E.T.A.ホフマン『砂男』: バレエ『コッペリア』/オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#04
レオ・ドリーブ作曲/バレエ『コッペリア』
ジャック・オッフェンバック作曲/オペラ『ホフマン物語』の原作
E.T.A.ホフマン『砂男』
レオ・ドリーブの人気バレエ『コッペリア』は、サイコ・ホラーの元祖?
RIA Novosti archive, image #633488 / V. Malyshev / CC-BY-SA 3.0
人気バレエ『コッペリア』といえば、コミカルで楽しい喜劇とイメージされる方が多いと思います。
ですが、原作はというと、「元祖サイコ・ホラー」と呼ばれるほど、恐怖と狂気に満ちた作品となっています。
フランスの作曲家ジャック・オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』でも、第二幕で『砂男』を原作としていますが(なお『ホフマン物語』では、『砂男』、『クレスペル顧問官』、『大晦日の夜の冒険』三作品を原作としている)、やはり大きく翻案されています。
オペラ『ホフマン物語』の1881年2月1日パリ初演を描いた版画
出典:Wikimedia Commons
2023年2月23日(木・祝)~2月26日(日)には、ローラン・プティ版『コッペリア』を新国立劇場バレエ団が上演、3月15日(水)〜21日(火・祝)には新国立劇場オペラの『ホフマン物語』が上演予定です。
今回は人気作、バレエ『コッペリア』、オペラ『ホフマン物語』の原作となった『砂男』について紹介していきます。
『砂男』E.T.A.ホフマン
E.T.A.ホフマンと本人による『砂男』の挿絵
出典:Wikimedia Commons
『砂男』が書かれたのは、1815年11月16日夜半1時、翌年に発表される『夜景作品集』第一巻に収録されました。
『夜景作品集』とタイトルにある通り、この短編集は人間存在の「夜」サイドを描いたもので、「恐怖」や「悪」というテーマについて、ホフマンは取り憑かれたように執筆しました。
描く恐怖の生々しさに、ホフマンは妻の手を握りながら書いていたというほど、『砂男』という物語がもつ現実に侵食していく恐怖感は異彩を放っています。
『夜景作品集』は発表当初はあまり話題になりませんでしたが、後にその作風は、ボードレール、モーパッサン、ドストエフスキー、エドガー・アラン・ポーなど多数の文豪たちに影響を与えていきました。
精神分析学の始祖であるジークムント・フロイトは『砂男』が眼球、眼鏡、望遠鏡を核として進むことから、主人公の幼児期のトラウマ(去勢不安、エディプス・コンプレックス)として解釈し、20世紀におけるホフマン文学の再評価に寄与しました。
小説『砂男』の登場人物
- ナターナエル
芸術家肌の大学生 - ロータル
ナターナエルの親友、クララの兄 - クララ
ナターナエルの恋人 - 老弁護士コッペリウス
醜悪で意地悪い男 - 晴雨計売りコッポラ
コッペリウスによく似た晴雨計(気象観測用の気圧計の旧称)売り - スパランツァーニ教授
ナターナエルが通う大学の物理学教授 - オリンピア
スパランツァーニ教授の娘 - ジークムント
ナターナエルの友人
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