古代インドが舞台のバレエ『ラ・バヤデール』のあらすじや演出の違いを分かりやすく解説!
コンクールなどでもよく踊られる人気演目『ラ・バヤデール』。
バレエの古典作品では珍しく「古代インド」が舞台になっており、エキゾチックな雰囲気も魅力です。
今回は『ラ・バヤデール』のあらすじや見どころなどを深掘り!演出による違いも解説します。
1. 舞台は古代インド!
バレエ『ラ・バヤデール』のあらすじ
『ラ・バヤデール』の舞台は古代インドです。
寺院の舞姫ニキヤと戦士ソロルはひそかに愛し合っていました。
しかし、ニキヤに片思いをする高僧や、ソロルを自分の娘と結婚させようとする領主により、ニキヤとソロルは引き裂かれてしまいます…。
登場人物やそれぞれの幕で起こるストーリーについて詳しく見ていきましょう。
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バレエ『ラ・バヤデール』の登場人物
バレエ『ラ・バヤデール』の登場人物
『ラ・バヤデール』の登場人物を紹介します。
寺院の美しい舞姫。戦士ソロルと愛し合っている。
戦士。ニキヤへの愛を誓うが、領主ラジャに娘のガムザッティと結婚するように命じられる。
寺院の権力者。ニキヤに好意を抱き、自分のものになるように迫る。
領主。ソロルに娘のガムザッティと結婚するように命じる。
領主ラジャの娘。ソロルを気に入り、ニキヤをソロルと別れさせようとする。
物語の主人公はニキヤとソロルですが、ガムザッティも『ラ・バヤデール』において非常に重要な役です。プリンシパル(最高位の階級にいるダンサーのこと)が踊ることも多々あります。
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バレエ『ラ・バヤデール』のストーリー
バレエ『ラ・バヤデール』のストーリー
現在は全3幕構成の演出も多いのですが、1877年に上演された『ラ・バヤデール』の初演は全4幕構成でした。
本記事では、初演の全4幕構成に基づいて、1〜4幕におけるストーリーを詳しく紹介します。
【1幕】
寺院〜王宮
舞台はインドのとある寺院の前から始まります。
戦士ソロルが寺院にやってきました。寺院の舞姫ニキヤに会いに来たのです。
ソロルが一旦立ち去ると、高僧や舞姫たちが登場し、聖なる火を取り囲んだ儀式が始まります。そこへニキヤも現れました。
ニキヤのあまりの美しさに驚いた高僧は自分のものになるように迫りますが、身分の差を理由にニキヤから拒まれてしまいます。
儀式のあと、ニキヤとソロルは2人きりになり、愛を確かめ合うように踊ります。ソロルは聖なる火にニキヤへの愛を誓いました。
その際、ニキヤとソロルの密会を盗み見ていた高僧は、激しい嫉妬心に駆られ、復讐しようと考えます。
場面が変わり、領主の王宮。領主ラジャは、娘のガムザッティにソロルの肖像画を見せ「結婚相手としてどうか?」と尋ねます。ソロルを気に入ったガムザッティはソロルとの結婚を了承します。
領主ラジャはソロルを呼び出し、ガムザッティと結婚するように命じます。ニキヤの存在が頭をよぎり戸惑うソロルですが、領主ラジャの命令には背くことができません。また、ガムザッティの美しさや身分の高さにも心が揺れてしまい、ガムザッティとの結婚を承諾してしまうのでした。
結婚が決まったお祝いとして、ニキヤは舞姫として踊りを奉納するように命じられます。
ニキヤの舞が終わった後、高僧が王宮を訪れ、領主ラジャと二人きりで話したいと申し出ます。領主ラジャと二人きりになった高僧は、ソロルとニキヤ(領主には先ほどの舞姫と説明)が恋仲であることを告げ口するのです。
高僧の思いとは裏腹に、領主ラジャの怒りはニキヤに向きました。ニキヤを殺すと決意したのです。
