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無垢な愛が奏でる官能と戦慄、R.シュトラウスのオペラ『サロメ』〜あらすじや曲を紹介〜

リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)作曲のオペラ『サロメ』は、危険な香りが漂うオペラ。

毒々しさも邪悪さも美に昇華してしまう、エロティックとグロテスクの魅惑の世界です。1890年代から20世紀初頭のヨーロッパで流行した「世紀末芸術」の退廃的な雰囲気を色濃く反映しています。

オペラ『サロメ』は直近で、5月27日(土)〜6月4日(日)に、新国立劇場オペラの公演が予定されています

あらすじや見どころを知って、オペラ『サロメ』を楽しみましょう!

タイトル画像:「サロメの踊り」イヴァン・ティショフ画(1902年)

1. オペラ『サロメ』とは?~「文学オペラ」の嚆矢~

「サロメ」フランツ・フォン・シュトゥック画(1906年)


オペラ『サロメ』は、ドイツの大作曲家リヒャルト・シュトラウスの3作目のオペラです。管弦楽の分野で既に名声を得ていたシュトラウスが、新たに目指したジャンルがオペラでした。

シュトラウスの『サロメ』は、作家オスカー・ワイルドの同名の戯曲を大きく変えることなくオペラ化し、後に続く「文学オペラ」の先駆けとなりました。聖書を扱った背徳的な内容には賛否両論が巻き起こりましたが、冒頭から妖しい世界に引き込むシュトラウスの見事な音楽。1905年のドレスデン初演では聴衆の支持を得たほか、スキャンダラスな噂がかえって注目を集め、翌年にはヨーロッパ各地で上演されました。


サロメ|Salome

原作  :オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』
台本  :ヘートヴィヒ・ラッハマンによる戯曲『サロメ』のドイツ語訳
作曲  :リヒャルト・シュトラウス
初演  :1905年12月9日、ドレスデン宮廷歌劇場(現ザクセン州立歌劇場)
構成  :全1幕4場構成
上演時間:約1時間40分

1-1.オペラ『サロメ』先読みあらすじ

「洗礼者の首を持つサロメ」カラヴァッジオ(1605年)


(古代イスラエルの領主ヘロデ・アンティパスは、亡き兄の妻ヘロディアスと律法が禁じる結婚をしていました。そして、彼女の連れ子のサロメに情欲を抱いています。領主夫妻の不道徳を糾弾した預言者ヨカナーンは捕えられ、井戸の底に閉じこめられていました。)

宮殿ではヘロデの誕生祝賀会が開かれています。王女サロメに見とれる衛兵のナラボートを、王妃ヘロディアスの小姓が諭します。宮殿の外では、井戸の中から聞こえる預言者ヨカナーンの声。継父ヘロデのいやらしい視線を嫌ったサロメがテラスに出てくると、ヨカナーンの声が聞こえます。興味を持ったサロメは彼を井戸から出すよう甘言を弄してナラボートを誘惑します。

井戸から現われたヨカナーンの姿に心を奪われたサロメは、その美しさをたたえ、口づけしたいと望みます。恋い慕うサロメのあまりの姿に耐えきれず、ナラボートは自殺してしまいます。淫らな欲求に理性を失うサロメに呪いの言葉を吐き、ヨカナーンは自ら井戸の底へ戻っていきました。

ヘロデはサロメに「どんな願いもかなえてやる」と約束して、ダンスを要求します。母が止めるのも聞かず、サロメは官能的なダンスを踊ります(「7つのヴェールの踊り」)。サロメが所望した褒美は「銀の盆に乗せたヨカナーンの首」でした。

ヘロデは褒美を変えるよう説得しますが、サロメは聞き入れません。とうとう首切り役人が井戸の底に向かい、戻って来たその手にはヨカナーンの首。サロメは恍惚として生首を持ち上げ、ヨカナーンへの想いを語り、口づけ・・・。激しい嫌悪をおぼえたヘロデは「あの女を殺せ!」と叫び、兵士たちがサロメを取り押さえ、幕。

2. オペラ『サロメ』の登場人物

サロメ|ソプラノ
15歳ぐらいの少女。母はヘロディアス、義父はヘロデ。実の父はヘロデの異母兄。
ヘロデ(ヘロデ・アンティパス)|テノール
ユダヤの領主。嬰児殺しのヘロデ大王の息子の一人。
ヘロディアス(ヘロディア)|メゾソプラノ
ヘロデの後妻でサロメの実母。元はヘロデの異母兄の妻。
ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)|バリトン
預言者。ヘロディアスの淫蕩を糾弾し幽閉されている。
ナラボート|テノール
衛兵隊長。サロメに恋心を抱く。
小姓|アルト(女性が歌う男性役)
ナラボートに好意を持っている。

ほか

画像|出典:Wikimedia Commons

次のページ:3.『サロメ』のあらすじ

神保 智 じんぼ ちえ 桐朋学園大学音楽学部カレッジ・ディプロマ・コース声楽科在学中。子どものころから合唱団で歌っていた歌好き。現在は音楽大学で大好きなオペラやドイツリートを勉強中。

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