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牧阿佐美バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』2022年6月12日(日)東京文化会館

牧阿佐美バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』

ゲスト、カンパニーが一丸となってスペクタクル・バレエを熱演

2020年3月に予定されていた公演が中止となり、今回6年ぶりに上演が実現した。この作品はヴィクトル・ユーゴーの同名の小説をもとに、ローラン・プティが振り付けたもので、プティの代表作のひとつである。日本では牧阿佐美バレエ団だけが上演権を持っている。

公演2日目には、ゲストとしてエスメラルダ役にローマ歌劇場のエトワール、スザンナ・サルヴィ、フェビュス役に国立アスタナ・オペラ・バレエ団プリンシパル、アルマン・ウラーゾフ(11日も出演)、そしてカジモド役には、この6月4日にパリ・オペラ座バレエ団を引退したばかりの元エトワール、ステファン・ビュリオンが登場した。牧阿佐美バレエ団プリンシパル、ラグワスレン・オトゴンニャムはフロロ役をつとめた。

上記4役以外に役名はついておらず、カンパニーのメンバーは群衆やジプシー女、乞食、歩兵隊とさまざまなコールドを演じるわけだが、このコールドが今回とてもよかった。ゲストダンサーとして八幡顕光がクレジットされており、彼がスピーディでキレの良い流れの牽引を担っていたのかもしれない。

この作品はストーリーを単に追っているのではなく、物語のポイントとなる場面場面が展開されていく形をとっており、その切り替え、盛り上げなどの点でシャープな色彩の衣装と面白いステップとが相まったコールドのパフォーマンスはクオリティが高かった。

単純な悪役ではないフロロをオトゴンニャムが高い身体能力で好演。帰国後、自身のカンパニーでエスメラルダを踊ることになっているサルヴィもしっかりエスメラルダ像が出来上がっていた。

群衆の中から登場した瞬間からエスメラルダの亡骸を抱えて立ち去る最後まで、ビュリオンに目を奪われた。初めは「異形の者」であるが、正確で丁寧、しなやかな彼のパフォーマンスからすぐに気持ちのやさしい誠実なカジモドが立ち現れてきた。まさにカジモドを「踊るべき人」なのだと実感。

大掛かりな装置、中世だけれどモダンに見えるイヴ・サン=ローランの衣装、スケールの大きいバレエらしくないモーリス・ジャールの音楽、そしてプティの振付、久しぶりに見るプティの大作はやはりすばらしかった。カーテンコールでスタンディングオベーションになったのも納得だ。

引退公演をすませたばかりのビュリオンが日本に来て踊ってくれたことは、日本のバレエ・ファンにとって忘れられない贈り物となったにちがいない。

photo by 山廣康夫


公演レビュー


エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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