バレエの名作『白鳥の湖』を徹底解説!「初演失敗説」や演出の違いについても深掘りしました
バレエと言えば『白鳥の湖』というほど、バレエの代表作として親しまれているこの作品。
本記事では、『白鳥の湖』のストーリーを知らない方や、何度も『白鳥の湖』を観てきたというバレエファンに向けて、ストーリー、演出の違い、初演失敗説について深掘りします。
また、『白鳥の湖』の近々の舞台もご紹介します。
ぜひ本記事をきっかけに『白鳥の湖』に興味を持ち、劇場へ足を運んでみてくださいね。
1. バレエ『白鳥の湖』のあらすじ
バレエ『白鳥の湖』は、呪いで白鳥に変えられた王女オデットと、一国の王子ジークフリートのラブストーリーです。
真実の愛を誓うことで救われると言うオデットに、ジークフリート王子は真実の愛を誓います。
しかし、オデットに呪いをかけた悪魔ロットバルトと、ロットバルトの娘オディールに騙されて、オディールに愛を誓ってしまうのでした……。
ラストの結末は演出によって異なります。
それでは、登場人物やあらすじを見ていきましょう。
1.1 バレエ『白鳥の湖』の登場人物
まずは、バレエ『白鳥の湖』の登場人物をご紹介します。
- オデット(白鳥)・・・ある国の美しい王女。呪いによって白鳥の姿に変えられており、人間の姿に戻れるのは夜だけ。
- ジークフリート王子・・・ドイツのある王国の王子。成人になったことを機に、花嫁を選ぶように王妃に言われているが気が乗らない。
- ロットバルト・・・オデットを白鳥に変えた悪魔。
- オディール(黒鳥)・・・ロットバルトの娘。第3幕の舞踏会ではオデットそっくりに化けて現れる。
- 王妃・・・ジークフリート王子の母。王子の結婚を急かす。
1.2 バレエ『白鳥の湖』のストーリー
バレエ『白鳥の湖』は、演出により幕数が異なりますが、基本的には全3幕または4幕構成です。
今回は、現在上演されている『白鳥の湖』の大元となっている「プティパ=イワノフ版」に基づき、全4幕バージョンのストーリーを詳しくご紹介します。
【第1幕】
王子の成人を祝うパーティー
舞台はドイツのある王国。お城の近くにある庭園で、この国の王子ジークフリートの成人を祝うパーティーがおこなわれています。
宮廷の人々のワルツ、王子の友人たちが踊るパ・ド・トロワ(※)など、パーティーは華やかに進みます。
そこへジークフリート王子の母である王妃がやってきて、ジークフリート王子に「明日開かれる舞踏会で花嫁を選ぶように」と言うのです。
青春時代に別れを告げることになると、ジークフリート王子は乗り気ではありません。
パーティーが終わったあと、遠くの空に飛んでいる白鳥の群れを見たジークフリート王子は、狩りに出ようと弓を手に湖に向かうのでした。
※3人組の踊りのこと。白鳥の湖では男性1人、女性2人で踊られる
【第2幕】
湖のほとり
ジークフリート王子は、湖のほとりにやってきました。
1羽の白鳥を射ようと弓を構えると、その白鳥が岸に上がってきて美しい王女に変身したのです。
王女の名前はオデット。悪魔の呪いによって白鳥の姿に変えられていて、人間の姿に戻れるのは夜の間だけという不幸な身の上を明かします。
続けて、悪魔の呪いに勝つには、真実の愛を誓ってくれる人が必要ということも打ち明けるのでした。
オデットとジークフリート王子は互いに惹かれ合い、しばし2人で踊ります。
ジークフリート王子は、自分が愛を誓うことでオデットを救い出そうとしますが、悪魔ロットバルトにオデットを連れ去られてしまいます。
ジークフリート王子は、一層オデットへの決意を固めるのでした。
【第3幕】
王宮の舞踏会
場面は王宮の舞踏会に移ります。
各国から美しい花嫁候補が訪れますが、ジークフリート王子は彼女たちに興味がありません。オデットを想い続けているのです。
そこへ、ファンファーレが鳴り響き、客人を装った悪魔ロットバルトとその娘オディールが現れました。
オデットそっくりに変身したオディールを見て、ジークフリート王子はオディールをオデットだと思い込んでしまいます。
そして、オディールに愛の誓いを立ててしまうのでした。
その途端、ロットバルトとオディールは正体を明かし、ジークフリート王子は騙されたことに気がつきます。
お城の外には、王子が裏切ったと嘆き悲しむオデットの姿が……。
ジークフリート王子は自らの間違いに絶望し、急いでオデットのいる湖のほとりへと向かうのでした。
【第4幕】
再び湖のほとり
場面は再び湖のほとりへと戻ります。
ともに白鳥に変えられている侍女たちの元へ戻ったオデットは、ジークフリート王子の裏切りを伝え、嘆き悲しみます。
そこへジークフリート王子が到着し、許しを乞いますが、もはや事態を止めることはできません。
湖に嵐がやってきました。オデットは湖に身を投げ、ジークフリート王子もあとに続きます。
その後、真実の愛の力によって悪魔ロットバルトは滅び、オデットとジークフリート王子はあの世で結ばれるのでした。
1.3 演出による構成の違い
バレエ作品としてとても有名な『白鳥の湖』は、多くの演出家がさまざまなバージョンを生み出しています。
演出による構成の違いを見てみましょう。
1.3-1 幕数の違い
先ほどご紹介したあらすじは全4幕構成でしたが、演出によっては3幕構成となることもあります。
全3幕構成の場合、上記1幕がプロローグとされたり、上記1幕・2幕が「1幕1場」「1幕2場」とされたりします。
ただし幕数が変わっても、内容には大きな変化はありません。
1.3-2 結末の違い
演出によって最も変わるのが、結末です。
上記でご紹介した「あの世で結ばれるパターン」のほかに、
- オデットとジークフリート王子が波にのまれて消えるパターン
- ロットバルトに打ち勝つハッピーエンドのパターン
などがあります。
「オデットとジークフリート王子が波にのまれて消えるパターン」は初演で見られた結末です。
あの世で結ばれることもなく、ただ波に消えていくこの結末は、バレエ『白鳥の湖』の悲劇性を一層高めています。
一方、悪魔ロットバルトに打ち勝つハッピーエンドのパターンはソ連時代によく見られた結末です。
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