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プレビュー:新国立劇場オペラ『カルメン』2月26日(水)~3月8日(土) 新国立劇場オペラパレス

初演で話題となった
TOKYOカルメン再び

再解釈、読みかえの楽しみを知る

新国立劇場オペラのレパートリーとなっている『カルメン』はアレックス・オリエ演出により2021年に初演されました。コロナ禍だったため制約のある中での上演だったため、今回は再演ではありますが、改めて来日して演出をつけお披露目されます。演出家オリエは、バルセロナ・オリンピックの開会式を共同で演出したことで一躍有名になりました。パリ・オペラ座、モネ劇場、ミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラ、ザルツブルク音楽祭等々で演出を担当し、世界中で引っ張りだこの人気演出家です。新国立劇場では、2019年にオペラ夏の祭典『トゥーランドット』で初めて演出を手掛け、この『カルメン』は2作目となります。この『カルメン』は初演後、「TOKYOカルメン」と言われ、評判となりました。

自由奔放に生きるカルメンと彼に恋したばかりに最後はカルメンを殺してしまう哀れなドン・ホセ、そして二人を取り巻くキャラクターが物語を紡ぐ『カルメン』は、オペラ初心者に必ず勧められる人気の作品。オリエ版は大胆に読みかえをして、より現代的な女性、強くて自立した自由なカルメンを描いています。さらに社会に潜む影の部分も炙り出され、物語に厚みが増しています。オペラの読みかえとはどういうことなのかを知る良い機会になることでしょう。

TOKYOカルメンはポップスター

オリエ版のカルメンはステージで歌を歌うカリスマ性抜群のロックスターです。彼女に憧れるさえないドン・ホセ、スターと彼女に焦がれる地味な男、この図式はとてもわかりやすく説得力があり、ファム・ファタールに翻弄される男の運命に観客は引き込まれます。タバコ工場で働く労働者はコンサートに集まるファンになっており、さらにカルメンは薬物の取引にも関わっているようなのです。薬物中毒は現代社会につきまとう闇の部分。この治安の悪い不穏な雰囲気も物語に厚みが増します。

そんな中、「ハバネラ」「セギディーリャ」「花の歌」、さらには色男エスカミーリョの「闘牛士の歌」が歌われるのです。今回は初演時のスタイルであった「オペラ・コミック」となっているので、歌唱だけでなくフランス語のセリフのやりとりがあります。そのため演劇性が増し、人物の関係性の緊張感も増します。大変魅力的なオリエ版の『カルメン』、見てみたくなりませんか?

カルメン役は新国立劇場初登場
人気急上昇のメゾソプラノ

キャストも納得のラインナップです。カルメンにはサマンサ・ハンキーが新国立劇場に初登場します。彼女は日本でのオペラ初デビュー、さらにカルエン役も初めて演じるということで注目が集まっています。ホセ役はブラジル出身のアタラ・アヤン。彼は世界中のオペラハウスですでにデビューしていますが、新国立劇場は初めてとなります。若くて一途なホセに期待です。そしてエスカミーリョはこの役を得意としているルーカス・ゴリンスキー。彼も初登場です。物語の中で唯一イノセントで清らかなミカエラには伊藤晴が出演します。

指揮は日本での活躍が多いガエターノ・デスピノーサです。

お馴染みの『カルメン』ですが、新鮮な感動、発見に出会えるに違いありません。劇場で楽しみましょう。
                         新国立劇場「カルメン」より 撮影:堀田力丸


新国立劇場オペラ『カルメン』
開演
2月26日(水)18:30
3月1日(土)14:00
  4日(火)14:00
6日(木)14:00
8日(土)14:00

会場: 新国立劇場オペラパレス

チケット料金:29,700〜1,650円

詳しくは:新国立劇場

エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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