カエサルとクレオパトラの恋、ヘンデルのオペラ【エジプトのジュリオ・チェーザレ】〜あらすじや曲を紹介〜
オペラ『ジュリオ・チェーザレ』とカエサルにまつわる歴史
『クレオパトラをエジプト女王へ据えるカエサル』(ピエトロ・ダ・コルトーナ、1637年作)
カエサル(中央、赤いマント)がクレオパトラ7世の手を引いて玉座へ座るよう促している。右端はアルシノエ4世。 出典:Wikimedia Commons
オペラ『ジュリオ・チェーザレ』は、古代ローマ史における「ナイルの戦い」がテーマで、登場人物もほとんど実在の人物がモデルになっています。カエサルやナイルの戦いの歴史を知っていれば、オペラ『ジュリオ・チェーザレ』をもっと楽しめるはず!
とはいえ、オペラはあくまでフィクションで、史実と異なる部分がかなりあります。史実とオペラとの違いをみてみましょう。
クレオパトラとプトレマイオス
エジプト、デンデラ神殿にあるクレオパトラ7世とカエサリオンのレリーフ 出典:Wikimedia Commons
クレオパトラ7世(紀元前69年~紀元前30年)は、グナエウス・ポンペイウス・マグヌスがエジプトに逃れてくる前に、弟王プトレマイオス13世に共同統治者の座を追われ、アレクサンドリアから追放されていました。プトレマイオスはクレオパトラを退けた後、もう一人の姉アルシノエ4世を共同統治者に据えました。
史実のクレオパトラは、オペラのように共同統治者の地位のまま侍女に扮してカエサルを招いたのではなく、自ら危険なアレクサンドリアに忍び込みました。絨毯に包まれてカエサルの元に運ばせたという有名な話が残されています。
クレオパトラの大胆さと美しさに魅了されたカエサルは、プトレマイオスに対し、クレオパトラとの共同統治に戻るよう仲裁します。これをプトレマイオスと王の取り巻きは不服としてカエサルを包囲し、ナイルの戦いに発展していきます。
包囲されたカエサルは、大灯台のあるファロス島を拠点に援軍を待とうとするも失敗。カエサルは船から海中に飛び込み退却しました。援軍が到着すると形勢が逆転。プトレマイオスはナイル川を下って逃亡した際に川に落ちて溺死し、アルシノエも捕らえられました。
王座に返り咲いたクレオパトラは、弟のプトレマイオス14世を共同統治者に指名。カエサルは数カ月エジプトに留まり、クレオパトラとの間にはカエサリオンという息子が産まれました。
アキッラ
カエサルにポンペイウスの首を見せるプトレマイオス13世の側近(1820年作)出典:Wikimedia Commons
オペラ『ジュリオ・チェーザレ』でエジプト王の将軍であるアキッラは、プトレマイオス13世の軍司令官アキラスがモデルです。少年王プトレマイオスを大臣や側近と支え、誘導し、クレオパトラをエジプト国外に追放しました。
カエサルに恩を売ろうとした王の側近の計画に従い、アキラスはポンペイウスの殺害を実行。カエサルの仲裁に不服を抱いたプトレマイオスや側近に従い、カエサルを包囲して総攻撃を仕掛けます。この後アキラスは、陣営に加わったアルシノエ4世によって暗殺されます。
オペラのアキッラは、自身の奸計でポンペイウスを殺害しチェーザレ暗殺も計画したと言っていますが、史実のアキラスは軍人として命令に従ったものです。またオペラでは、コルネーリアを巡る王への恨みからクレオパトラ側に寝返って戦闘で命を落としたことになっていますが、史実では身内に暗殺されています。
コルネーリアとセスト
オペラ『ジュリオ・チェーザレ』では、コルネーリアとセストの復讐劇によってストーリーが進められますが、この2人はナイルの戦いの史実ではほとんど関係がありません。
コルネーリアはポンペイウスの5番目の妻で、ポンペイウスに従ってアレクサンドリアに入港しました。エジプト側から送り出された小舟でポンペイウスがエジプト人に刺し殺されるところを、ローマの船の甲板から目撃します。オペラでは、処刑された夫の首と対面することになっています。
そして、史実と最もかけ離れた存在となっているのがセストです。セストのモデル、セクストゥス・ポンペイウス(紀元前67年~紀元前35年)は、ポンペイウスの3番目の妻の次男です。父が殺害されるとイベリア半島のヒスパニア地方に逃れ、兄とともにカエサルへの抵抗を続けました。兄が討ち取られた後も、セクトゥスは地中海の海賊となり暗躍しています。チェーザレと協力して共にトロメーオと戦うオペラのセストとは、まるで正反対の人物です。
まとめ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
オペラ『エジプトのジュリオ・チェーザレ』は、ヘンデルの美しい音楽とともに、古代ローマや古代エジプトの歴史ロマンが味わえるオペラです!
ヘンデルの力作、オペラ『ジュリオ・チェーザレ』を、ぜひお楽しみください!
オペラって、素晴らしい!
次のページ:関連作品紹介
この記事へのコメントはありません。