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神様がドタバタ騒ぎ!オッフェンバックのオペレッタ『天国と地獄/地獄のオルフェ』のあらすじや曲を紹介

オペレッタ『天国と地獄/地獄のオルフェ』のあらすじ
〜笑いの中に痛烈な風刺!〜

オペレッタ『天国と地獄』には、当時のフランス社会への風刺が随所に見られます。

神々はブルジョワ市民階級であり、神々の王ジュピテルは皇帝ナポレオン三世を表しています。「世論」は、道徳や正義を振りかざすだけで本質を見ようとしない、市民社会の象徴です。

恋に奔放で自由なユリディスは、最後には自立を手に入れ世論に苦々しい顔をさせます。女性の解放と社会進出の気風を先取りするかのような、痛快なハッピーエンドです!

それでは、あらすじを知って実際の劇を鑑賞してみましょう。

『天国と地獄/地獄のオルフェ』
あらすじ
✳︎ 第1幕 ✳︎

「パリ・ゲテ座『天国と地獄』1874年改訂版の第1幕第1場のセットデザイン」 出典:Wikimedia Commons


序曲に続きプロローグ。
「世論」が登場して「私は誰か?」を歌います。世論は、ギリシャ古典劇で進行をつとめた合唱「コロス」の役割を担いながら、この劇中で道徳的意見を述べるなどすると説明して、観客に挨拶し退場します。

【ギリシャ、テーベ近郊の田園】

音楽院長オルフェ(オルフェウス)の妻ユリディス(エウリュディケ)は、愛人の羊飼いアリステ(アリスタイオス)への想いを歌います [夢見る女は]。夫オルフェが帰宅。妻を愛人のクローエと間違えて、ヴァイオリンで情熱的に愛を奏でますが、妻と気付きます。ユリディスの不倫相手が隣の羊飼いと知って夫婦げんか [けんかの二重唱]。アリステへの報復に出るオルフェ。ユリディスはアリステに警告しようと飛び出していきます。

羊飼いのアリステが登場。自分の仕事について殊勝に歌います[私はアリステ]。アリステは、実は地獄の王プリュトン(プルート/ハデス)。プリュトンはユリディスを地獄にさらおうとしていたのです。プリュトンは、オルフェの夢に現れて麦畑に毒蛇を仕掛けさせたと告白します。

アリステの姿に戻ったプリュトン。ユリディスは、夫の報復を警告するため麦畑にいるアリステに駆け寄ると、毒蛇にかまれて死んでしまいました。本性をあらわしたアリステが地獄の王だと気付いたユリディスは、恐れるどころか「死が私に微笑んでいる」と喜んで地獄に向かいます。

家に戻ったオルフェは、「地獄に行く」と書いたユリディスの書き置きを見つけて喜びます[自由を手にした、この喜び]。愛人クローエのところに行こうとしていると、世論が現れ、名誉のために妻を取り戻すように命じます[さあ、名誉に従いなさい]。オルフェはしぶしぶ、神々の王ジュピテル(ジュピター/ゼウス)に会うために天国に向かいます。

【夜明け前のオリンポス山】

「オリンポス十二神」出典:Wikimedia Commons

神々が眠っているところに、キュピドン(キューピッド)とヴェニュス(ヴィーナス)が朝帰り[私たちの眠りが]。ディアヌ(アルテミス)の角笛が鳴って神々が目覚めます。

恋人の羊飼いアクテオン(アクタイオン)が行方不明になって苦悩するディアヌ。ジュピテルは、スキャンダルを避けるためアクテオンを鹿に変えたと明かします。

ジュピテルの横暴に、ディアヌも神々も怒ります。ジュピテルの妻ジュノン(ヘラ)がユリディス誘拐について告発すると、伝令役のメルキュール(マーキュリー/ヘルメス)が、犯人はプリュトンであると伝えます[メルキュールのロンド]。

天国に現れたプリュトンにジュピテルがユリディスのことを詰問していると、フランス国歌『ラ・マルセイエーズ』の旋律を借りた「立ち上がれ、すべての神々よ」を歌う神々が、ジュピテルに対しストライキを始めます。さらに、これまでのジュピテルの浮気を次々と暴露していきます[変身のロンド 昔、アルクメーネを惑わすために]。

そこにオルフェが世論に伴われて登場。『オルフェオとエウリディーチェ』の有名なアリア「エウリディーチェを失って」を心にもなく歌い、妻の返還を訴えます。ジュピテルはプリュトンにユリディスを返すように命じ、地獄に乗り込むと宣言。神々に一緒に行きたいとせがまれジュピテルが許可すると、「ジュピテル賛歌」の大合唱。

『天国と地獄/地獄のオルフェ』
あらすじ
✳︎ 第2幕 ✳︎

【地獄の王プリュトンの私室】

「ハエの二重唱のシーン」1887年リバイバル上演 出典:Wikimedia Commons

ユリディスは地獄に退屈し、「ああいやだわ、まるで地獄の苦しみよ」を歌っています。下僕のジョン・ステュクスはユリディスを見張りながら、「私がボイオーティアの王子だった頃」と生前は王子だったことを明かしますが、ユリディスは相手にしません。
ジュピテルがプリュトンとともに登場し、ジョンは慌ててユリディスを隠します。ユリディスの気配を感じたジュピテルは、キュピドンの力を借りてハエに変身[キュピドンのキスの歌]。

周囲を飛び回るハエのジュピテルに気付いたユリディス。ハエに好意をもち、「ジジジ」とハエの音をまねる愉快な二重唱を歌います[ハエの二重唱]。元の姿に戻ったジュピテルは、ユリディスをオリンポスに誘います。バッキュス(バッカス)の巫女に変装させ、パーティのどさくさにまぎれて逃げ出そうと計画しました。

【地獄のパーティ会場】

地獄に神々が集まり大パーティ。「プリュトン万歳!」とバカ騒ぎしています[地獄の合唱]。バッカスの巫女に扮したユリディスが「バッカス賛歌」を歌い、ジュピテルの号令でメヌエットが始まります。続いて有名なギャロップ!「地獄のギャロップ(通称「フレンチ・カンカン」)」が炸裂します。

ユリディスとジュピテルが騒ぎに乗じて逃げ出そうとするとプリュトンに邪魔され、世論と一緒にオルフェが到着。ジュピテルはオルフェに、「ユリディスを返すが、地上に戻るまで決して後ろを振り向いてはならない」と条件を付けます[後ろを振り向くな]。

ユリディスを連れ帰るオルフェ。オルフェがなかなか振り向かないことに業を煮やし、ジュピテルは雷を落とします。オルフェが驚いて振り向くと、ユリディスはオルフェから引き離されてしまいました。

プリュトンはユリディスが地獄に戻ることを主張しますが、ジュピテルはバッカス神殿の巫女に任じます。悔しそうな世論をよそに、ユリディスは巫女になれたことを喜び、オルフェも喜んで地上に帰っていきます。再びギャロップが流れてハッピーエンド。

次ページ:『天国と地獄/地獄のオルフェ』のみどころと公演予定

神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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