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E.T.A.ホフマン『大晦日の夜の冒険』:オペラ『ホフマン物語』の原作紹介〜オペラの原作#06

『大晦日の夜の冒険』のあらすじ

『大晦日の夜の冒険』あらすじ
1. 恋人

大晦日の夜、法律顧問官の招待を受けて、「ぼく」は盛大な宴会に参加します。

そこで「ぼく」は、かつての恋人であるユーリエと再会しました。「ぼく」は驚きのあまり後退り、顧問官と激突。顧問官が持っていたお茶をぶちまけさせてしまいました。

隣の部屋ではルートヴィヒ・ベルガーがピアノの即興演奏をし、ユーリエを含めた会衆が、ベルガーの部屋へ移動していきました。

ユーリエは、以前よりも美しく、まるでの天使のようでした。

ベルガーの演奏を聴きながらユーリエは「ぼく」に「あなたにピアノを弾いてほしかったわ。過ぎた昔の愉しさと希望を、もっとやさしく歌ってくださればよかったのに!」と甘く愛らしい声でささやきます。
過去の想いが蘇った「ぼく」は、ユーリエに愛の言葉を語ります。ですが、ユーリエはすでに結婚していました。

ユーリエは夫の元に戻り、「ぼく」は「永久に失われてしまった!」と叫び、外套や帽子を置いて、嵐の夜の中へ飛び出していきました。

『大晦日の夜の冒険』あらすじ
2. 地下酒場にて

宴会を飛び出した「ぼく」は、地下にある酒場に飛び込みました。

席について上等なイギリスビールを注文すると、背の高い痩せた男が近づいてきて、「ぼく」の向かいの席に腰を下ろしました。

背の高い男はビールとパイプを注文して、すぐに煙をすぱすぱと吐き出します。陰気なこの男の足元を見ると、奇妙なことに長靴の上にさらに靴を履いていました。

続いて、小柄な瘦せこけた男が酒場にやってきて、酒場の主人に「鏡に覆いをかけてくれ」と叫びました。

二人がいる席についた小柄な男は、煙草が吸いたいと言い、「僕」は鏡のように磨かれた鋼鉄の煙草入れを取り出して、小男に一服を勧めます。
すると小男は、「どけてくれ!そのいやな鏡をどけてくれ!」と恐怖の叫びを上げます。その顔はまるで死人のように蒼ざめていました。

三人は会話を始め、徐々に打ち解けた雰囲気になっていきました。ですが、話題が「鏡」のことに及ぶと、場に亀裂が生じ、小男は背の高い男に「(お前と違って)俺には影があるぞ!」と叫び、店を飛び出していきました。

背の高い男には影がありませんでした。男の名前は※ペーター・シュレミール、悪魔に自分の影を売り渡した男でした。

※アーデルベルト・フォン・シャミッソーが書いた『ペーター・シュレミールの不思議な物語』の主人公。幸運の金袋と引き換えに自分の影を失った男の運命を描くメルヘン風の小説であり、ロマン主義文学を代表する作品の1つ。一歩で七里をいく魔法の靴を履いており、上履きを重ねると制御効果が発動して、ゆっくりと歩くことができる。

『ペーター・シュレミールの不思議な物語』
ジョージ・クルックシャンクによる挿絵
出典:Wikimedia Commons

『大晦日の夜の冒険』あらすじ
3. 幽霊 幻覚

自宅の鍵を外套の中に入れっぱなしだったことに気づいた「ぼく」は、親しい付き合いのあるマティウ氏の宿屋「金鷲亭」に向かいます。

通された部屋は、宿屋の手違いで、先ほどの酒場で出会った小男がベッドの中にいました。
小男は眠りながら「ジュリエッタ!ジュリエッタ!」と女性の名前を呼んでいました。

「どうしてぼくの部屋にいるんだ!」

「ぼく」は小男を揺さぶって起こします。

「いやな夢だった。ありがとう、起こしてれて」

起こされた小男はそう言うと、酒場での無礼な振舞いを詫びて、ゆっくりと鏡の前に立ちました。

鏡には部屋の様子や「ぼく」の姿は映っているのですが、小男の姿はどこにもありません。

「わたしのかぎりない惨めさが、これでおわかりでしょう。あの純粋で善良な魂をもつペーター・シュレミールは、わたしのような邪悪な男にくらべれば羨ましいくらいです。彼は軽率にも影を売ってしまった。ところがわたしときたら! 自分の鏡像をあの女にやってしまった──女に! おお──おお──おお!」

『砂男/クレスペル顧問官』ホフマン
大島かおり訳 光文社古典新訳文庫


小男はうめき声をあげてベッドに倒れ込んでしまいました。
やがていびきの音が聞こえ始め、「ぼく」もベッドに入り深い眠りに落ちていきました。

その日の「ぼく」の夢の中にユーリエが現れました。

ユーリエは、青い炎がゆらゆらと立ちのぼる杯を「ぼく」に差し出します。すると小男が「だめだ、飲んじゃいけない!」と叫びます。

「どうして飲めないの?」とユーリエ。

「だめだ」と叫ぶ小男。

「こんちくしょう」

「ぼく」は、自分の叫び声で目を覚ましました。あたりはすっかり明るくなっており、昨晩、同じ部屋で寝ていた小男はすでに出立した後でした。

ふと、机の上を見ると、原稿が置いてありました。手に取って読んでみると、そこには小男に起きた怪奇な身の上話が綴られていました。

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1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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