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神様がドタバタ騒ぎ!オッフェンバックのオペレッタ『天国と地獄/地獄のオルフェ』のあらすじや曲を紹介

オペレッタ『天国と地獄/地獄のオルフェ』の見どころ

地獄のパーティ会場で流れる『地獄のギャロップ』は、このオペレッタを見たことがなくても、1年に1回は耳にするぐらいの超有名曲!運動会やパーティなど、楽しいシーンで聞くことが多いと思います。聞いただけで明るく元気になれるのが、オッフェンバックの音楽の最大の魅力!

ここでは、オッフェンバックの名人芸である、パロディについてもご紹介します!ちらりと顔をのぞかせる程度のあっさりしたパロディですが、聞けばすぐ気付くという絶妙のさじ加減です!

運動会の定番!『地獄のギャロップ』

マレク・ヤノフスキ指揮、ハンブルク国立歌劇場 1971年

第2幕終盤、地獄のパーティで神々がどんちゃん騒ぎをする場面!ここで『地獄のギャロップ』が演奏されます。終幕にも再登場し、舞台と観客が一体となって楽しめる、フィナーレにふさわしい音楽です!

「フレンチ・カンカンを描いたロートレックの作品」1895年 出典:Wikimedia Common

『地獄のギャロップ』は、オペレッタのタイトルをとって「天国と地獄」と呼ばれたり「フレンチ・カンカン(カンカン)」と呼ばれたりします。

日本では運動会の定番ですが、本場パリでは「ムーラン・ルージュ」などのキャバレー音楽の定番曲!
ロンドンのミュージック・ホールで1860年代にフレンチ・カンカンが流行すると、その音楽に「地獄のギャロップ」が使われ、逆輸入のような形でパリでも流行しました。

女性ダンサーが脚を大きく上げて踊るフレンチ・カンカンは、現在もムーラン・ルージュの名物ショー!ただ、オッフェンバック当人はフレンチ・カンカンと結びつけられることに抵抗があったようで、『地獄のギャロップ』に「カンカン」という名称を使うことはありませんでした。

「カステラ1番、電話は2番、3時のおやつは文明堂~♪」のCMでもおなじみ!コグマのぬいぐるみのカンカンダンスがかわいい、文明堂のCMにも!

初代文明堂CM。1960年代初頭放映

ハエに恋?ジュピテルとユリディス『ハエの二重唱』

マルク・ミンコフスキ指揮、リヨン歌劇場 1997年

第2幕、神々の王ジュピテルがハエの姿に変身して、ユリディスを誘惑する場面です。

地獄の王プリュトンの寝室に閉じこめられ退屈していたユリディスは、ジュピテル扮するハエに興味をもち好意を寄せます。 ハエのように飛び回ったり手をすり合わせたりするジュピテルの演技や、「ジジジ」とハエの羽音で歌う滑稽なシーンが見どころ!

神々を統率するジュピテルは、当時の支配者であったナポレオン三世を表しています。時の皇帝をハエの姿にして徹底的に笑いものにするオッフェンバックもオッフェンバックですが、ナポレオン三世は『天国と地獄』の観劇を所望。そのためオッフェンバックは1860年、ナポレオン三世のためにパリのイタリア座で上演を指揮し、皇帝から感謝の手紙を受け取っています。

絶妙のパロディ!『オルフェオとエウリディーチェ』に『ラ・マルセイエーズ』も!

マルク・ミンコフスキ指揮、リヨン歌劇場 1997年

神々のストライキシーン(『ラ・マルセイエーズ』):58分30秒頃
オルフェの要求シーン(グルックのオペラアリア):1時間8分頃

オペレッタ『天国と地獄』は、他作品のパロディを随所に含んでいます。中でも、古典オペラとして敬われていたグルックの『オルフェオとエウリディーチェ』は、作品自体をおもしろおかしくパロディ化しました。
第1幕最終でオルフェがジュピテルに妻の返還を要求する場面では、『オルフェオとエウリディーチェ』の有名なアリア「エウリディーチェを失って」の旋律がそのまま使われています。

フィリップ・ジャルスキー「エウリディーチェを失って(Che farò senza Euridice)」オペラ『オルフェオとエウリディーチェ』より

当時の批評家たちは、「オペレッタ『天国と地獄』は神聖な古典の冒涜である」と批判。台本作家のエクトル・クレミユーがこれに抗議する投書を掲載し、ちょっとしたスキャンダルに発展します。実際に見て確かめようという観客が殺到し、『天国と地獄』は1年半で228回もの公演を遂げる大ヒットに!この収益でオッフェンバックはフランス北西部のエトルタに別荘を買い、「オルフェ荘」と名づけたとか。

現フランス国家の『ラ・マルセイエーズ』も顔をのぞかせています。第1幕後半、ジュピテルに反抗する神々のストライキのシーンで、『ラ・マルセイエーズ』の旋律が瞬間的に聞こえるのです。

『ラ・マルセイエーズ』、映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』より

ナポレオン三世が統治していた第二帝政時代(1852-1870)、専制君主制を否定する内容を含む『ラ・マルセイエーズ』は、国歌ではなかったばかりか、公に歌うことも禁じられていました。その曲を瞬間的にでもストライキの場面で使うというのは、かなりきわどいパロディ。
歌詞の内容にあたりさわりがなかったことや、オッフェンバックが決して反体制的ではなかったことで大目に見られたのかもしれません。

オペラ『天国と地獄/地獄のオルフェ』公演予定

日生劇場で東京二期会によるオペレッタ『天国と地獄』が公演されます!

期間は11月23日(水・祝)〜27日(日)の4日間。

日本語訳詞上演でじっくり『天国と地獄』を鑑賞できます!

https://twitter.com/nikikai_opera/status/1592084158033321984?s=20&t=H1D7TzZ3xXJiRxSpj0VDFA

《二期会創立70周年記念公演》
オペレッタ『天国と地獄』(『地獄のオルフェ』)


2022年11月23日(水)〜27日(日)
会場:日生劇場

開演:11月23日(水・祝) 17:00
   11月24日(木) 14:00
   11月26日(土) 14:00
   11月27日(日) 14:00

★ チケット料金
一般 8,000円〜13,500円

詳しくは:東京二期会


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神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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