レビュー:MUSIC LAND~PIANO VERSION~

ジャパンアーツ主催「MUSIC LAND~PIANO VERSION~」
2022年6月19日(日)東京オペラシティコンサートホール

意欲的なピアニストたちによるプロデュース公演
多彩なピアノ演奏を披露

5部構成のコンサートを1日で行う、というピアノの音色に浸れるコンサートの、第2部から第5部までを聴いた(第1部は0歳から入場できる、小さいお子さん向け)。

4種のコンサートはそれぞれ休憩なしの45分間で、それぞれ別のピアニストがプロデュースし、タイトルがつけられている。

第2部は金子三勇士「Debut」、第3部は中野翔太「Universe」、第4部は阪田知樹「Discovery」、第5部は仲道郁代「そして未来へ」。
他に小井土文哉、實川風、髙木竜馬、谷昂登、萩原麻未が出演、舘野泉が特別出演。第2部でフルートのCocomi、第4部でチェロの笹沼樹がゲスト出演した。

ピアノ1台、3台、そして連弾とさまざまな演奏形態がいろいろなピアニストの組み合わせで披露されたほか、演奏していないピアニストは譜めくりをしたり、トークの時間があったりととても親密な気持ちになれる時間を過ごせた。

第2部、金子プロデュースでは舘野泉が登場。左手のピアニストとして二度目のデビュー時に弾いたバッハ(ブラームス編曲)の『シャコンヌ』を演奏。心に迫る真摯な演奏で胸が熱くなった。

第3部、中野プロデュースの回は構成の発想が興味深かった。3台のピアノでホルストの『惑星』(中野が編曲)から“火星” “金星” “木星”を弾くのだが、間にスクリャービンの『2つの詩曲OP.32』(演奏:小井土文哉)とドビュッシーの『沈める寺』(演奏:實川 風)を挿入するという試み。全体でUniverse の世界観を表現していた。

第4部、阪田プロデュースでは阪田のアレンジによる歌曲3曲(ピアノ編集版)を披露。阪田の作曲した『三つのアフォリズム〜チェロとピアノの為の』を阪田とチェロの笹沼とで初演した。作曲者が演奏していることと笹沼の好演から、曲の輪郭がはっきりしユニークな仕上がり。再演の機会を期待したい。最後にウェーバー(L.ゴドフスキ編曲)の「3台のピアノの為の『舞踏への勧誘』に基づく対位法的パラフレーズ」という超絶難曲を披露(演奏:髙木竜馬、小井土文哉、阪田知樹)。

第5部、仲道郁代はピアノアンサンブルの原点として連弾を選択。萩原麻未とシューベルトの晩年の傑作『幻想曲ハ短調D940、Op.103』が演奏された。連弾曲の中でも屈指の名曲、頻繁にライブで聴けるわけではないこの曲を最後の部で堪能できたことは非常に満たされた気持ちになった。

普段は一人きりで演奏活動をするピアニストが集うことは珍しい。また演奏を通してしかうかがい知ることのできないピアニストの考えていること、やりたいことを言葉で聴かせてもらえたのも良い機会だった。一つひとつの公演も時間が短く、気負うことなく聴いてみようという気になる気軽さもよかった。

ぜひこういう好企画なコンサートは続けてほしいと思う。


公演レビュー


エディター・ライター 出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして活動中。 クラシック音楽、バレエ、ダンスを得意ジャンルとする。

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