モーツァルト『魔笛』 初めてのオペラにもぴったりの愉快な冒険物語!
オペラ『魔笛』の見どころ
超絶技巧の『夜の女王のアリア』
夜の女王の2回のアリアはどちらもとてつもない超難易度。特に2回目の『復讐の炎は地獄のように我が心に燃え』の最高音を美しく歌いあげることが出来る歌手は世界に数人だけと言われています。実際は世界中で公演が行われているので少し誇張が入っていると思いますが、それでも素人は門前払いされる難易度です。
最高音はhihiF。『ドレミの歌』の歌い出しのドから音階を上げていったとき、”ドレミファソラシドレミファソラシドレミファ”という三回目のファの高さを歌います。
カラオケで言うなら、女性シンガーの曲では広瀬香美『ロマンスの神様』、Superfly『愛をこめて花束を』『Allright!!』、YOASOBI『夜に駆ける』『怪物』などの最高音がhiFなので、これらをキー+12で歌える声の高さが必要となります。
無理に歌おうとすると喉を壊してしまう超高音です。
自動車のCMでも使われていたので、これを読んでいただいている皆さんもどこかで聴いたことがあるかもしれません。
愉快な『パ・パ・パ』
パパゲーノとパパゲーナが魔法の鈴の力で再会し、愛を誓うときに歌われる『パ・パ・パ』。互いの名を「パ・パ・パ・パ・パパゲーノ」「パ・パ・パ・パ・パパゲーナ」と歌い呼び合う響きが愉快で子気味よい、とても楽しい曲です。
悲哀を湛えた『誰でも恋の喜びを知っている』
2幕の半ばほどでモノスタトスが歌うアリア。掲載した動画は和訳歌詞版です。
モノスタトスは脅迫や裏切りに手を染めてしまうのですが、動機は「醜く肌が黒いことから、人に愛されない、恋愛を望めない」ことへの絶望でした。
悪役の小人物で、救われない結末は身勝手なふるまいへの報いでもあります。ですが当時の黒人差別を思えば、彼には時代に虐げられた悲しき悪役という側面も見え、同情を覚えてしまう部分があります。
モノスタトスに深い人間味があることで、魔笛のエキゾチックで非現実的な舞台に立つ他の登場人物達にも、生々しい存在感が与えられているように思います。
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