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日本の長崎が舞台のオペラ、プッチーニ【蝶々夫人】あらすじ紹介からジャポニスムまで

オペラ『蝶々夫人』の 登場人物

蝶々さん      |芸者
ピンカートン    |アメリカ海軍士官
スズキ       |蝶々さんの女中
シャープレス    |アメリカ領事
ゴロー       |結婚仲介人
ボンゾ       |蝶々さんの伯父、僧侶
ヤマドリ      |裕福な紳士
ケイト・ピンカートン|ピンカートンの正式な妻
蝶々さんの子ども

オペラ『蝶々夫人』あらすじ
〜愛を信じ続けた悲劇のヒロイン〜

オペラ『蝶々夫人』は、明治時代の長崎を舞台にしています。

プッチーニは『蝶々夫人』のオペラ化に当たって、当時のジャポニスムの流行も反映して、日本の音楽や風習、文化を積極的に研究し取り入れました。『さくらさくら』や『君が代』など、日本の楽曲の旋律がたくみに取り入れられています。あらすじの中に挿入楽曲を紹介していますので、鑑賞の際には、ぜひこちらも注目してみてください。

では、詳しいあらすじを知って実際のオペラを鑑賞してみましょう。

蝶々夫人 あらすじ
✳︎ 第1幕 ✳︎

旧グラバー住宅から見た長崎港の眺望。イギリス人商人T.B.グラバー氏と妻のツルは『蝶々夫人』のモデルだと考えられている。
出典:Wikimedia Commons

日清戦争の頃の明治時代、長崎の港を見下ろす山の手。

丘の上にある一軒家の庭先で、結婚仲介人のゴローが、アメリカ海軍士官のピンカートンに日本家屋の説明をしています。ピンカートンは芸者の蝶々さんと結婚し、いつでも契約破棄できる条件でこの家を999年間借りたのでした。ゴローはピンカートンに、女中のスズキや下男を紹介します。

アメリカ領事のシャープレスが丘を上って来ます。ピンカートンが日本に短期滞在する間の楽しみとして、軽薄な気持ちで蝶々さんと結婚しようとしていることを知ったシャープレスは、ピンカートンに警告します。ピンカートンは気にも留めず(『星条旗よ永遠なれ』)、アリア『アメリカの船乗りは世界中どこでも』を歌います。

友人たちとともに蝶々さんが姿を現します(長唄『越後獅子』)。ピンカートンに挨拶し、士族の娘だったが父が死んで落ちぶれ、生活のために芸者になったと話します(『越後獅子』)。まだ15歳になったばかりの蝶々さん。

結婚の契約を取り交わすため、役人らが到着(『君が代』)。蝶々さんはピンカートンに、嫁入り道具を披露します(『さくらさくら』)。そして、夫への忠義を示すため、先祖伝来の宗教を捨ててキリスト教に改宗したことをピンカートンに打ち明けました。

結婚式が始まり、蝶々さんの友人一同が祝福します(日本民謡『お江戸日本橋』)。蝶々さんの伯父で僧侶のボンゾが叫びながら登場。蝶々さんがひそかに改宗したことをなじります。親類一同から絶縁され、嘆く蝶々さんをピンカートンがなぐさめます。静かになった夜の庭で、夜着に着替えた蝶々さんとピンカートンは、『愛の二重唱』を歌います。

蝶々夫人 あらすじ
✳︎ 第2幕 第1場 ✳︎

同時代のアメリカ海軍砲艦ヨークタウン。ピンカートンは架空の砲艦エイブラハム・リンカーンに乗艦していた。
出典:Wikimedia Commons

蝶々さんの家の中。ピンカートンがアメリカへ帰ってから3年が経過していました。

ピンカートンは、コマドリが巣を作るころに帰ると言って去ったまま、何の音さたもありません。スズキは蝶々さんのために、日本の神々に祈りを捧げています(日本民謡『高い山から谷底見れば』)。所持金が残り少なくなり、女中のスズキはピンカートンが帰ってこないのではないかと疑っています。ピンカートンの帰りを信じて疑わない蝶々さんは、有名なアリア『ある晴れた日に』を歌い、必ず帰ってくると断言します。

