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新国立劇場 新制作『リゴレット』ゲネプロ鑑賞レポート2023年5月16日(火)

『リゴレット』を初体験するには最高の舞台

新国立劇場が『リゴレット』を新制作で5月18日より上演している。エミリオ・サージの演出によるこのプロダクションは、現代的な感覚が貫かれ、いわゆる貴族の館の舞台セットや、カツラを被った人々は登場しない。全体的に暗い色調で、マントヴァ公爵の館とリゴレットの衣裳は赤、リゴレットとスパラフチーレの家は黒と色の対比が効果的に使われている。また登場人物のキャラクターが立ち、彼らの心情・行動に理解ができるので、自然に物語に没入できる。

素晴らしい舞台を実現できたのは、演出の現代性に加え、今回の新制作のために集結した指揮者、歌手によるところが大きい。

完成度の高い、新制作の『リゴレット』、まだ『リゴレット』を鑑賞したことがないのであれば、今回の公演を強くお勧めしたい。

こんなにも辛いストーリー、なのに絶大な人気を誇る傑作

左:ハスミック・トロシャン(ジルダ)、右:ロベルト・フロンターリ(リゴレット)

ロベルト・フロンターリ(リゴレット)


『リゴレット』は辛い話で決して明るい気分で見られるものではない。それでもヴェルディの代表作の一つであり、ずっと上演され続けている人気の秘密は、音楽の美しさゆえ。

身体障害者であるために、道化師となりマントヴァ公爵に仕えているリゴレット。公爵はどうしようもない女たらし、そんな公爵に媚を売らねばならないリゴレットは現状に満足しているはずもなく、さらにリゴレットは他の使用人たちからもバカにされている。

そんな彼の救いは娘のジルダ。リゴレットは彼女を年頃になっても教会に出かける以外は家に閉じ込め大事にしている。ジルダを家に閉じ込めているのは現代の感覚からすると虐待だし、ジルダに母親の名前すら教えていない。リゴレットはかなり屈折した複雑な人物であることがわかる。

ジルダは公爵に恋をするが弄ばれ、物語は一気に悲劇へと突き進む。

悲惨な物語なのにどうして音楽はこんなに美しいのだろう。ことに今回はオーケストラ演奏の美しさに耳を奪われた。

初心者おすすめポイント1
イタリア・オペラを知り尽くした指揮者のマウリツィオ・ベニーニ
オペラは歌唱を楽しむものだが今回はオーケストラ演奏がことさら素晴らしい

右:ハスミック・トロシャン(ジルダ)、左:イヴァン・アヨン・リヴァス(マントヴァ公爵)

右:ハスミック・トロシャン(ジルダ)、左:ロベルト・フロンターリ(リゴレット)


ヴェルディ中期の傑作『リゴレット』は歌唱の魅力が存分に楽しめる。有名なアリアはもちろんあるし、聴かせどころも多い。ではオーケストラは伴奏か、というと決してそんなことはない。それを強く意識させてくれるのが指揮者マウリツィオ・ベニーニだ。

新国立劇場には1998年『セビリアの理髪師』以来、25年ぶりの登場。マエストロは、匠の技をたっぷり披露してくれる。

まず前奏曲で心を掴まれる。モンテローネ伯爵の「呪いのテーマ」の不穏さ。以後このテーマが繰り返し出てくるたびに、決してハッピーエンドではないダークさを意識させられる。

ベニーニはメリハリが効いた演奏でだれることなく高揚感のある緊張を最後までキープしていた。音の強弱、緩急の差をはっきりさせるダイナミックな演奏は、辛いストーリーなのにワクワクする気分にさせられてしまう。ベニーニの指示に的確に応える東京フィルハーモニー交響楽団も素晴らしかった。そしてもちろんベニーニの演奏により、歌手たちも思う存分、自分の役を歌い、演じていた。

初心者おすすめポイント2
贅沢な歌手陣が繰り出すレベルの高い歌唱

ロベルト・フロンターリ(リゴレット)


なんといってもバリトンのロベルト・フロンターリのリゴレットは凄みがあって圧倒された。決して好人物ではないリゴレットにあたたかい親近感を抱いたのはフロンターリの品格のある声と人物造型ため。特に雄弁なレチタティーヴォ(話しているように歌うこと)の部分、第2幕のさらわれたのは情婦ではなく自分の娘であると語るところや、あるいはジルダとの二重唱に胸を打たれた。若手のソプラノ、ハスミック・トロシャンのジルダは清潔で感情豊か。「慕わしき人の名は」では、恋を知った初々しい乙女の様子がフルートとともに美しく歌われた。

イヴァン・アヨン・リヴァス(マントヴァ公爵)


新国立劇場に初めて登場したテノールのイヴァン・アヨン・リヴァスは年齢的にもマントヴァ公爵にぴったり。「女心の歌」では不幸とは無縁のキラキラなプレイボーイっぷりを披露した。そして殺し屋のスパラフチーレに妻屋秀和。彼はどんな役でも達者にこなすが、今回もやさぐれ具合が絶妙だった。

絶好調のオーケストラの演奏に乗り、歌手、そして合唱もそれぞれ見せ場をきっちりと聴かせてくれ、ステレオタイプな悲劇ではなく、それぞれの心情に寄り添った深くてとことん救いのない徹底的な悲劇を繰り広げたのだった。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場


これからの公演
2023年5月18日(木)〜6月3日(土)
新国立劇場オペラ
『リゴレット』
会場:新国立劇場 オペラパレス

開演
—————
5月
21日(土) 14:00
25日(木) 14:00
28日(日) 14:00
31日(水) 14:00

6月
3日(土) 14:00

チケット料金:27,500円〜1,650円

詳しくは:新国立劇場


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エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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