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古代エジプトが舞台のスペクタクル・オペラ、ヴェルディ『アイーダ』~あらすじや曲を紹介~

4.オペラ『アイーダ』の見どころ~有名!凱旋行進曲など~

オペラ『アイーダ』には見どころ、聴きどころがいっぱい!サッカーを通じて広く知れ渡った「凱旋行進曲」はその代表です。人気のアリアも揃っています!

オペラ『アイーダ』は、これまでのヴェルディのオペラに比べると、声による生々しい叫びはトーンを抑え、オーケストレーションも表現力豊かになり、洗練されたものとなっています。

しかし、オペラ『アイーダ』の熱狂的な音楽の背景にあるのは、愛と権威の闘争。前奏曲からすでに「愛のテーマ」と「権威のテーマ」が響き合い、この2つは音楽の各所に顔をのぞかせます。

ラダメスのアリア「清きアイーダ」| Celeste Aida

フランコ・コレッリ(ラダメス)


第1幕第1場、ラダメスが恋人アイーダへの想いを歌いあげるアリアです。

テノール泣かせの難曲と言われています。冒頭にオクターブの上昇の繰り返し、最後は高音でのピアニッシモへのデクレッシェンド。ハイレベルな声楽技術が要求される曲を、開始直後の場慣れしていないタイミングで歌わなければいけません。

旋律は力強い清々しさと甘美に溢れ、このアリアが開始直後にあることで、聴衆の心は一気にオペラの世界に引き込まれます。

声楽技術だけでなく、輝かしく英雄的な声と容姿が求められるラダメス。テノールの難役と言われる所以です。

しかし、どちらかというと冴えない役が多いヴェルディ・オペラのテノールの中で、文句なしにカッコいいのがラダメス!このアリアは「ヘルデン・テノール」と呼ばれる、英雄的な声のテノールが、コンサートなどで披露することが多い曲でもあります。

アイーダのアリア「勝ちてかえれ」| Ritorna vincitor

マリア・キアーラ(アイーダ)
ロリン・マゼール指揮,ミラノ・スカラ座管弦楽団 1985年


第1幕第1場最終シーン。

エチオピア侵攻が決まったラダメスの勝利と無事を祈って、アムネリスの「勝ちてかえれ」の声にアイーダも唱和します。しかしそれは同時に、祖国の滅亡と父王の死を意味することになる。
敵国への怒りから、「愛のテーマ」に乗せたラダメスへの愛、祖国と恋人への愛に板挟みになる苦悩、最後は死を願う神への祈り。短調、長調の転調の繰り返しは感情の激しい振れを、緻密で劇的に表しています。

この曲は通常のアリアの形ではなく、「シェーナ」という形式になっています。シェーナとは、歌うように語る「レチタティーヴォ」をさらに歌に近づけたものです。従来は歌と歌との間のつなぎのような存在でした。
ヴェルディは、このシェーナを独唱として成立させるという、画期的な手法を生み出しました。音楽と言葉がより自由になるため、劇を途切れさせずに歌とつなぐことができたのです。

「凱旋行進曲」| Triumphal march

ザンクト・マルガレーテン音楽祭
ブルノ国立歌劇場管弦楽団&合唱団

(55分あたりから)

オペラ『アイーダ』の代名詞、「凱旋行進曲」!
サッカーの応援曲としても有名です!交響楽団や吹奏楽団、合唱団で演奏されることも多く、単独でも大変演奏機会が多い楽曲です。

第2幕第2場冒頭、ラダメスの勝利の凱旋のシーンで演奏されるのが、この「凱旋行進曲」。

まず聞こえるのは、別動隊「バンダ」が吹き鳴らす「アイーダ・トランペット」(※7-2アイーダ・トランペットの項目を参照)の輝かしいファンファーレ。優美な女声合唱と勇壮な男声合唱、アイーダ・トランペットの演奏に乗って披露される戦利品、勝利を祝うエキゾチックなバレエ。最後は力強く重厚な大合唱の中、ついに英雄の登場。

数あるオペラの中でも、最もスペクタクルなシーンです。全てがカッコいいの一言!例えば参考動画は、野外劇場で本物の馬やゾウが登場するという凝りよう!舞台上で繰り広げられる豪華な音楽絵巻に、興奮は最高潮を迎えます。

しかし、この華々しい音楽の中には「権威のテーマ」が。栄光の勝利の裏には、みじめに踏みにじられた敗者がいることを示しています。

アムネリス狂乱の場「神の霊よ」| Spirto del nume

ゲーナ・ディミトローヴァ(アムネリス)
ロリン・マゼール指揮,ミラノ・スカラ座管弦楽団 1985年

(2時間6分あたりから)

オペラ『アイーダ』第4幕。

この最終幕は、アムネリスが主役と言っても過言ではありません。

特に第1場後半、重苦しい「権威のテーマ」が響く、裁判のシーン。アムネリスの「狂乱の場」と言われる、このオペラ最大の見どころです。裁判は舞台裏で進行していて、舞台上はアムネリスただ一人。本来は表舞台であるはずの裁判場を裏にまわし、場外で聞き耳を立てるアムネリスにフォーカスするという、驚きの発想の転換です!

さらに、最終シーン。舞台の中心はアイーダとラダメスの二重唱ですが、終幕に導くのはアムネリス。死に赴く恋人たちのこの上なく甘美な音楽とは対照的に、無機質で冷たく響く祭祀の合唱、それら全てを引き受けるように、アムネリスは単音の繰り返しで祈りを捧げます。暗黒のような悲劇にいながら、安らかな光さえ感じるその祈り。

王女の身分でありながら、法に抗えず、愛を犠牲にして生き続けるアムネリス。彼女こそ、このオペラ最大の悲劇のヒロインです。来世での愛に全てを託したアイーダとは異なる、愛を抱くもう一方の人間の姿と言えます。

オペラ『アイーダ』は、アイーダとアムネリスの2人の女性が、愛の現実と真実を語っています。

5. オペラ『アイーダ』公演・上映予定

新国立劇場でオペラ『アイーダ』が公演されます!
期間は4月5日(水)〜21日(金)の7日間。
日本語字幕でじっくりオペラ『アイーダ』を鑑賞できます。

2023年4月5日(水)〜21(金)
新国立劇場開場25周年記念公演
新国立劇場オペラ『アイーダ』
会場:新国立劇場 オペラパレス

開演:
5日(水) 18:00
8日(土) 14:00
11日(火) 14:00
13日(木) 14:00 ※ぴあスペシャルデー(貸切)
16日(日) 14:00
19日(水) 18:00
21日(金) 14:00

★ チケット料金
29,700円〜5,500円

詳しくは:新国立劇場

次のページ:6.ジュゼッペ・ヴェルディ|7.『アイーダ』の制作背景と時代

神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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