プレビュー:アクラム・カーン『ジャングル・ブック』6月20日(金)〜22日(日)彩の国さいたま芸術劇場 6月28日(土)愛知県芸術劇場ホール

『ジャングル・ブック』を新たに解釈
環境問題と向き合うコンテンポラリー・ダンス作品

Photo. Camilla Greenwell
『ジャングル・ブック』とアクラム・カーン

Photo. Camilla Greenwell
『ジャングル・ブック』はイギリスの作家、ジョセフ・ラドヤード・キプリングが1894年に発表した小説です。翌年には続編が刊行されています。著者がインド滞在中に材を得て執筆された、熱帯のジャングルの動物が主人公の連作小説ですが、その中に赤ちゃんの時から狼に育てられたモーグリという少年の物語が何編かあります。ディズニーのアニメ作品にもなっているのでよく知られています。
アクラム・カーンはロンドン生まれのバングラデシュ系イギリス人。精力的な活動を続け、2012年ロンドン・オリンピックの開会式では一部振付・出演しましたし(https://www.youtube.com/watch?v=4As0e4de-rI 1時間24分すぎ)、多くの賞を受賞しており、日本で作品が上演される機会も比較的多いアーティストです。
彼は、この小説『ジャングル・ブック』を新たに解釈し、気候変動という地球の環境問題を織り込み、舞台化しました。
カーンが描く未来の世界

Photo. Camilla Greenwell
気候変動のために海が陸地を覆い尽くし、人々が生き延びるために次々と祖国を去っていく未来の地球が舞台。動物たちが縄張りを張る荒れ果てた街に辿り着いた、家族と引き裂かれた一人の少女が主人公です。原作では少年ですがここでは少女になっています。「モーグリ」と名付けられジャングルと化した世界で動物たちと暮らす少女が下した決断とは……。
カーン自身10歳の時にモーグリ役を演じたことがあるそう(ピーター・ブルック『モーグリの冒険』)。彼は「私たちの種族が忘れてしまったことを、再び学ぶために。そして私はこの物語を伝え、最も力強く心に到達できる方法は、ダンス、音楽、そして劇場の魔法を通じてであると信じています」と語っています。
舞台に現れるジャングルと化した地球

Photo. Camilla Greenwell
大きな舞台装置はありません。アニメーションとダンボールでジャングルと動物たちが舞台上に現出します。作品のテーマを考慮し、持続可能性や環境を意識しながら世界ツアーを行っています。
ダンス、言葉、音楽、アニメーション、照明、それらが未来の地球を作り出すマジック。美しくもあり怖くもあり、このままだといつかこうなってしまう、という世界を見事に作り出しています。
なによりもダンスで雄弁に語るダンサーたちの表現力に圧倒されます。
ずっと前からもうみんな気づいている地球の環境問題。環境破壊しているのは人間であることもわかっているのに大きな行動を起こさずにきてしまっています。気づいているのだから考えよう、行動しようというメッセージがこの作品には込められています。決して声高にメッセージを振りかざすことはしていませんが、舞台上のジャングルにて踊るダンサーを見てなにかしら感じずにはいられません。自分自身の問題であることを意識させる作品です。
ワールド・ツアーを経て、日本が最後の公演場所です。
見逃すことのないよう、劇場で体験しましょう。
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』
会場: 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
開演
6月20日(金)19:00
6月21日(土)14:00
6月22日(日)14:00
チケット料金:6,500〜4,000円 U-25 3,500〜2,000円
詳しくは:彩の国さいたま芸術劇場
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
開演
6月28日(土)16:00
チケット料金:6,500〜3,000円 U-25 3,500〜1,500円
詳しくは:愛知県芸術劇場
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