ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』×ベートーヴェン『交響曲第7番2楽章』小説を彩るクラシック#20
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン『交響曲第7番第2楽章』
「嘘を真実のように見せる」このようなテクニックに対して編集部の中でも摩擦が起こり始め、正義感の強いマイアは徐々に嫌悪感を露わにし、メンバーの中では比較的まともな主人公のコロンナに頼るようになります。
同僚の二人は仕事の相談をする関係から、食事に行ったり、部屋に行ったりするような間柄に。
ある晩コロンナがマイアのアパートで夜を過ごしているとき、マイアはベートーヴェンの交響曲第7番をかけます。
リラックスしたムードの中、少女時代から第2楽章になると涙ぐんでしまうの、と、マイアはうちあけます。
十六歳のときからなの。お金がなくて、たまたま知ってる人がただで劇場の天井桟敷に入れてくれた。でも、席はなかったから、階段に座り込んで、いつの間にか寝そべってしまった。堅い木の床だったけど気にもしなかった。で、第二楽章で、このまま死にたいなって思って、泣いてしまった。私、ちょっとおかしかったのよ。でもまともになってからも泣き続けた
自分の信念を貫き通したベートーヴェンと、自分の正義を貫くことができない(自分の思い通りに生きていくことができない)マイアの対比が描かれているかのように読める場面です。
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