森絵都『彼女のアリア J・S・バッハ〈ゴルトベルグ変奏曲〉より』~小説を彩るクラシック#26

森 絵都『彼女のアリア J・S・バッハ〈ゴルトベルグ変奏曲〉より』

『彼女のアリア』

クラシック音楽をテーマに書かれた森絵都の短編集『アーモンド入りチョコレートのワルツ』、三編中の二編目です。
『彼女のアリア』ではバッハの『ゴルトベルグ変奏曲』がテーマとして描かれます。

短編集『アーモンド入りチョコレートのワルツ』のほかの作品はこちら
森 絵都『子供は眠る』
森 絵都『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

ストーリー

主人公は不眠症に悩む中学3年生の「ぼく」。球技大会が行われた9月半ばのある日、「ぼく」は夢遊病者のようにふらふらと、休める場所を探して旧校舎の中に入っていきます。
明治の終わりに建てられたという旧校舎は、別名〈無人島〉と呼ばれており、現在ではほとんど倉庫のようになっています。

くつろげる場所がないかと3階まで階段をあがっていくと、「ぼく」の頭上に突如、音楽が降ってきます。一瞬「寝てないから幻聴が聴こえるのか?」と思うのですが、あまりのリアルな音の存在感に「ぼく」の胸は揺さぶられます。
ピアノの音を辿っていくと、その音は音楽室からでした。そっと戸を開けると、そこにはセーラー服を着た女子がうつむきながら鍵盤を弾く姿が見えました。
彼女が弾いていたのは『ゴルトベルグ変奏曲』。不眠症の「ぼく」のテーマ曲でした。

1982年、福島県生まれ。音楽、文学ライター。 十代から音楽活動を始め、クラシック、ジャズ、ロックを愛聴する。 杉並区在住。東京ヤクルトスワローズが好き。

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