雰囲気をたたえたまま、この幻想劇は進みます。
4. ニクラウスとジュリエッタの二重唱
「ホフマンの舟歌(バルカロール)」|Belle nuit, ô nuit d’amour(Barcarolle)
ステファニー・ドゥストラック(ニクラウス)、ケイト・アルドリッチ(ジュリエッタ)、パリ・オペラ座、フィリップ・ジョルダン指揮、2016年
世界で最も美しい旋律と言われる「ホフマンの舟歌」!第4幕冒頭で歌われる、ニクラウスとジュリエッタの二重唱です。
8分の6拍子の波にたゆたうようなゆったりしたリズム。ゴンドラが行き交う水の都ヴェネチアの美しくも享楽的な夜が、眼前に現れるようです。男装のメゾソプラノと高級娼婦のソプラノという女声の組み合わせも、退廃的で官能的。
オペラ・コミック座でのオペラ『ホフマン物語』初演時、ジュリエッタの幕は削除されてしまいました。しかし、この「ホフマンの舟歌」をカットするのは忍びなく、アントニアの幕に無理やり移して上演したとか。
「ホフマンの舟歌」は、オッフェンバックのオペレッタ『天国と地獄/地獄のオルフェ』(4ページ目)の中でも紹介しています。イタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』での挿入場面や、国際的歌姫2人の共演の動画も掲載していますので、併せてご覧ください!
オペラ『ホフマン物語』公演予定
新国立劇場でオペラ『ホフマン物語』が公演されます!
期間は3月15日(水)〜21日(火・祝)の4日間。
日本語字幕でじっくりオペラ『ホフマン物語』を鑑賞できます。
新国立劇場オペラ『ホフマン物語』
2023年3月15日(水)〜21日(火・祝)
会場:新国立劇場 オペラパレス
開演:
15日(水) 18:30
17日(金) 14:00
19日(日) 14:00
21日(火・祝) 14:00
★ チケット料金
24,200円〜4,400円
詳しくは:新国立劇場
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