そして、高僧と領主ラジャの話を領主の娘ガムザッティが盗み聞きしていました。ガムザッティはニキヤとソロルを別れさせようと、ニキヤを自室に呼び出します。
ガムザッティはニキヤに、自分とソロルが婚約したことを告げます。宝石を渡してニキヤに別れを決意させようとしますが、ニキヤは頑として別れようとしません。ついに激高したニキヤは部屋にあったナイフをガムザッティに突きつけます。ガムザッティの侍女に止められ大事には至らなかったものの、ガムザッティもまた領主同様、ニキヤを殺すことを決意するのでした。
【2幕】
ガムザッティとソロルの婚約式
王宮でガムザッティとソロルの婚約式が行われています。
黄金の神像や太鼓の踊りなど、華やかな踊りで2人の婚約を祝福しています。ガムザッティとソロルも踊りを披露します。
ニキヤも悲しみの表情を浮かべながら、お祝いの踊りを披露します。そこへガムザッティの侍女が「ソロル様からのプレゼントです」と花かごをニキヤに渡しました。
悲しい表情から一転、ソロルから贈られた花かごを持ってニキヤは嬉しそうに踊ります。ところが、花の香りを嗅ごうとニキヤが花かごに顔を近づけた瞬間…毒蛇が飛び出してきてニキヤに噛みつきます。実はこの花かごはガムザッティが用意させたものでした。
高僧はニキヤに駆け寄り「自分のものになるなら解毒剤を与えよう」と言うのですが、ソロルの裏切りに絶望したニキヤは高僧の提案を拒み、命を落とすのでした。
【3幕】
影の王国
ソロルはニキヤを裏切り、死に追いやった罪悪感から逃れようとアヘンを吸い、幻覚を見ます。
幻覚の中では、美しいバヤデール(舞姫)たちが踊っています。その中にニキヤもいました。ソロルはニキヤに許しを乞い、かつてのようにともに踊ります。
【4幕】
ガムザッティとソロルの結婚式〜ラストシーン
やがて幻覚から目が覚めたソロルは、ガムザッティとの結婚式を迎えます。
神殿の前で執り行われた結婚式では、ガムザッティとソロルを祝福する踊りが披露されます。しかし、ソロルにはニキヤの幻覚が見えており、上の空。
高僧が取り仕切ろうとした途端、雷鳴が鳴り響き、神殿が崩れ落ちます。みんな神殿の下敷きになってしまいました。
そんな中、ソロルの魂はニキヤに導かれ、二人は永遠に結ばれるのでした。
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演出による構成の違い
演出による構成の違い
『ラ・バヤデール』は演出によって構成が異なります。
主な違いは「幕数」と「結末の違い」です。詳しく見ていきましょう。
1.3-1 幕数の違い
1877年の初演時には全4幕の構成でしたが、1919年以降、第4幕の神殿崩しの場面が省略され、3幕構成となりました。現在、ほとんどの演出において3幕構成が一般的です。
第4幕が省略されたのは、ロシア革命によって舞台機構が失われたことや、裏方の人手が足りなくなったことが原因と言われています。
その後、2002年にセルゲイ・ヴィハレフが1900年のプティパ版を改訂上演し、第4幕を復活させました。
1.3-2 結末の違い
『ラ・バヤデール』には、大きく分けて、影の王国で終了するバージョンと神殿崩し(ガムザッティとソロルの結婚式)で終了するバージョンの2つがあります。
初演時には神殿崩しの場面まで描かれていたのですが、先述のとおり、舞台機構や人員の不足により、1919年以降「神殿崩しの場面」が省略されてしまったのです。
その後、1980年に上演されたナタリヤ・マカロワ版では、第3幕のラストに「神殿崩しの場面」を加える形で神殿崩しの場面が再び観客の目に触れるようになりました。
一方、パリ・オペラ座バレエ団がレパートリーとしている「ヌレエフ版」では、影の王国で物語が終了するなど、各演出によって結末が異なっています。
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