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20世紀の奇跡のバレエ団「バレエ・リュス」とは?バレエ・リュスの歴史や創設者ディアギレフについて解説

目次

7. バレエ・リュスとモダンバレエ

『春の祭典』初演時の写真。衣装や舞台美術はニコライ・レーリヒによる
出典:Wikimedia Commons

バレエ・リュスは、モダンバレエの基礎を築いたと言われています。

バレエ・リュス最初の振付家 ミハイル・フォーキンは、これまでのクラシックバレエの技法を改革しようと、ダンサーに民族衣装を着させたり、裸足で踊らせたりするなど、新たな表現を模索しました。

このようなフォーキンの改革は、モダンダンスの祖イサドラ(イザドラ)・ダンカンの影響を受けていると言われています。

また、伝説のダンサー ニジンスキーの振付家デビュー作『牧神の午後』では常に客席に対して横を向くポーズが取り入れられ、大きな反響を呼びました。

『牧神の午後』で牧神を演じるニジンスキー
出典:Wikimedia Commons

『牧神の午後』の、常に観客に対して横向きの振付は古代エジプトの絵画・壁画、もしくは古代ギリシャの壺に描かれた絵がモチーフだと言われる。


ほかにも、スキャンダラスな初演を迎えた『春の祭典』では、内股、首を曲げる動き、床を踏みならす動きなど、クラシックバレエを破壊するような革新的な動きを取り入れ、新たなバレエの表現を生み出しました。

8. バレエ・リュスの後継団体

1929年のディアギレフの死後、バレエ・リュス復活の計画は同年に始まった世界恐慌の影響によりほとんどが頓挫しましたが、バレエ・リュス再結成の声に応え、1930年にはガラ形式の「バレエ・リュス・ア・パリ」がパリとロンドンで行われました。

そして1931年、フランスのバレエ興行師 ルネ・ブルムとロシア歌劇団の経営者 バジル大佐により「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」が結成されます。

初代芸術監督には、バレエ・リュス最後の振付家 バランシンが選出され、看板娘として10代のバレリーナ3人からなる「ベイビー・バレリーナ」を打ち出しました。

なお、芸術監督はバランシンからマシーンにまもなく変わり、バランシンは渡米してバレエ学校を作ることになります。ニジンスキーの実妹ニジンスカもミストレス(ダンサーの指導者)としてバレエ・リュス・ド・モンテカルロに関わりました。

ブルムとバジル大佐の対立により、1936年にバレエ・リュス・ド・モンテカルロは分裂します。バジル大佐率いる「バレエ・リュス・ド・コロネル・ド・バジル」は1952年に解散しました。

ブルム率いる「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」は1960年代に一時活動を停止していたものの、1985年にバレエ・ド・モンテカルロとして再設立されています。

直接的な後継団体ではありませんが、バランシンが渡米後に設立したニューヨーク・シティ・バレエ団や、英国ロイヤルバレエ団の起源となる団体「ヴィック・ウェルズ・バレエ」などもバレエ・リュスがまいた種が世界各地で芽吹いた結果といえます。

9. まとめ

20世紀の大興行師ディアギレフと、彼が率いた奇跡のバレエ団「バレエ・リュス」について紹介しました。

ディアギレフやバレエ・リュスが20世紀初頭の人々に与えた大きなインパクト、そこに関わる豪華な人々、後世に残した影響を見ると、いかにバレエ・リュスの20年間がすごかったかお分かりいただけると思います。

今日、私たちが豊かなバレエ文化を楽しめるのも、ディアギレフ、バレエ・リュスの活躍のおかげです。

10. バレエ・リュス関連作品

バレエ・リュスの影響の大きさ、関わった人物の劇的な人生模様は、漫画や映画の題材にもなっています。また、バレエ・リュスが制作した衣装などの美術も、過去幾度も展示を行われています。
ここではバレエ・リュスをより深く知ることができる漫画・映画・展示を紹介します。

漫画


山岸 凉子の漫画『牧神の午後』は、天才ダンサー ニジンスキーの半生を描いた歴史短編漫画です。
バレエ・リュスの第1回公演の様子から始まります。

ディアギレフやフォーキンらとの関係性も分かりやすく、誰もが読みやすい作品となっています。


桜沢エリカの漫画『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』も同じくニジンスキーとディアギレフを題材にした漫画です。専門家の監修で時代考証もよく練られています。

映画『バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び』


映画『バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び』は、2000年にアメリカ・ルイジアナ州で行われたバレエ・リュスの同窓会の様子を映したドキュメンタリー映画です。

多くのバレエ・リュス・ド・モンテカルロのダンサーが集まり、3日間にわたってワークショップ、公演、展覧会などが行われました。

公演 NBAバレエ団『バレエ・リュス・ガラ』

2023年3月、新国立劇場にてNBAバレエ団による『バレエ・リュス・ガラ』の公演があります。『レ・シルフィード』『ダッタン人の踊り』『アポロ』の3作品を見ることができます。

https://twitter.com/NBA_Ballet/status/1589605711864303618?s=20&t=uXwUgBeVlLDBKwugH-qrZw

『バレエ・リュス・ガラ』
2023年3月4日(土)、5日(日)
会場:新国立劇場 中劇場

開演:4日(土) 13:00/17:30
   5日(日) 14:00

★ チケット料金
S席 12,000円|A席 10,000円|B席 7,000円
※学生料金あり(NBAバレエ団のみで販売)
※3歳未満入場不可

詳しくは:NBAバレエ団

展示 『パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂』

https://twitter.com/artizonmuseumJP/status/1582291668988223488?s=20&t=hfJEps4LHLdw_EgIB9RcQQ

2022年11月から2023年2月にかけて、『パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂』が開催されています。

17世紀の誕生から現在までの歴史が4章に分けて紹介されており、20世紀以降の歴史としてバレエ・リュスに関する展示も行われています。



『パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂』
2022年11月5日(土)〜2023年2月5日(日)
会場:アーティゾン美術館
6・5階展示室

開館時間:10:00〜18:00(金曜は20:00まで)
     ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(1月9日は開館)
    12月28日〜1月3日、1月10日

入館料:ウェブ予約チケット 1,800円
    当日チケット(窓口販売) 2,000円
    学生無料(※要ウェブ予約)

詳しくは:『パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂』公式サイト


参考文献

『ダンスマガジン7月号』新書館 (1998年)
芳賀直子(2009年)『バレエ・リュス その魅力のすべて』国書刊行会
芳賀直子(2014年)『ビジュアル版 バレエヒストリー』世界文化社
『名作バレエ70鑑賞入門』文・監修:渡辺真弓 写真:瀬戸秀美 世界文化社(2020年)


バレエ


バレエ歴21年・とあるバレエ教室の現役生徒のまいです! 大好きなバレエの魅力や作品についてご紹介していきます♩

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