誰もが楽しめるバレエ『ドン・キホーテ』のあらすじや見どころを解説
バレエといえば『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』のようなファンタジー作品を想像しがちです。しかし『ドン・キホーテ』は、ぐっと現実的な作品で、お芝居の要素もふんだんにあります。
スパニッシュな普段着をモチーフにした衣装や、居酒屋での踊りなど庶民的なシーンもあり、コミカルでとても分かりやすく見どころがたくさん。初めてバレエを観る方にも、とてもおすすめしたい作品です。
バレエ『ドン・キホーテ』は、セルバンテスの同名小説の1エピソードをもとにしています。
この小説は、日本では、九代目松本幸四郎さん(現二代目 松本白鸚)がロングラン公演を行った『ラ・マンチャの男』の原案となったもので、ブロードウェイではミュージカルとしてもロングランし、映画でも有名ですね。
本記事では、バレエ『ドン・キホーテ』ならではの見どころや楽しみ方をお伝えします。
1.バレエ『ドン・キホーテ』のあらすじ
バレエ『ドン・キホーテ』の舞台はスペインの港町バルセロナ。キトリとバジルの若いカップルが主人公です。
タイトルロールのドン・キホーテや、街のお金持ちのガマーシュ、闘牛士のエスパーダなど個性豊かな登場人物を巻き込みながら、キトリとバジルが結婚するまでのストーリーが明るく楽しく描かれています。
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バレエ『ドン・キホーテ』の登場人物
バレエ『ドン・キホーテ』の登場人物
バレエ『ドン・キホーテ』の主な登場人物をご紹介します。
タイトルは『ドン・キホーテ』ですが、バレエにおける主人公はキトリとバジルです。
ドン・キホーテは主役ではないものの、キトリとバジルの結婚を認めさせるなど重要な脇役といった役どころです。
- キトリ…ヒロイン、宿屋の娘
- バジル…床屋の青年、キトリの恋人
- ロレンツォ…宿屋の主人でキトリの父親、バジルとの結婚に反対している
- ガマーシュ・・・街の貴族、キトリに求婚している
- ドン・キホーテ…自称騎士の老人
- サンチョ・パンサ・・・ドン・キホーテの従者
- ドルシネア姫…ドン・キホーテの妄想の中で登場する理想の姫(通常、キトリ役のダンサーが演じる)
- エスパーダ…闘牛士のリーダー、街の人気者
- メルセデス…エスパーダの恋人
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バレエ『ドン・キホーテ』のあらすじ|プロローグ〜3幕まで詳しく解説
バレエ『ドン・キホーテ』のあらすじ|プロローグ〜3幕まで詳しく解説
バレエ『ドン・キホーテ』は全3幕の作品です。
演出によって多少異なる部分はありますが、基本的なストーリーはこれからご紹介するとおりです。
【プロローグ】
旅に出るドン・キホーテ
ドン・キホーテが中世の騎士道物語を読みふけっています。騎士道物語に夢中になるあまり、ドン・キホーテは自分こそが物語の中の勇敢な騎士だと思い込んでしまうのです。
従者のサンチョ・パンサを従えて、ドン・キホーテは理想の姫「ドルシネア姫」を探す旅に出ます。
【1幕】
バルセロナの街
舞台はバルセロナの広場。街の人気者キトリが恋人のバジル、友人や街の人らと楽しく踊っています。
一方、キトリを貴族であるガマーシュと結婚させたいキトリの父ロレンツォはバジルとの仲を認めません。なんとかガマーシュと結婚させようと、ガマーシュとキトリを踊らせますが、キトリはガマーシュをからかい全く相手にしないのでした。
そんな中、ドン・キホーテとサンチョ・パンサがバルセロナの街にやってきます。ドン・キホーテはキトリを一目見て、自分が追い求めていた理想の姫・ドルシネア姫と勘違い。キトリと一緒に踊ったり、キトリをエスコートしたりと騎士を演じます。
サンチョ・パンサが宿屋の食べ物をとったり、街の人と踊ったりと騒がしくなっていく中、騒ぎに乗じてキトリとバジルは駆け落ちを決行。
ドン・キホーテやサンチョ・パンサ、ガマーシュやロレンツォもキトリとバジルを追いかけて街を後にします。
【2幕】
キトリ・バジルの駆け落ち〜夢の場〜酒屋
駆け落ちしたキトリとバジルは、ジプシーの野営地にたどり着きます。最初はジプシーたちに怪しまれるキトリたちですが、事情を話すとジプシーたちはキトリとバジルを迎え入れ、ともに踊るのでした。
そこに、キトリを追いかけてきたドン・キホーテとサンチョ・パンサが到着します。大きな風車を怪物と勘違いしたドン・キホーテは、風車に突撃しますが、風車の羽根にひっかかり落下して気絶してしまいます。
気絶したドン・キホーテは夢を見ています。ドン・キホーテが美しいドルシネア姫やキューピッド、森の女王(ドリアードの女王)とともに踊っている夢でした。
舞台はドン・キホーテの夢からキトリとバジルが逃げ込んだ酒屋へと移ります。
酒屋では、闘牛士のリーダーで人気者のエスパーダやその恋人メルセデス、そしてキトリとバジルも楽しく踊っているのですが、ロレンツォとガマーシュに見つかってしまいます。
どうしてもキトリと結婚したいバジルは、狂言自殺に打って出ます。刃物(床屋で使われるカミソリを使うこともある)を胸に突き刺すふりをするのです。
狂言自殺であることに気付いたキトリは、瀕死のバジルを胸に抱き、なんとか結婚を許してほしいと懇願します。ロレンツォがしぶしぶ2人の結婚を認めると、スクッと立ち上がるバジル。キトリとバジルは、結婚できることになった喜びを踊りで表現します。
【3幕】
キトリとバジルの結婚式
ようやく結婚を許されたキトリとバジルの結婚式の場面。
目を覚ましたドン・キホーテや泣く泣くキトリとの結婚を諦めたガマーシュ、エスパーダやメルセデスなど街の人から踊りで祝福を受けます。
2人の結婚を見届けたドン・キホーテは、再びドルシネア姫を探す旅に出るのでした。
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第2幕の構成は演出によって異なる
第2幕の構成は演出によって異なる
実は、第2幕の構成は演出によって2パターンに分かれます。
1つは上記でご紹介した「ジプシーの野営地〜夢の場〜酒屋」というもの。
もう1つは「酒屋(狂言自殺)〜ジプシーの野営地〜夢の場」という構成です。日本では、新国立劇場バレエ団が上演する『ドン・キホーテ』で後者のパターンが見られます。
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