ボーマルシェ『フィガロの結婚』:オペラ『フィガロの結婚』の原作紹介〜オペラの原作#08
まとめ
『フィガロの結婚』は副題に〝狂おしき一日〟とあるように、登場人物たちの狂騒の一日を描いた作品となっています。ジャンルでいえば「喜劇」なのですが、そこには、堕落した貴族を打倒してやろうという民衆の反骨心が鮮やかに描かれています。
作中でフィガロが語る、「わたしゃ貧乏でした。誰からも軽蔑されました。少しばかりの知恵才覚をふるいましたが他人の憎しみを増すばかりでした」というメッセージは作者の本心のように響きます。
民衆が持てるものは〝少しばかりの知恵才覚〟だけ。
『フィガロの結婚』は、想像力こそが夢の武器であるということを教えてくれる素晴らしい文学作品です。
関連公演
イギリスの名門歌劇場ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたオペラやバレエを映像収録し、映画館のスクリーンで上映する〝英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 〟の1作として『フィガロの結婚』が公開されます。
イギリスを代表する演出家・マクヴィカー×円熟を極める指揮者・パッパーノで贈る
『フィガロの結婚』決定版!!
これぞモーツァルト!これぞ《フィガロの結婚》!なぜオペラ《フィガロの結婚》はこんなにも有名なのだろう?その秘密を解き明かすヒントはこの英国ロイヤル・オペラの舞台にある。作品の本質に容赦なく切り込むマクヴィカー演出は、ロココ絵画のように美しい舞台に、今の私たちと何ら変わることのない問題や悩み、そして愛情を持てあまして右往左往する人々を描き出す。原作戯曲の「ラ・フォル・ジュルネ(狂おしき一日)」という題名をそのまま音にしたような序曲が始まり、幕が開くと、そこはアルマヴィーヴァ伯爵家の朝。召使たちが忙しく立ち働く光景が私たちの目に飛び込んでくる。今日は、伯爵家に仕えるフィガロが、愛するスザンナと結婚する日なのだ。皆の様子は活気にあふれ楽しそうだが、そこには何やら不穏な空気も混じっていて…。
2006年に英国ロイヤル・オペラで初演されたこのプロダクションは、数ある《フィガロの結婚》の舞台の中でも「決定版!」と言われ大評判となったもの。何度も再演を重ねてきた。しかし今回は、台本を自然に表現できる若手イタリア人を中心とした理想的キャストが実現。中でも気品ある美声と抜群の歌唱力で観客の熱狂的な拍手を受ける伯爵夫人役のロンバルディは最大の聴きどころだ。また、アルカンタラが演じるアルマヴィーヴァ伯爵も超わがままな演技がリアルで面白い。再演にも関わらずマクヴィカー自身が細かいところまで演出をつけ、モーツァルトを知り尽くしたパッパーノがアンサンブルの細部まで鮮やかに指揮をする。劇場が誇る合唱団と俳優たちの演技にも注目してほしい。
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン
2023年7月7日(金)〜13日(木)
英国ロイヤル・オペラ・ハウス
シネマシーズン2022/23
『フィガロの結婚』
▼上映劇場
北海道/札幌シネマフロンティア
宮城/フォーラム仙台
東京/TOHOシネマズ 日本橋
東京/イオンシネマ シアタス調布
千葉/TOHOシネマズ 流山おおたかの森
神奈川/TOHOシネマズ ららぽーと横浜
愛知/ミッドランドスクエア シネマ
京都/イオンシネマ 京都桂川
大阪/大阪ステーションシティシネマ
兵庫/TOHOシネマズ 西宮OS
福岡/中洲大洋映画劇場
上映開始時間|劇場による
チケット料金
一般・シニア 3,700円
学生・小人 2,500円
詳しくは:東宝東和/英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン
オペラと原作の違い
戯曲が原作ということもあり、原作とオペラの内容にさほど違いはありません。
あえて違いを挙げるとするならば、オペラはドタバタ喜劇やロマンスの要素がより強く、原作は貴族批判、民衆の反抗心など、社会風刺の要素が色濃く現れているように思います。
五幕でフィガロが放つ長台詞は圧巻です。
「悪党め! この俺こそいい面の皮だ! そりゃ、いけませんよ、伯爵閣下、彼女ばかりは渡せません……渡して堪るものか。貴方は豪勢な殿様というところから、御自分では偉い人物だと思っていらっしゃる! 貴族、財産、勲章、位階、それやこれやで鼻高々と! だが、それほどの宝を獲られるにつけて、貴方はそもそも何をなされた? 生れるだけの手間をかけた、ただそれだけじゃありませんか。おまけに、人間としてもねっから平々凡々」
ボオマルシェエ『フィガロの結婚』 辰野隆 訳
この後、数ページに渡って、フィガロが舐めた辛酸、経歴、貴族たちへの憎悪が続きます。まるで著者の想いがフィガロに乗り移ったかのようです。
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