シャープレスが、ピンカートンからの手紙を携えて訪ねて来ます(『お江戸日本橋』)。ゴローが新しい結婚相手として、金持ちのヤマドリを連れて来ました(日本軍歌『宮さん宮さん』)。蝶々さんはヤマドリの求婚に取り合おうとしません。ゴローは、夫に捨てられた妻は離婚されたのと同じと言います。蝶々さんは、日本の法律ではそうだが、アメリカの法律では違うと反論(『君が代』、『星条旗よ永遠なれ』)。

ゴローとヤマドリがいなくなり、シャープレスがピンカートンの手紙を読み始めます(『手紙の二重唱』)。しかしシャープレスは、アメリカ人女性と正式に結婚したという、ピンカートンからの手紙を最後まで読むことができません。シャープレスがヤマドリとの結婚を勧めると、怒った蝶々さんは奥の間から金髪碧眼の男の子を連れて来ます(端唄『かっぽれ』)。ピンカートンとの間にできた子で、彼がいなくなってから生まれたと言います。蝶々さんは、アリア『芸者になって街に出て』を歌います(流行歌『推量節』、『かっぽれ』)。そして、この子が待っていることをピンカートンに伝えるよう、シャープレスに頼みました。

シャープレスが帰った後、大砲の音が聞こえ、ピンカートンの軍艦が長崎に寄港したことを知ります(『星条旗よ永遠なれ』)。蝶々さんはスズキと『花の二重唱』を歌い、家中を花で飾ってピンカートンの帰りを待ちます。静謐なハミングコーラスの中、眠らず待ち続ける蝶々さんの姿が月明かりに照らし出されます。

蝶々夫人 あらすじ
✳︎ 第2幕 第2場 ✳︎

『越後獅子』の旋律から始まる間奏曲。

蝶々さんの家の中、夜明けの漁師たちの声が聞こえてきます。目を覚ましたスズキは、眠らずピンカートンを待ち続けた蝶々さんに気付きます。蝶々さんは子どもに子守歌を歌い(『かっぽれ』)、子どもと一緒に奥の部屋に消えていきます。

シャープレスがピンカートンを連れて訪れます。2人はスズキに、子どもを引き渡すよう蝶々さんを説得してもらうためにやってきたのでした。スズキ、ピンカートン、シャープレスの3重唱。ピンカートンは花で飾られた家を見て、蝶々さんが毎日、自分の帰りを待っていたことを知ります。

外にいるアメリカ人女性に気付いたスズキ。ピンカートンの正式な妻、ケイトです。蝶々さんの一途な愛を知り、犯した罪の大きさに恐れおののくピンカートン。アリア『さようなら、愛の家よ』を歌い、シャープレスに後を任せて逃げ去ってしまいます。

ピンカートンの気配に気付いて出てきた蝶々さん。しかし、ピンカートンはどこにもおらず、涙にくれるスズキとシャープレス。ケイトの姿を見て一切を悟った蝶々さんは、子どもを渡してほしいというケイトの申し出を受け入れます。ただし、ピンカートン自身が、半時間後に引き取りに来るようにと条件を出しました。

一人になった蝶々さんは、父の形見の短刀を取り出します。短刀には「誇りをもって生きること能わざれば、誇りをもって死すべし」と刻まれています。スズキに押しやられて子どもが走り出てきます。蝶々さんは子どもを抱き上げ、このオペラ最大の見せ場となるアリア『かわいい坊や』を歌います。息子に別れを告げた後、屏風の後ろに回って短刀をのどに突き立てます。遠くからピンカートンが蝶々さんの名前を呼ぶ声。その声を聞きながら、蝶々さんは子どもに這い寄り、息絶えます(『推量節』)。

次のページ:オペラ『蝶々夫人』2つの原作

神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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