モーツァルト『魔笛』 初めてのオペラにもぴったりの愉快な冒険物語!

オペラ『魔笛』の歴史

市民のためのオペラ『魔笛』

ヴィーデン劇場 1815 . 出典:Wikimedia Commons


オペラ『魔笛』(1791年初演)は全2幕のジングシュピール(※1)です。このオペラは、モーツァルトの友人で、台本を手掛けたエマヌエル・シカネーダーの依頼で作曲されました。
もともとウィーンの市民劇場での演目だったため、誰が観てもわかりやすいおとぎ話として作られています。

※1 ジングシュピール … セリフが入るドイツ語のオペラ。市民向けの歌芝居として発展し、現在ではオペラに分類される演劇形態。

この頃のドイツ・ウィーンでは、15世紀までの”宮廷劇場で貴族だけがオペラを楽しむ”といった時代から少しずつ変化をとげ、民衆向けの市民劇場が建設され人気を博していました。

その中でも特に有名な市民劇場の1つであるヴィーデン劇場の支配人シカネーダーは、劇団の座長で、台本家で、俳優でもあり、『魔笛』にはシカネーダー自身がパパゲーノ役として演技にも参加していました。

パパゲーノに扮したエマヌエル・シカネーダー 1791.
作:イグナーツ・アルヴェルティ
出典:Wikimedia Commons


『魔笛』は大ヒットし、シカネーダーはその利益を元手に自身の劇場を建立することができました。

モーツァルトの生涯については、こちらを参照してください。↓↓↓

オペラ『魔笛』にまつわる都市伝説

マンハイム国民劇場における『魔笛』「太陽の神殿」舞台デザイン(1902)
出典:Wikimedia Commons


独特の世界観を持つ『魔笛』には、その人気の高さも相まって舞台装置やストーリーなどから想起される都市伝説が生まれました。その代表的なものとして、フリーメイソンとの関与があげられます。

フリーメイソンは石工職人の互助組織から発展したとされる(諸説あり)友愛団体で、詳細を外部にはあまり明かさないまま、慈善活動などを行っている秘密結社です。そのメンバーとして知られる人には、世界各国の名だたる富豪や権力者、大スター等が多くいるため、嘘か本当かわからない陰謀論が多数囁かれています。

そんなフリーメイソンにモーツァルトが入会手続きをした書類が残っていること、また『フリーメイソンのための葬送音楽』を筆頭にフリーメイソンに向けた楽曲をいくつか残していることから、モーツァルトがフリーメイソンの会員であったことは確実視されています。

なかでも『魔笛』では、主に以下のような点からフリーメイソンをモチーフにした作品なのではないかといわれています。


1.『魔笛』はエジプトが舞台ですが、フリーメイソンにとっても古代エジプト文明は重要なモチーフです。シンボルマークの一つにエジプト文明の「ホルスの目」が使われていて、フリーメイソンの教会にあたるロッジには「ナイル・ロッジ」や「スフィンクス・ロッジ」などエジプトに関連した名前が使われています。ピラミッドの建造に関わった石工がフリーメイソンのルーツであるとされる(説がある)など、エジプトとの関連が深いのです。

ホルスの目のシンボル

2.『魔笛』ではタミーノが試練を受け、ザラストロたちに受け入れられます。フリーメイソンでは入会、組織内での昇進にあたって儀礼と試験を課せられるそうなので、タミーノが受けた試練がそれの比喩なのではないかといわれています。

3.『魔笛』では、侍女や童子の人数、試練の数など「3」という数字が重要なポイントで用いられていますが、フリーメイソンでも「3」という数字は重要とされています。


などなど……その他にも細かな点でフリーメイソンのモチーフとの共通点が指摘されています。

『魔笛』初演から2ヶ月後、モーツァルトは死を迎えます。
これに関しては別途、死神から依頼を受けて遺作『レクイエム』を作曲したとか、ライバル視された音楽家アントニオ・サリエリに謀殺されたとかの都市伝説が多数あるのですが、その一つに「フリーメイソンの秘儀をオペラで世間に公開したために暗殺された」というものがあります。

とはいえ、台本のシカネーダーが無事ですので、暗殺説については信憑性が低いともいわれています。

信じるか信じないかは、あなた次第です。といったところでしょうか。

次のページ:公演・上映情報|まとめ|関連作品

オペラハーツの編集とライターを兼任。 小中でピアノ教室に通い、中高では吹奏楽部で打楽器を担当した程度の演奏経験。 クラシック以外にロック、EDM、ボカロ、ゲーム音楽なども好んで聴く。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。