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カエサルとクレオパトラの恋、ヘンデルのオペラ【エジプトのジュリオ・チェーザレ】〜あらすじや曲を紹介〜

目次

オペラ『ジュリオ・チェーザレ』のあらすじ〜カエサルとクレオパトラの物語〜

オペラ『ジュリオ・チェーザレ』の原作は、初演より50年ほど前の1677年、ヴェネツィアで作曲された同名のオペラのために、ジャコモ・フランチェスコ・ブッサーニが書いた台本です。これをヘンデルのパートナーであった台本作家、ニコラ・フランチェスコ・ハイムが、ロンドンの聴衆が楽しめるように改変を加えました。

物語はフィクションですが、ほとんどの登場人物は実在した人物をモデルとし、史実に沿って展開しています。あらすじには分かりやすいように、イタリア語の役名に日本で一般的に用いられる名称も併記しました。

では、詳しいあらすじを知って、実際のオペラを鑑賞してみましょう。

ジュリオ・チェーザレ あらすじ
✳︎ 第1幕 ✳︎

【ナイル川支流のエジプトの平原】

政敵ポンペーオ(ポンペイウス)を追ってエジプトにやってきたローマの将軍、ジュリオ・チェーザレ(カエサル/シーザー)を歓迎し、エジプト人たちが合唱します。チェーザレは部下のクーリオ(クリオ)に、「来た、見た、勝った」と歌います。ポンペーオの妻コルネーリアとその息子セスト(セクストゥス)はチェーザレに和睦を申し出、チェーザレはそれを受け入れます。
エジプト王トロメーオ(プトレマイオス13世)に仕える将軍アキッラ(アキラス)が、歓迎の印として、チェーザレに貢ぎ物を捧げます。それは処刑されたポンペーオの首でした。チェーザレは王にあるまじき行為だと嫌悪をあらわにし、アキッラを追い返します。夫の死に、悲嘆にくれるコルネーリアとセスト。セストは復讐を誓います。

【クレオパトラの部屋】

弟トロメーオとのエジプトの共同統治に不満を抱くクレオパトラ。クレオパトラの従者ニレーノは、ポンペーオが処刑されたことを報告に来ます。弟の横暴にあきれたクレオパトラは、チェーザレに会いに行くことを決意します。そこにトロメーオが現れ、女だてらに野心を持つなとクレオパトラをけん制。しかしクレオパトラは、トロメーオを皮肉って部屋を出ていきます。
アキッラが現れ、ポンペーオの首をチェーザレに献上したが、喜ばず怒り出したとトロメーオに報告。チェーザレに恩を売ろうとしたのに、当てが外れたトロメーオ。アキッラは、チェーザレも殺してしまうよう提案。そして、チェーザレ殺害を実行する見返りに、コルネーリアを妻にしたいと要求しました。トロメーオはチェーザレを殺して、自身の王位を確実なものにしようとします。

【チェーザレの陣営】

チェーザレはポンペーオの遺灰を収めた壺を前に、人生のはかなさを歌います。そこに、クレオパトラが侍女リディアと偽って現れ、トロメーオの暴虐を訴えます。チェーザレは、彼女の美しさにすっかり魅了され、助力を約束します。チェーザレが去った後、クレオパトラは「美しい女は何でもできる」と歌います。
コルネーリアが入ってきて、ポンペーオの遺灰の前で悲しみを歌います。セストがコルネーリアに復讐を遂げることを誓います。
侍女と偽るクレオパトラは、コルネーリアとセストに、トロメーオ暗殺の援助を申し出ます。セストは復讐への希望を歌いあげます。こうしてクレオパトラは、チェーザレのほかにコルネーリアとセストも味方につけたのでした。

【トロメーオの王宮】

トロメーオと面会したチェーザレは、トロメーオの下心を見透かして「抜け目のない狩人は、身を隠して進む」と歌い出ていきます。
コルネーリアとセストがやってきてトロメーオを非難します。トロメーオはアキッラに、セストを牢に入れるように命令。さらに、コルネーリアを褒美にやるとアキッラに耳打ち。しかし心の中では、彼女を自分のものにしようとたくらんでいます。
アキッラはコルネーリアに、自分の妻になれば母子ともども自由の身にしてやると言います。コルネーリアは拒絶。アキッラはコルネーリアへの愛を歌います。別々に引き立てられていくコルネーリアとセスト。2人は「悲しむため、嘆くために生まれてきた」と二重唱を歌います。

