ウンベルト・エーコ『ヌメロ・ゼロ』×ベートーヴェン『交響曲第7番2楽章』小説を彩るクラシック#20
『ヌメロ・ゼロ』
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『ヌメロ・ゼロ』が発表されたのは2015年。これがウンベルト・エーコの遺作となりました。
小説の舞台は1992年のミラノ。新しいインディペンデント新聞「ドマーニ(明日)」を発刊するにあたり、そのパイロット版、ヌメロ・ゼロ(ゼロ号)を制作する編集部をめぐって物語は展開していきます。
あらすじ 新聞の新規創刊からはじまる陰謀と水面下の戦い!
主人公のコロンナは、文才があるけれど、うだつの上がらない「敗者」を自認する五十男。
ヒロインのマイアは、正義感と仕事への情熱がある女性。スキャンダル記事を専門に書いていた品性が欠けているブラッガドーチョ、差別主義的傾向のある編集長のシメイ。編集部には、ひと癖もふた癖もあるメンバーが集まります。
仕事の内容も「まとも」とは言い難く、公正なジャーナリズムとは程遠いもの。ドマーニ編集部は、ヌメロ・ゼロを作るためにグレーゾーンに足を踏み入れます。
ニュースの「事実」や「中立」といった部分は遵守しつつ特定の意図が込められた記事を書く……編集部はそういったトレーニングを続け、物語は陰謀や情報社会のパラノイアに飲み込まれていきます。
エーコは現代のジャーナリズムのあり方に警鐘を鳴らすかのように、ニュースの裏側を描きます。
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