プレビュー:2023年5月27日(土),28日(日) NISSAY OPERA 2023『メデア』日生劇場

2023年5月27日(土),28日(日)
日生劇場
NISSAY OPERA 2023

『メデア』

開場60周年の日生劇場
『メデア』を日本初演

日生劇場で劇場デビューした人も多いのでは


今年で開場60周年を迎える日生劇場。ニッセイ文化振興財団が運営し、「届ける(優れた舞台芸術を制作、上演する)」「育む(青少年の豊かな情操を育てる)」「支える(舞台芸術を支える人材を育成する)」という3つの基本理念を掲げ、質の高い作品を上演するだけでなく、さまざまなシリーズを展開するなどして、オペラ、ミュージカル、バレエ、演劇などを取り上げてきました。

毎年夏に行われている「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」(今年で30周年)、多彩なジャンルの公演に小学生を無料で招待する「ニッセイ名作シリーズ」や、中高生向けの「日生劇場オペラ教室」なども継続しています。「ニッセイ名作シリーズ」の招待者数は2022年11月には800万名に達しています。

誰もが気負うことなく上質の舞台鑑賞ができる開かれた劇場として不動の人気を誇ります。小さい頃、この劇場に親御さんに連れられてきたという「劇場デビューは日生劇場」という方は多いのではないでしょうか。

2022年公演より|1.ダンス×人形劇『エリサと白鳥の王子たち』2.バレエ『真夏の夜の夢』3.オペラ『セビリアの理髪師』
PHOTO:1・3 ©︎三枝近志 / 2 ©︎鹿摩隆司

オペラは、1963年のベルリン・ドイツ・オペラを招きベートーヴェンの『フィデリオ』で柿落とし公演を行ってから、「NISSAY OPERA」としてより多くの方に楽しんでもらいたいという思いで、上質な舞台を、チケット料金を抑えて提供し続けています。

開場60周年記念公演として今年は3作品、作曲:ケルビーニ/演出:栗山民也『メデア』、作曲:ヴェルディ/演出:粟國淳『マクベス』、作曲:ヘンツェ/演出:宮本亞門『午後の曳舟』が上演されます。原作がそれぞれギリシャ神話、シェイクスピア、三島由紀夫と説得力のある原作がずらりと揃いました。

今回は、公演時期が迫っている『メデア』をご紹介します。

ギリシャ悲劇に材をとる、日本では幻のオペラ

『メデア』は1797年にルイージ・ケルビーニが作曲した3幕のオペラです。ギリシャ悲劇の三大詩人の一人であるエウリピデスの作品が原作です。この悲劇は蜷川幸雄演出による平幹二朗や大竹しのぶが主演した舞台が大人気ですが、ケルビーニ作曲のオペラ『メデア』は日本では今回が初めての上演となります。

そもそもこの作品は世界的にもマイナーな存在でした。けれども1953年の蘇演の際、マリカ・カラスがメデア役で出演したことで成功を収め、関心を集めることとなりました。そして1969年にパゾリーニ監督による映画『王女メディア』が制作され、カラスが再びメデア役を演じ、『メデア』は広く知られるようになりました。

『メデア』に再び脚光が当たるようになった背景にはマリア・カラスの貢献があったのです。

『王女メディア』1969年
2022年ピエル・パオロ・パゾリーニの生誕100年を記念した「パゾリーニ・フィルム・スペシャーレ1&2」上映の予告編

ギリシャ悲劇のストーリーを予習しておくと何倍も楽しめる

古代ギリシャのイオルコスの王子ジャゾーネは亡き父に代わり国王となっている叔父から王位を奪還しようとしますが、未開の国コルキスにあると言われている金羊毛を持ってくることを条件とされ国を追い出されます。ジャゾーネはコルキスの王女メデア(魔女でもある)の心を射止め、彼女の魔力を借りて金羊毛を手に入れ祖国に戻りますが、王位奪還はならず、ジャゾーネにとってもメデアにとっても外国であるコリントスに逃げます。

コリントスの王クレオンテは、娘のグラウチェの婿としてジャゾーネを迎えようとします。自国で王になり損なったジャゾーネは名誉欲にかられ、邪魔になった妻であるメデアを1日の猶予を与えコリントスから出ていくよう命じます。夫の裏切りからメデアは復讐に燃え、1日のうちにコリントス王クレオンと娘のグラウチェを、魔法を使い殺してしまいます。さらに二人の息子も殺し、コリントスを去っていきます。

オペラでは、ジャゾーネはメデアの残忍さを恐れグラウチェを愛して結婚しようとしています。また、ラストでは復讐を終え去るだけに留まらず、宮殿に火を放ちます。

このように、オペラは元のギリシャ悲劇とはシチュエーションが若干異なっています。

『TANGLEWOOD TALES』”the Golden Fleece(金羊毛)”の挿絵,1921年
画:ヴァージニア・フランシス・ステレット



ギリシャ悲劇は現代に通ずる部分が必ずあります。そこはどういうところなのか、ジャゾーネはメデアへの裏切りをどのように正当化しているのか、なぜメデアは復讐を遂げたのに二人の息子を殺してしまったのか、といったことを頭の隅に置いて舞台鑑賞するとより楽しめるのではないでしょうか。

またこれは演劇ではなくオペラです。音楽はどのようにストーリーに寄り添いドラマティックに彩ってくれるのでしょう。楽しみです。

日本初演という果敢な試みに挑むのは、以下のアーティストです。

指揮:園田隆一郎|演出:栗山民也


指揮の園田隆一郎、演出の栗山民也、メデアという難役には岡田昌子、中村真紀、ジャゾーネには清水徹太郎、城宏憲、グラウチェには小川栞奈、横前奈緒、クレオンテには伊藤貴之、デニス・ビシュニャが配役されています。オーケストラは新日本フィルハーモニー交響楽団です。

日本初演、ワクワクします。期待しましょう。

なお、9月1日には岡山芸術創造劇場の柿落としとしてこの作品が上演されます(オーケストラは岡山フィルハーモニック管弦楽団)。


NISSAY OPERA 2023
『メデア』

2023年5月27日(土),28日(日)
会場:日生劇場

開演|14:00

★ チケット料金
一般 12,000円〜8,000円
学生席 3,000円

詳しくは:日生劇場

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2023年9月1日(金)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ

開演|18:30

★ チケット料金
一般 10,000円〜6,000円
U24 3,000円
U18 1,000円 (限定50席)

詳しくは:岡山芸術創造劇場 ハレノワ


公演一覧
公演プレビュー


エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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