ジュリオ・チェーザレ あらすじ
✳︎ 第2幕 ✳︎

絨毯の中からカエサルの前へ現れるクレオパトラ(ジャン=レオン・ジェローム画、1886年) 出典:Wikimedia Commons

【ヒマラヤスギの夜の森】

クレオパトラはニレーノと、チェーザレ訪問前の打合せ中。ニレーノは準備に余念がありません。
ニレーノの案内でチェーザレが待っていると、パルナッソス山が見え、楽団が美しい音楽を奏で始めます。美徳の女神の姿のクレオパトラが現れ、「優しい眼差しよ、愛の矢よ」とチェーザレを官能的に誘惑します。その美しさに夢中になるチェーザレ。鳥の歌声のようなヴァイオリンとともに、愛の炎を歌います。

【後宮の庭園】

コルネーリアは後宮の花の手入れをしています。言い寄るアキッラから逃げるコルネーリア。そこにトロメーオもやってきて、コルネーリアに愛人になるよう迫ります。しかしコルネーリアは従いません。トロメーオはコルネーリアの頑なさに怒り、出ていきます。
一人になったコルネーリアは自殺を試みますが、セストが入ってきて制します。ニレーノがコルネーリアに、トロメーオが呼んでいることを伝え、これは暗殺のチャンスだと教えます。コルネーリアはニレーノとともに出ていき、セストは激しい怒りを蛇に例えて歌います。

【悦楽の庭】

クレオパトラは、一時でいいから全ての美しさを与えたまえと美の女神に祈ります。チェーザレがやってきて彼女の寝姿に見惚れ、妻にしたいと口にしたのを聞いて飛び起きるクレオパトラ。
そこにクーリオがやってきて、チェーザレ殺害の陰謀を知らせに来ます。応戦に出ていくチェーザレを止めようと、クレオパトラは正体を明かします。クレオパトラはチェーザレを逃がし、チェーザレの身を案じて天に祈ります。

ジュリオ・チェーザレ あらすじ
✳︎ 第3幕 ✳︎

【後宮の一室】

トロメーオが待つ部屋に連れて来られたコルネーリア。トロメーオは剣を脇に置いて、コルネーリアを従わせようとします。セストが入ってきて襲い掛かりますが、アキッラに取り押さえられます。
アキッラは、チェーザレが海に飛び込み水死したと報告。そして、チェーザレが死んだ約束の褒美として、コルネーリアを求めました。しかし、トロメーオは他の褒美をやると言って出ていってしまいます。アキッラは王に裏切られたことを知り、クレオパトラ側に寝返ることを決めます。
チェーザレの死を知ったセストは絶望します。しかし、コルネーリアに励まされ、ローマ軍に加わって戦う決意をします。

【アレクサンドリア近郊】

クレオパトラ軍とトロメーオ軍の戦いは、トロメーオ軍の圧勝。捕らわれたクレオパトラは、「この胸に息のある限り、わが運命を嘆くでしょう」と歌います。

【アレクサンドリアの港】

九死に一生を得たチェーザレ。セストとニレーノが現れ、瀕死のアキッラを見つけます。アキッラはポンペーオの暗殺とチェーザレ襲撃を王に進言したのは自分だと明かし、自分が持っている将軍の印章を委ねて息絶えます。
チェーザレは印章を受け取り、クレオパトラとコルネーリアの救出に向かいます。セストも後に続きます。

【クレオパトラの居室】

クレオパトラは死を覚悟し、侍女たちに別れを告げています。そこにチェーザレが助けに現れます。再会を喜ぶチェーザレとクレオパトラ。

【トロメーオの王宮】

トロメーオがいよいよ、コルネーリアを自分のものにしようとしています。セストが入ってきて、ついにトロメーオを討ち取ります。コルネーリアは息子を称えて歌います。

【アレクサンドリアの港】

セストはチェーザレにトロメーオを討ち取ったことを報告。チェーザレは、エジプト王の王冠をクレオパトラに与えます。チェーザレとクレオパトラは愛の二重唱を歌い、一同で喜びの合唱を歌います。


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神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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