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音楽家すぎやまこういちを偲んで~ドラゴンクエストで融合し、受け継がれるクラシック音楽とゲーム音楽~(10/5公演情報更新)

まとめ

ドラゴンクエストを通じて、あるいはドラゴンクエストが切り開いた道に続く他のゲームを通じて、これまでもこれからも、多くの人がクラシック音楽の魅力にいつの間にか触れられるようになっています。現在のゲームというのは子供の遊びというだけでなく、新しい総合芸術表現でもあるのだと私は思っています。

ゲームを通じて現代のクラシック音楽を楽しんでも、ゲームから遡って伝統的クラシック音楽に浸るのも、面白い音楽体験ができることでしょう。すぎやまさんが遺した偉大な功績にあやかって、ゲームを彩る音楽からクラシックを感じてみてはいかがでしょうか。

<参考文献>
岩崎祐之助(2014年)「ゲーム音楽史 スーパーマリオとドラクエを始点とするゲーム・ミュージックの歴史」
戸ノ下達也(2016年)「〈戦後〉の音楽文化」

ドラゴンクエストのおすすめ音楽

ドラゴンクエストの中から、『序曲:ロトのテーマ』以外のおすすめの楽曲を紹介します。
紹介するのは記事の内容と併せて聴いてほしいファミコン時代の曲に限りますが、近年の豊かな音源をそのまま使えるようになってからの作品にも、紹介しきれないほど良い曲が沢山あります。

おおぞらをとぶ

『ドラゴンクエストⅢ』で物語後半、険しい山で阻まれた魔王の城へ突入するため、神鳥の背に乗って空を飛ぶときの音楽です。神秘的で美しいこの曲は大変な人気で、ドラクエ関連コンサートでも定番の一曲です。あるゲーム音楽家は、「こんな曲を作れたら死んでもいい」とまでいったほど。

王宮のロンド

『ドラゴンクエストⅢ』から、王城でのBGMです。王城らしい優雅で華やかなBGMになっています。
クラシック音楽におけるロンドは「A→B→A→C→A→B→A」などの形で、Aの主題を繰り返し演奏し、合間に異なる旋律を挟む形式の楽曲です。ゲーム版では「A→B→A→B→……」でループするようになっているのですが、とりやまさんはオーケストラ版にするにあたって、Cの旋律を加えてロンドとして完成させています。

広野を行く

初代『ドラゴンクエスト』で、冒険の旅路、モンスターはびこる原野を歩いているときのBGMです。
どこか不安を湛えたようなBGMは、一人単独行で魔王に挑む初代『ドラゴンクエスト』の勇者の旅路の険しさを思わせます。
後に仲間と旅をできるシステムの『ドラゴンクエストⅢ』などでは、原野を行く際ももっと勇壮なBGMになっています。


おすすめ!ゲーム発クラシック風音楽

続いて、『ドラゴンクエスト』以外のゲームからクラシック調の名曲の一部を紹介します。
知名度上、勇壮なメインテーマに集中してしまうのですが、寂しいシーンの曲、神秘的な曲、愉快な曲なども各ゲームに素敵なものが沢山あります。

英雄の証(モンスターハンターシリーズ)

モンスターハンターシリーズのメインテーマ『英雄の証』は、こちらも東京オリンピックの入場曲に使われたゲーム音楽を代表する一曲です。

モンスターを倒すハンターになるゲームなので、元々狩猟用の角笛がルーツであるホルンが高らかに鳴っています。
この曲はオープニングのほか、ゲーム中で特に強大なボスとの戦闘中、あと少しでクリアできるというクライマックスになるとBGMが変化する演出にも用いられていて、ゲームを大きく盛り上げる役も担っています。

Dragonborn(The Elder Scrolls V: Skyrim)

アメリカの人気ゲームシリーズからの一曲で、勇壮な合唱が印象深い曲です。

実はゲーム内世界の架空言語で歌われていて、繰り返し出てくる「ドヴァキン」というのがタイトルのDragonborn、竜の血を引く主人公のこと。歌詞の意味は英雄Dragonbornを称える内容で、ゲーム内の世界で歌われている曲だと思わせる仕掛けになっています。

ファイアーエムブレムのテーマ(ファイアーエムブレムシリーズ)

ファイアーエムブレムは戦略シミュレーションゲームで、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界の戦乱を、プレイヤーの戦術で切り抜けていきます。

シリーズ初代のCMは作品世界を描くために、なんと二期会協力によるオペラ調!ゲームプレイ中のあるあるネタを歌ったヘンテコ歌詞なのですが、世界観を本格的な音楽と演出によって魅せた印象的なCMです。2002年に出たシリーズ続編でもオペラ風CMは受け継がれました。

ゲーム内オープニングではオフボーカル版が使われ、また近年では真面目なラテン語歌詞バージョンも登場しており、きちんとテーマソングとしても親しまれています。

ワルツ第17番 ト短調 “大犬のワルツ”(beatmania IIDXシリーズ)

今回紹介した『ドラゴンクエスト』などでは音楽は引き立て役ですが、1996年の『パラッパラッパー』から、音楽が主役になるいわゆる「音楽ゲーム」が誕生します。その中から、ピアノ・ワルツの名曲を紹介します。

音楽ゲームで現在最も長寿シリーズの『beatmania IIDX』はDJシミュレーションゲームで、サンプラーとターンテーブルを模したコントローラーで音楽を演奏するのですが、演奏曲にはこの曲のようなクラシック系の音楽も含まれています。
流麗なピアノの旋律をゲームのボタンで、正確にタイミングを合わせて押すのはとても難しく、美しいと同時に、手強い難関という畏敬のような感情も持たれる曲になっています。

オペラハーツの編集とライターを兼任。 小中でピアノ教室に通い、中高では吹奏楽部で打楽器を担当した程度の演奏経験。 クラシック以外にロック、EDM、ボカロ、ゲーム音楽なども好んで聴く。

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