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ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 『無伴奏チェロ組曲』

J.S.バッハが作曲した全6曲のチェロ組曲は、長い間忘れられていました。忘れられていたというよりも、芸術的価値がないものと考えられていたようです。

作曲されたのは1717年~1723年と考えられていますが、バッハ自筆の楽譜は現存せず、いつどこで成立したかは未だに不明。バッハの妻アンナ・マグダレーナの写譜が残されていたことで300年が経った今、私たちはこの曲を聴くことができるのです。

練習曲からチェロの聖典へ

作られた当時は単なる練習曲とされていた無伴奏チェロ組曲ですが、ある一人のスペイン人の少年が”発見”したことで「チェロの聖典」と呼ばれる作品となり、現代ではこの曲を弾かないチェリストなんて存在しないというほどの曲になっています。

この無伴奏チェロ組曲に光を当てた少年の名はパブロ・カザルス

20世紀最大のチェリストと呼ばれることになるカザルス少年は、13歳のときにバルセロナの古い楽器屋で偶然に埃まみれの「聖典」を発見。
このとき、『無伴奏チェロ組曲』が作られてから200年弱が経過していました。

カザルスは12年間この曲を研究し、チェロの可能性を広げていきます。単純な練習曲だったこの曲は、表現豊かで、奥行きのある魅力的な「チェロの聖典」として蘇ったのです。

バッハは記憶を使う

チェロは4本の弦が張られた、弓を使って弾く弦楽器。同じ仲間といえるヴァイオリンやヴィオラより大型で、より低音が響く(人の声に一番近い音域を持つと言われる)のが特徴です。

ピアノなんかと違って構造上、簡単に和音が出せない楽器ですが、無伴奏組曲にはバッハの叡智が詰まっています。

低音の弦を響かせている間にメロディ部分を奏でることで、聴いている人は、低音を記憶している間にメロディが重なっていき、和音のように豊かな音として認識することができます。

たった一本のチェロで多彩な表現が可能なのが、この無伴奏チェロ組曲です。

『無伴奏チェロ組曲』の構成

この曲はJ.S.バッハが32歳のときに作曲した組曲で、前奏曲と5つの舞曲で構成されています。
舞曲といってもダンスとともに演奏されることはなく、チェロ自体の可能性を広げた画期的な作品です。

第1曲:前奏曲
第2曲:アルマンド
第3曲:クーラント
第4曲:サラバンド
第5曲:メヌエット(またはブーレ、ガヴォット)
第6曲:ジーグ

第1番から第6番までの6つの組曲からなり、その6つはそれぞれ前奏曲、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ で構成されます。

そして、サラバンドとジーグの間に、メヌエット(第1番,第2番)、ブーレ(第3番,第4番)、ガヴォット(第5番,第6番)が加えられ、これらをすべて演奏すると2時間以上の大作となります。

『無伴奏チェロ組曲』の名盤

やはり筆頭に挙げられるのは、パブロ・カザルス盤です。カザルスは97歳で亡くなるまで演奏を続け、生涯現役を貫いたチェロ界最大の巨人。生前に録音した数々の作品の中から好みの盤を探してみるのが面白いと思います。

チェロの貴公子と呼ばれたピエール・フルニエ盤も不朽の名作と語られることが多く、気品あふれる温かみのある演奏は必聴。

現代最高のチェリスト ヨーヨー・マは20代、40代、60代と3回のタイミングで、無伴奏チェロ組曲をレコーディングしています。4歳からこの曲を弾き始め、グラミー賞にも輝き、メガセールスを記録したヨーヨー・マ盤もチェックしたいところ。

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