スチュアート・ダイベック『冬のショパン』× ショパン『ワルツ』と『夜想曲』 小説を彩るクラシック#4
スチュアート・ダイベック『冬のショパン』
スチュアート・ダイベックを語る上での大きなキーワードといえば「都市」と「音楽」といえるでしょう。
今回取り上げる作品は、1942年にアメリカのシカゴに生まれ、シカゴの下町で育った小説家スチュアート・ダイベックの『シカゴ育ち』という短編集からです。
『シカゴ育ち』
収録作は1981年から90年にかけて発表されたもので、“荒廃地域” “熱い氷” “ペット・ミルク”はすぐれた短編小説に贈られるО・ヘンリー賞を受賞しています。
この短編集で描かれるのは、地方都市「シカゴ」のナマの風景。都市に住む人々の孤独や友情、奇妙な体験や、ちょっとした奇跡。そこで鳴っているのは50年代のロックンロールや、ジャズ、クラシック……。
東欧の移民たちの暮らしや風俗が描かれ、ラジオやベースボールなどのアメリカンカルチャーも登場するという、旧世界と新世界の融合───シカゴそのものを主人公としているような作品です。
この小説を訳し、日本に紹介したのは、アメリカ文学研究の第一人者で文芸誌「MONKEY」を手掛ける大人気翻訳家、柴田元幸。
翻訳した作品は数多く、代表的な作家を挙げると、ポール・オースター、スティーブン・ミルハウザー、スティーヴ・エリクソンなど、書店のアメリカ文学コーナーに行けば、必ず目立つ場所に見つけられるはずです。
その柴田元幸が「これまで訳した中で最高の一冊」と語るのがこの『シカゴ育ち』です。
『冬のショパン』
『シカゴ育ち』には、14の短編が収録されており、短編と、それよりももっと短い超短編(ショートショート)が交互に配置されている凝った構造になっています。ユーモアがあり、悲哀があり、都市の賛歌としても読める傑作作品集です。
その中でも「音楽」が印象的に物語の中で鳴っているのが“冬のショパン”です。
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