• HOME
  • オペラの原作
  • E.T.A.ホフマン『クレスペル顧問官』:オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#05

E.T.A.ホフマン『クレスペル顧問官』:オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#05

『クレスペル顧問官』あらすじ
2.アントーニエの埋葬

ある日、「わたし」にチャンスがやってきます。ヴァイオリンの構造について熱心に話し合った結果、クレスペルは、「わたし」を家に招いてくれました。

壁に掛けてある三十あまりのヴァイオリンを「わたし」に見せ、クレスペルはそのうちで最も上等と思われる獅子の頭が彫ってあるヴァイオリンの解説をしてくれました。

「ときおりアントーニエにこのヴァイオリンを弾いてあげると喜ぶんだ」

この言葉に勇気を得た「わたし」は、「わたしのいるところでそれを披露してほしい」と頼みます。

答えはノーでした。とりつく島もなく、「わたし」は家から追い出されてしまいます。

その後も何度かクレスペルの家に足を運びますが、話題が音楽の話になりそうになると、クレスペルは煙に巻くようにひょいっと話題を変えてしまいます。

ある晩、クレスペルは機嫌良くヴァイオリン製作を行っていました。
二人は最近の歌手のレベルの低さについて軽口を叩いていました。
「わたし」はピアノの蓋を開けて、今風の曲をふざけながら歌ってみせました。

クレスペルは大笑いし、いまこそだと思った「わたし」は部屋にいるアントーニエに歌うように仕向けます。すると彼女の頬がぱっと燃えたちピアノに駆けてきました。

「おい!」

クレスペルはアントーニエを押しのけて、「わたし」を家から追い出してしまいました。

二年後、B市に職を得た「わたし」は、再びH市にやってきます。

男たちが讃美歌を歌っている風景を目にして、「わたし」に不安な気持ちがおそってきます。

馬車の馭者に「あれはなんだ?」と訊ねると、馭者は「教会墓地でだれかの埋葬が行われているんですよ」と答えました。


そこには喪章を垂らしているクレスペルがいました。

埋葬されたのはアントーニエでした。

クレスペルは「わたし」を部屋に招き、「アントーニエが死んだとき、以前に見せた上等なヴァイオリンは棺の中に入れた」と「わたし」に言いました。そして、クレスペルは部屋の真ん中に立ってヴァイオリンの弓を頭上に差し上げて真っ二つに折ってしまいました。

「二度とヴァイオリンはつくらない──ばんざい、さらばヴァイオリン!」

クレスペルは叫び、前後の脈絡もなくしゃべり散らし、力尽きて倒れてしまいました。

翌日、アントーニエの死は、クレスペルが原因だ。そこには犯罪があると考えた「わたし」は、クレスペルの家に乗り込み、詰め寄ります。

クレスペルは真相を語り始めました。

次のページ:『クレスペル顧問官』あらすじ 3.真相|まとめ

1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。