【公演中止】2022年10月22日(土) 室内楽ホール de オペラ｜岩田達宗プロデュース佐藤美枝子の「ルチア」第一生命ホール

2022.09.29公演プレビュー

※こちらの公演は、出演者の体調不良により中止となりました。詳しくは主催のお知らせをご覧ください。

トリトン・アーツ・ネットワーク
https://www.triton-arts.net/ja/concert/2022/10/22/3631/#information

2022年10月22日(土) 第一生命ホール
室内楽ホール de オペラ
岩田達宗プロデュース
佐藤美枝子の「ルチア」

『ランメルモールのルチア』の理解を深める好企画

素晴らしいアーティストが揃った贅沢な公演

ドニゼッティ作曲『ランメルモールのルチア』を、大ホールではなく、室内楽ホールで上演しようという意欲的な試みの公演が行われます。

オペラは役を演じる歌手だけでなく、合唱、オーケストラが加わり大所帯で、さらに豪華な舞台美術と照明がありますから、通常は大きなホールにてたくさんのお客様を迎えて上演します。
この公演は室内楽のホールで行われます。合唱とオーケストラはありません。

登場するのはルチアを取り巻く主要な4人のみ。ルチアの恋人エドガルド（テノール）に清水徹太郎、兄のエンリーコ（バリトン）に黒田博、ルチアの教育係ライモンド（バス）に久保田真澄、エンリーコの部下ノルマンノ（テノール）に所谷直生という素晴らしい歌手が登場します。

ルチア｜佐藤美枝子

そしてルチアを歌うプリマドンナは佐藤美枝子、日本を代表するソプラノです。佐藤はルチアを得意とし、ライフワークとして大切に取り組んできました。渾身の、という言葉では足りないくらい魂をかけて歌う彼女のルチアを体験できるのは大変幸せなことです。

佐藤のルチアをあえて室内楽で聴かせようとプロデュースするのは岩田達宗です。オペラ公演に行くと演出の欄に彼の名前を見つけることが多々あります。引く手あまたのオペラ演出家です。

佐藤と岩田とは以前（2003年）にも『幻想のルチア』という公演でタッグを組んでいます。円熟の時を迎えた佐藤の、まさに今しか聴けない最高の「ルチア」を披露してくれるのです。

『ランメルモールのルチア』という作品の本質を知る

オーケストラや合唱がない分、この作品の本質が露わになって理解が深まるのではと期待が高まります。

この作品はベルカント・オペラの代表と言われますが、ベルカントとはイタリア語による歌唱の美しさ、言葉の力で魅了する技法のこと。大変なテクニックを要するし演技力も必要とされます。室内楽ホールですから細かなニュアンスに至るまで声の魅力をたっぷりと楽しむことができるでしょう。

さらに、この作品の時代背景にまで思い至ることができるかもしれません。

物語は17世紀のスコットランドで実際にあった話です。ルチアは敵対する家のエドガルドと恋仲になりますが、家の再建をかけてルチアの兄のエンリーコはルチアに政略結婚させようとします。女性が自分の結婚相手を決めることができないのはこの時代では当たり前でした。そこにはスコットランド王国の復興という男たちの野望も背景としてありました。

『ランメルモールのルチア』あらすじ紹介の記事はこちらから(operahearts)

愛国心を尊ぶ一方で若い女性が犠牲になる。そういう矛盾を感じ取ることができたら、この作品の最大の見せ場であるルチアの「狂乱の場」は、より一層その時代を生きた不幸な女性のリアルさが増すのではないでしょうか。そして佐藤は想像をはるかにこえる歌唱で私たちを魅了することでしょう。